『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

201 / 786
第39話 ミルコ:ライジング

何らかの毒物や薬物でギガントマキアを抑え込むという作戦も、当然議論には上がっていた。

基本的に命令が無ければ動かないというのだから投与自体は容易だろう。

しかし『体が大きい』とは『毒や薬の効きが悪い』ということ。

効果が現れるまで時間がかかるだろうし、投与したことをきっかけに動き始める可能性も高い。

どんな個性を持っているのか詳細には判明していないので確実に効くという保証もない。

結局『力づくが一番確実』という結論に至っていた。

それが出来るほど鍛えてきたからこそ、搦め手に頼ろうとはしなかった。

 

「だがマキアの奴はやたらと鼻がいいのはわかってんだ。

 だったらミッドナイトの嬢ちゃんの『眠り香』が効く可能性がたけぇだろ」

 

しかし鍛えているとはいえミッドナイトではギガントマキアの顔にまで近づけない。

グラントリノのような空を飛べる人間が運ぶこともできるが、運ぶ側も『眠り香』を吸ってしまう可能性がある。

だからミッドナイトの攻撃に巻き込まれることなく彼女をマキアの顔の近くに連れていけるマウントレディも一緒に連れてきたというわけだ。

 

「そりゃ理屈は通ってますがね!

 ミッドナイトさんが一発もらえば致命傷ですよ!?」

 

「我々が幹部や強敵に狙いを定めたのは、他のヒーローへの被害を減らすためだろう!?

 ここにきて危ない橋を渡らせてどうする!?」

 

そして確かに効果はあったようだが、マキアは一度では眠らなかった。

挑戦し続ければいつかは倒れるかもしれないがそれまでに彼女らは何度命を危険に晒さねばならないのか。

仲間を死なせるくらいなら、敵を殺す。

公安の手駒であったという後ろ暗い過去を告白したホークスはもはやためらわない。

紳士として女性を守るべくジーニストも続けて飛び出す。

 

 

「「舐めんじゃないわよ!!」」

 

しかし二人を止めたのは助けられるべき女性たちだった。

 

「大事に扱ってもらえるのは嬉しいですけどねぇ!

 アタシらヒロインじゃなくてヒーローなんですよ!」

 

「後輩どころか教え子まで頑張ってんのよ!

 ここで体張らないで女を名乗れるもんですか!」

 

「危険も何も全部伝えた上で即答したんだ。酌んでやんな。

 テメーらも知ってんだろ……女ってのは強ぇのさ」

 

「「……」」

 

二人の男は無言で視線を動かす。

 

「気に入ったぁ!やっぱ女は度胸だよな!!」

 

その先には満面の笑みの女傑がいて。

 

『待ぁてやトガちゃぁぁぁぁん!!』

 

通信機から恋する少女の雄叫びが聞こえてきて。

 

『かっかっか!』

 

高らかに笑う組織のトップが脳裏に浮かんだ。

 

「「……ハァ」」

 

顔を見合わせた後、二人の青年は揃って肩を落としてため息をつく。

 

「……ミッドナイトさん!」

 

ホークスは自分の翼から羽根を大量に放ちながらマウントレディの掌に近付く。

 

「そっちに乗ってください。エスコートはオレが引き受けます」

 

「アラ、素敵な絨毯ですこと」

 

「羽毛100%っすからね」

 

ミッドナイトはホークスが羽根で作り出した空飛ぶ絨毯に飛び移り、代わりにベストジーニストがマウントレディの左肩に乗る。

 

「これを使いたまえ」

 

ジーニストは自分の着ていたコートを解いて、マウントレディの右手を覆うように編み上げる。

 

「即興で悪いが、贈り物だ。

 女性があまり柔肌を晒すものではない」

 

「まぁ綺麗な手袋。

 汚してしまうのが申し訳ないですわね」

 

「かまうな。君の代わりに傷つくのならば本望だ」

 

マウントレディは白銀に輝くグローブをつけた右手を握りしめ、獰猛な笑みを見せる。

 

「よっしお前ら!デカイの準備すっから1分稼いでくれ!

