『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第36話

結局、蛇腔病院にて死柄木弔と対峙する緑谷の相棒は圧倒的な火力を持つに至った爆豪に決まった。

おそらく再生の個性も付与されるだろう死柄木相手に持久戦が得意な麗日では分が悪いと判断されたからだ。

 

二人はエンデヴァーが会見を行う直前にヒノカミにより病院の深部へと送り込まれ、通信が妨害されていることを確認してから施設の徹底的な破壊に取り掛かった。

死柄木弔を殺すのならば奴がカプセルで眠っている内にカプセルごと破壊してしまうのが確実。

しかし『死柄木弔をも救いたい』と願う緑谷の意向に従い、まずは脳無の殲滅を行う方針となった。

脳無は死体人形であり、ヒノカミでも蘇生はできないと断言しているため緑谷も躊躇いはしない。

彼らは知らないが襲撃直後の殻木が逃走を優先したため、ほとんどの脳無は起動する前に破壊された。

奴は転移での逃走が不可能と理解してようやく『ハイエンド』を動かしたが、福岡の脳無は起動から安定まで10時間かかった。

 

(USJの脳無よりもずっと遅い!

 『急に動かせないらしい』って情報は本当だったんだ!)

 

個性『危機感知』と霊感を併用して攻撃を回避しながら敵集団の中を駆け抜けつつ、個性『黒鞭』で全員を拘束し一か所にまとめる。

そこに爆豪が爆破を打ち込むことで一網打尽とした。

並みの脳無ならすでに死んでいるが、吹き飛ばされたハイエンドたちは少しずつ肉体を修復していく。

 

(全部の脳無が再生持ち!一撃で頭部を粉砕しないとダメだ!

 でもやっぱり個性の併用は負担が大きい!)

 

7代目の『浮遊』

6代目の『煙幕』

5代目の『黒鞭』

4代目の『危機感知』

3代目の『発勁』

2代目の『変速』

OFAの成長に伴い、継承者たちが使用していた頃よりも大幅に強化された6つの個性。

夢の中での対面により緑谷はその全てを使えるようになっていた。

そしてこの2カ月で個性を使いこなすための訓練もしてきた。

しかし複数の個性の併用は体に著しい負担をかける。

コスチュームに組み込んだ治療用核鉄の恩恵があっても無視できない。

 

(……この後には死柄木が控えてるんだ!

 こいつらはワン・フォー・オールのパワーだけで……!)

 

「「!?」」

 

再生途中の脳無の一体が腕を前に出して捩じる直前、二人は直感でその場から跳ぶ。

 

(空間が歪んでる!?視認した座標への直接攻撃!?

 対象の強度を無視するとしたらマズイ!

 避け損なえば一撃でやられる!真っ先に倒すべきは!)

 

「あの『仮面』だ!!」

 

「言われんでもわかっとるわ!!」

 

別方向から向かう二人を阻むように他の脳無が立ちはだかる。

『巨漢』は体を膨らませ、『触手』は頭を伸ばして分裂させ、『女性』は体を液状化させる。

『長鼻』はそのまま突っ込んでくる。

 

「『閃光弾』!」

 

『ムッ……!?』

 

爆豪が掌から強烈な光を放って目つぶし。

4体の脳無が一瞬動きを止めた隙に緑谷は『仮面』へと走る。

どうやら『仮面』には閃光が効かなかったらしく、それどころか『仮面』の目が強く光っている。

 

「……レーザー!?」

 

クラスメイトに似た個性の持ち主がいるから気付いた。

緑谷は『仮面』の両目から伸びた光を飛び上がって回避し頭上から迫る。

 

「ワン・フォー・オール、80%!!

 MANCHESTER……SMAAAASH!!」

 

強烈な踵落としが『仮面』の頭を砕き、首をへし折り、胸元まで抉り取った。

『仮面』の頭部は再生することなく、残った体が音を立てて倒れる。

 

「まず1つ!あと4つ!!」

 

「3つだバァカ」

 

振り向くと『触手』の頭部が吹き飛んでおり同様に倒れていた。

どうやら爆豪は『仮面』を緑谷に任せ……緑谷なら必ず倒すと確信し、他の脳無の撃破を優先したようだ。

残るは膨れ上がる『巨漢』と、液状化する『女性』と、どうやらパワー特化らしい『長鼻』。

 

「テメェらもウォーミングアップに使ってやらぁ。

 感謝して死ねェ!!」

 

「悪辣!?」

 

 

 

――――――……

 

 

 

「『ロボットちゃん』!?『アバラちゃん』!?

 あぁぁあなんて酷いことをするんじゃぁぁぁぁああああ!!?」

 

どの口が言うのか、モニター越しに自慢のハイエンドがやられたことに悲鳴を上げる殻木。

そしてたった今『ゾウさん』もやられた。

 

「アイツらバケモンじゃあ!このままでは……!」

 

転移による脱出は不可能。

外部との連絡もできない。

自慢の戦力はもってあと数分。

殻木には戦闘能力はない。あの二人が来れば死柄木ごと殺されてしまうだろう。

もはや殻木にできることは一つしかなかった。

 

「こうなったら……!!」

 

殻木は振り返って駆け出し、死柄木の眠るカプセルの前のモニターを掴む。

 

「定着率は……70%!?

 せめてもう少し……80……いや75%は無ければ!」

 

殻木は震える手でモニターの前のキーボードを操作し始めた。

モニターに表示された数字がじわりじわりと増えていく。

 

「こんな……くそぅ、半端な形で……!

 ワシとオール・フォー・ワンの夢の結晶……あぁ畜生!!」

 

耐久力自慢の『おでぶちゃん』と液状化の個性を持つ『ウーマンちゃん』は随分と粘ってくれたが、その二人もついに崩れ落ちた。

 

「ひっ!?」

 

脳無たちの遺体を踏みつけ嗤う爆豪の顔が映し出された。

これ以上定着率を上げる時間の余裕はない。

殻木は装置に繋がったデバイスを掲げ。

 

 

「起きろ死柄木弔ァ!」

 

 

そのボタンを押した。

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