『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第37話 死柄木弔

「チッ……ムダに足掻きやがって。

 死ぬんなら潔く死ねや!」

 

「かっちゃん、流石にあんまりだと思うよ……?」

 

頭部を失い倒れている脳無の残骸を、念のためにとさらに破壊しながら爆豪は悪態をつく。

しかし余計な消耗を強いられたことは事実だ。

『液状化』する『女性』の脳無は特に厄介だった。

頭部までは変化させられなかったようだが、胴体を変化させて逃げ回り時間が経つほどに動きが良くなっていった。

『巨漢』を倒した後で二人掛かりで挟み撃ちして倒したが、予想以上に時間を取られてしまった。

 

「……もう脳無はいないみたいだね」

 

「この奥に弱い気配……ザコが一匹いんなぁ……そいつが協力者のジジイか」

 

「死柄木は仮死状態にされてるらしいから、そいつに起こさせて……」

 

 

 

「「!!?」」

 

 

 

そこで二人は巨大な霊圧を察知し、思わず身構える。

 

「……その必要はなさそうだな」

 

「……だね」

 

死柄木弔が目覚めた。

霊子がなく、人が霊力を持たない世界で、こんなにも強い霊圧を発する巨大な魂を持つとしたら奴しかいない。

 

遂に死柄木弔との決戦。

爆豪は拳を掌に打ち付け、緑谷はOFAの中の個性を全てオンに切り替えた。

 

 

「かっちゃん!!」

 

 

直後『危機感知』が反応し爆豪の手を掴んですぐに上空へと飛び上がった。

意図を察した爆豪が天井を吹き飛ばし、二人は揃って病院の外に飛び出す。

 

間もなく、死柄木と協力者がいたはずの通路の奥から亀裂が走り、すべてが崩れ落ちていった。

 

 

 

――――……

 

 

 

「……寒い」

 

 

今は3月下旬。

暖かくなるのはもう少し先の話だ。

自分がいた足場以外何もかも崩れ落ちた状況で、死柄木は呟いた。

 

足元に殻木のつけていた眼鏡の残骸が転がっていることなど気づきもしなかった。

彼は、長い睡眠の後にストレッチをするような感覚で、殻木諸共周囲一帯を崩壊させた。

 

「……あ?」

 

半径数十キロメートルは更地にするつもりだった。

しかしほんの数キロメートルのところで崩壊が止まっている。

不自然に線引きをされたかのようにその向こう側は綺麗なままだった。

その代わりに、内側の崩壊がかなり深くまで及んでいる。

重要な設備やらを避けたつもりが自分が立っている場所以外は何もかも無くなっていた。

 

死柄木はぐるりと周囲を見渡す。

蛇腔病院の方もほとんどが無事で、切り取ったかのような断面が見えている。

崩壊した部分の形は巨大な円。

足元を見ると、自分のいる場所はまるで半球状に抉り取られた巨大な穴の中に立つ一本の長い塔の頂上。

続いて彼は上空を見上げる。

 

「……ハハ」

 

二人のガキが滞空しており、その傍には見知らぬ女を乗せた巨大な鳥が飛んでいた。

 

 

 

――――……

 

 

 

「目覚めていきなりこれか」

 

緑谷と爆豪を病院の深部に送り届けた後、ヒノカミは病院の上空に移動しテリトリーを発動。

殻木の秘密区域を区切るかのように直径5キロメートルほどの範囲を球状の結界で包み込んだ。

これによりヒノカミたちも含めて、外部との通信や転移の一切が遮断される。

彼女は決してテリトリーを解除しないように合わせた両手を白星に縛り上げてもらい、具現化した赫月の背中に乗って病院の上空に待機していた。

 

「でも、これでもう崩壊させられる物が無くなった!

 崩壊の伝播に巻き込まれる心配はありません!」

 

「後は直接触られなきゃいいだけだな」

 

「油断するな。

 『オール・フォー・ワン』以外にも複数の個性を持たされているはずじゃ。

 ……負傷や疲労はないか?」

 

「はい!」「オウ!」

 

「全身粉々に崩壊させられては、流石の儂も蘇生が間に合わぬ。

 触れて崩壊が始まったなら広がる前に引きちぎれ。

 欠損だけなら、後でいくらでも治してやれる」

 

ヒノカミの『不可死犠』は魂が残っていればそこから肉体を再構成できるが、完全に肉体が消滅した状態では肉体の再構成を終える前に魂が霧散しかねない。

二人は霊力修行を積んできたので魂の消滅は遅い。

最低でも肉体の3割ほどが残っていれば蘇生は間に合う計算だ。

 

「……死柄木が、こっちに気付いた!」

 

「出久。約束は覚えておるな?」

 

「……はい!」

 

緑谷たちのどちらかが死なない限り、そして緑谷が死柄木を救うことを諦めない限り、ヒノカミは死柄木を殺さない。

逆に言えば、その条件を満たせなくなったと判断した瞬間にヒノカミは死柄木を殺す。

 

「勝己。お主もわかっているな?」

 

「……オウ!」

 

先ほどの条件を満たしていたとしても、緑谷が死柄木を救うことに固執し自分の身をも犠牲にしようとした時、爆豪が死柄木を殺す。

逆に言えば、緑谷が無理をしない限り爆豪は死柄木を殺してはならない。

 

「……よし!では行ってこい!」

 

「はい!

 チーム『ワン・モア・タイム』ナンバー5、デク!

 行きます!!」

 

「……」

 

「どうしたの、かっちゃん?」

 

「やっぱ納得いかねぇ。なんでテメェが『5』でオレが『6』なんだ。

 代われやコラクソデク」

 

「今更!?」

 

「実力順じゃのぅて加入順だとさんざん言うたじゃろうが!

 これ以上みみっちい事言うならいっそ『10』にしてやろうか!?」

 

「チッ……チーム『ワン・モア・タイム』ナンバー6、大・爆・殺・神ダイナマイト!

 行くぜオラァッ!!」

 

「……あ奴まだあの名前諦めておらんのか……」

 

「えーと……じゃ、じゃあ!僕も行ってきます!」

 

「おー、行ってこい。

 ……まったく、締まらん奴らじゃ。

 そのくらいの気軽さで丁度いいのかもしれんがな。かっかっか」

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