 それ喰らって参ってるところに思いっきり嗅がせてやんな!」

 

「「「「了解!」」」」

 

「しゃーねぇ、オレもかく乱ぐらいはしてやっか」

 

ミルコがマキアから距離を取り、見えないボールを掴むかのように胸の前で掌を広げる。

まだ地面に潜ろうとするマキアに、そうはさせじとマウントレディが殴りかかる。

 

「こんなにいいオンナが目の前にいるってのに……無視してんじゃないわよ!!」

 

「がふっ!?」

 

ホークスの羽根とグラントリノがマキアの目の前を飛び回って視界を遮り、その隙に近付いたミッドナイトが『眠り香』を嗅がせる。

 

「乱暴な男は嫌われるわよ!大人しくしなさい!!」

 

「……がぁぁぁあああっ!!」

 

マキアはやはり眠らないが、確かに一瞬意識が飛んでいた。

その数秒の隙を突いてもう一度マウントレディが迫る。

 

「これ、頑丈なんですよね!?」

 

「破れも歪みもせん!絶対にな!!」

 

「だったら……ぅおりゃあぁ!」

 

マウントレディはグローブが付いた右手を、マキアの口に思いっきり突っ込んだ。

 

「ふごっ!?ごっ、ごぉぉぉおおお!?」

 

「これでもよそ見できんのかしら!?」

 

今までひたすらに移動しようとしていたマキアの意識が、明確にマウントレディへと向いた。

彼女はがら空きになっているマキアの腹に思いっきり蹴りを入れて、反撃が来る前に反動で後ろに下がる。

 

「じゃまぁ……するなぁぁぁあああ!!」

 

「あ~ら、ようやく私を見てくださったわね。

 でも残念……時間切れよ!!」

 

ホークスがマキアの顔を囲むように羽根をまき散らし、視界が遮られた隙に全員が撤退。

周囲をキョロキョロと見渡し敵を探すマキアの目に、強烈な光が入り込んできた。

 

「……待たせたなぁ……ギガントマキアぁ!!」

 

霊視能力を持たない者でもわかるほどの膨大な霊力の塊が、ミルコの掌の中にあった。

『アレはまずい』。

そう気づいたマキアはミルコが何かをする前にまとめて破壊しようと襲い掛かる。

対してミルコは不敵に笑い、霊力球を軽く放り投げる。

 

 

「……『満月(フルムーン)……!」

 

 

右脚を思いっきり引き、背中が見えるほどに前傾姿勢になり脚を真っすぐ上に伸ばした。

 

 

「……裂蹴兎(バーストシュート)』ぉ!!!」

 

 

そして地面に落下する寸前の霊力球を、力の限り蹴り飛ばした。

大きく歪んだ球体はマキアの胴体へと迫り直撃、炸裂した。

 

 

 

「ごおあああぁぁぁぁぁ……!?」

 

 

 

「……あれ、なにアレ!?」

 

「なんか飛んでくる!!」

 

「退避ぃーーーー!!!」

 

「「「ぎぃやぁぁぁああああああ!!!」」」

 

25メートルの巨体が、吹っ飛んだ。

数十メートルの高さまで浮かび、数百メートルを移動し、未だ維持されているヒーローたちの包囲網を超えて、学生たちがいる後衛の部隊の傍に落下してクレーターを作った。

 

 

 

「……やっべ」




満月裂蹴兎(フルムーンバーストシュート)

時間をかけて圧縮し作り上げた霊力球を思い切り蹴り飛ばし、相手にぶつける技。
激突と同時に炸裂し対象を吹き飛ばす。
発動までに時間がかかるが、その攻撃力と射程はチーム内でも最上位。


分かりにくいと思うので明記。
ミルコの技は『霊界と魔界の世界』、仙水忍(ミノル)の『霊光裂蹴拳』の派生となります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。