『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第34話 蛇腔病院

「あーもう!一体何がどうなってんだ!?」

 

死柄木の強化手術完了をおよそ一カ月後に控えた超常解放戦線の定例集会と同日に、突如行われたエンデヴァーの引退会見。

そして同時にとんでもない数のヒーローからの全拠点一斉奇襲。

どこから情報が漏洩したか全く予想がつかないため、どこまで把握されているのかもわからない。

しかしエンデヴァーの引退宣言後の放送により、死柄木がいる蛇腔病院まで把握されていたことも発覚。

 

「つーかアレ黒霧の個性だよな!?

 アイツもコピー個性かなんかか!?」

 

直接黒霧と対面し『ワープゲート』を体感したコンプレスは、イレイザーヘッドたちと行動を共にしている青年の個性が黒霧のものと同一であると確信していた。

しかし見た目も性格も全くの別人だったため同一人物とは思わなかった。

雄英1年に他人の個性をコピーする生徒がいたため、そちらの同類かと判断していた。

 

「あの3人組のせいで元解放軍の奴らはほとんどやられて連れてかれちまった。

 ヒーロー連中はピンピンしてるってのに、こっちの戦力は……!」

 

リ・デストロ。ベストジーニストに捕らえられたとの報告あり。

トランペット。地下にいたがスピナーからの救援要請の際にやられたと聞いた。

スケプティック。コイツも地下に逃げて捕まったらしいが戦闘では役に立たないので影響なし。

外典。つい先ほど目の前で雄英生徒の一人にボコボコにされイレイザーに連れていかれた。

スピナー。救援要請から間もなく連絡がつかなくなった。ミルコと対峙していたらしいのでおそらく敗北。

トゥワイス。同じく連絡途絶。戦えるなら増え続けているはずなので敗れたと断定。

荼毘。エンデヴァーの会見で錯乱したらしいが、先ほど鎧姿のヒーローと一緒に飛び出しこの場を離れた。

ギガントマキア。ミルコ、ホークス、そしてベストジーニストだと思われるオーバーコートのヒーロー3人に囲まれ抜け出せずにいる。

トガヒミコ。彼女が固執していたウラビティの元に飛び出してしまった。

そして自分、Mr.コンプレス。

 

「オレ一人フリーでもどうしようもねぇっての!

 くそっ!ドクター!応答しろよ!オイ!!」

 

襲撃開始直後に蛇腔病院へ連絡を取ろうとしたが、通信が一切繋がらない。

複数のチャンネルで試したが全て不可。

他の仲間との通信はできているので、おそらく病院側の通信が封じられている。

これでは向こうが襲撃でどうなっているのかもわからないし、応援を呼ぶこともできない。

 

「おい!ヴィランがいたぞ!」

 

「ちっ……あ~もう!!」

 

「逃がすな!捕えろ!!」

 

 

――――……

 

 

一方その頃、蛇腔病院。

 

「なぜ?なぜ!?なぁぁぁぁぜぇぇぇぇぇぇぇ!!?」

 

AFOの協力者である殻木は涙と鼻水を流しながら、驚愕と恐怖で悲鳴を上げていた。

 

事の始まりは数十分前。

彼が病院の秘密区域で死柄木が眠るカプセルを前に鼻歌まじりで調整をしていた時、突如外部との通信が一斉に途絶した。

テレビやインターネットと言った媒体だけではない。病院内一般エリアに設置してある監視カメラの映像すら映らなくなった。

二倍の個性で増やした自分の複製体とも連絡が取れない。

 

そして直後、秘密区域内で爆発が起きた。

いつの間にか侵入していたOFA後継者と思われる緑谷と、おまけに以前敵連合が拉致しそこねた爆豪の二人組が、貴重なサンプルや脳無の保管されていたカプセルを手当たり次第に破壊し始めた。

起動状態の脳無が対処に当たるが、普通の脳無では手も足も出なかった。

 

ようやくこの拠点がヒーローにバレており、このままでは自分も死柄木も捕まってしまう状況だと気付いた。

ワープが可能な小型脳無を呼び出し、自分たち二人を外部に逃がすように命じたが……。

 

「なぜじゃぁぁぁあああ!なぜ転送ができんのじゃぁぁあああ!?

 ジョンちゃん!もう一回!もう一回試すんじゃぁぁあああ!!」

 

何度も何度も繰り返すが、外の空間と繋がらない。

通称『ジョンちゃん』が何度もワープの起点となる黒い泥を吐き出し殻木とカプセルを包むが、彼らはその場から移動することなく泥だけが地面に落ちて消える。

 

『ハッハァ!!一匹残らず皆殺しだこのカスどもがぁあ!!』

 

「ひぃぃぃぃっ!!」

 

何故か秘密区域内のモニターは生きているため、そこに映し出されたダイナマイトの猟奇的な笑顔が殻木の目に入る。

 

「はっ!?そうじゃ所詮はガキ二人!

 『ハイエンド』を起こせば……!こんなことなら真っ先にやっとくんじゃった!!」

 

侵入者に宛がった雑魚脳無とは違う。

福岡でエンデヴァーたちを襲った、思考し言葉を話す最強クラスの脳無『ハイエンド』。

それらの起動には時間がかかるため選択肢から除外していたが、なりふり構っていられないと強引に起動する。

 

「行けぇ!ウーマンちゃんたち!あのガキどもを殺すんじゃぁぁあああああ!!」

 

カプセルを破壊し飛び出した5体のハイエンド脳無たち。

侵入者に向かって突っ込んでいく彼らにモニターの向こうから声援を送る。

 

『うぉぉぉおお!!!』

 

ボサボサ頭のデクという少年の方が雄たけびと共に脳無の集団へと突っ込んだ。

当然脳無たちも反応して攻撃するが、彼はその攻撃全てを予測しているかのように躱しながら集団の中を突っ切った。

そして彼の腕から伸びていた黒いエネルギーが5体の脳無を縛り上げ一か所にまとめていた。

 

『かっちゃん!!』

 

『命令すんなデクがぁ!』

 

いつの間にか至近距離まで接近していたもう一人の少年、ダイナマイトが掌から大爆破を放ち、5体の脳無をまとめて吹っ飛ばす。

彼らは皆再生個性持ちなので復元を始めているが、受けたダメージは非常に大きく瞬時に再生できていない。

 

『ハッ!なんだぁ?大したことねーじゃねーか!』

 

『USJの時の僕らとは違う……やれるよね、かっちゃん!!』

 

『ったりめーだろうがぁ!!』

 

押されている。

緊急で起動したとは言えトップヒーローすら超える最強のハイエンド脳無5体が、たった二人のヒーローどころか、候補生ですらない子供に。

 

 

 

「なぁぁぁぁぜぇぇぇぇぇぇぇじゃぁぁぁぁああああ!!?」

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