AFOを打倒してから3年。
今日もオールマイトはサイドキックであるナイトアイとともに、精力的にヒーロー活動を行っていた。
1カ月の活動休止期間が明けた直後のランキングではエンデヴァーにナンバー1の座を奪われてしまったが、なんとか持ち直して再びナンバー1となり、今日まで追い抜かれずに済んでいる。
OFAの事情を明かしてからは彼と会話をしたり、協力する機会も増えたように思う。
ヒノカミという共通の知人。彼女の秘密を共有したことが大きな要因だろう。
……3年前、AFOとの戦いで負った傷を治療する内に、彼女は深刻な病を患っていることが発覚した。
すぐに命を落とすことはないが、月日を追うごとに確実に彼女の命は削り取られていく。
原因は判明しているが、今のところ治療法は見つかっていない。
オールマイトとエンデヴァーは直ちに彼女のヒーロー活動を休止させ、入院させた。
事情を知らぬ者たちを欺くとき以外は、病院で延命措置を受けているはずだ。
「お邪魔しとるぞい」
「ヒノカミ!?」
なのでヒーロー活動を終えて事務所に戻った時、彼女が堂々と応接間に居座っていることに思わず声を上げた。
「どうしてここに!?……その怪我は!?」
彼女の服装は病院の患者衣ではなく、私服兼ヒーローコスチュームである剣道着を模した和服。
勝手に事務所の茶をすする彼女の頬は片側が赤く腫れあがっていた。
「そのことなんじゃがな……治療を打ち切った」
「……そんな!どうして!?」
「やはり根本的な治療法は見つからんようでな。
どれだけ手を尽くしたところで、せいぜい寿命が少し伸びるだけ。
ならば寝たきりでいるより、余生を楽しむことにしたんじゃ。
……先に兄上に伝えに行ったら、思いっきり殴られてな」
腫れた頬に触れながらけらけらと笑うヒノカミだが、オールマイトたちは愛想笑いすら浮かべられない。
彼女が助からないという可能性は、当初から医者に宣告されていた。
独特の死生観を持つ彼女は、自分の死を受け入れていることも知っている。
OFAという強大な力を持つトップヒーローであっても、病に侵された者を救うことはできない。
オールマイトは自分の無力さを痛感し、拳を強く握りしめていた。
「んで、今日はその報告と……ナイトアイに頼みがあって来たんじゃ」
「私に?」
「うむ。……お主の個性で、儂の未来を『予知』してほしい」
「なんだと!?」
激昂したナイトアイが机を叩いて立ち上がる。
「儂は確実に死ぬとわかっている人間なんじゃ。
いつどんな死を迎えたとしても文句はない。
ならば予知を見るハードルも低かろう?」
「ふざけるな!私にお前の最期を教えろというのか!
お前の未来に、お前以外の者の死が映る可能性もあるんだぞ!」
「ナイトアイ、ちょっと落ち着いて……」
ナイトアイをなだめるオールマイトだが、彼の気持ちも理解できる。
彼が予知で見た光景を変えられたことはないと言う。
もしそこに受け入れがたい、恐ろしい未来が映っていたとしたら。
だからオールマイトは彼に自分の未来を見てほしいと言ったことはない。
ヒノカミだって今日まで一度も頼むことはなかった。
「……儂はあとどれだけ生きられるかもわからんのじゃ。
この一度だけで良い。
せめていつ死ぬかだけでも教えてはくれんか?」
「っ!」
彼女の死期を知りたいのはオールマイトたちも同じだ。
AFOとの戦いだけではない。今日まで彼女に受けた恩は返しきれないほど沢山ある。
多忙な身だが、彼女が最期を迎えるまでに、できるかぎりのことをしてやりたい。
ナイトアイはオールマイトの視線から彼の意図を読み取り、ため息をついた。
「……この一度だけだ。
予知の内容次第では、何も教えるつもりはないぞ」
「……すまんな」
やるならば手早く済ませたいからと、ナイトアイは早速ヒノカミの肩に触れる。
彼の脳裏にヒノカミの未来がコマ撮りのように映し出された。
「うわああああぁぁっ!!!」
「ナイトアイ!?」
突如ナイトアイが絶叫を上げ、倒れこんでしまった。
息は荒く、全身から汗が噴き出している。
「なんじゃ……?お主、一体何を見た!?」
駆け寄る二人に聞こえるように、ナイトアイは必死に声を絞り出した。
「……オール・フォー・ワン……」
「「なにっ!?」」
「オール・フォー・ワンが、生きていた……!」
ナイトアイの予知により、史実より早い段階でAFOの生存を知ります。
OFA関係者たちは予知を基にAFOに対抗するため動き出します。