『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第41話 ダイナマイト:ライジング

眼下の死柄木へと向けて、爆豪が急降下していく。

同時に背部のサポートアイテムを起動。

背中に二本の黒い筒のようなパーツが出現し、筒の底についているスラスターから炎を噴出してさらに加速する。

 

「……あぁオマエか」

 

近付いてくるのが、かつて仲間に引き込もうとした爆豪だと気付いた死柄木は掌を向ける。

 

「ごめん。もう君に興味ないんだわ」

 

この手で軽く触れるだけで壊せる。

加えてもはやこの身は個性抜きでオールマイトに匹敵する身体能力を持つ超人。

子供一人始末することなど容易い。はずだった。

 

「……奇遇じゃねぇか」

 

しかし死柄木の手が届く瞬間、爆豪は掌から爆風を放ち自分の軌道を変え、死柄木以上の速度で頭上を越え背後へと回り込む。

 

「オレもとっくにテメェなんざ興味ねぇよザァコ!!」

 

爆豪は一方の掌を死柄木の背中に向け、もう一方を逆向きにして掌から爆風を放ち、姿勢を維持しつつ死柄木を吹き飛ばした。

 

「……『ワン・フォー・オール』100%プラス『発勁』プラス『黒鞭』ガントレット……疑似200%ぉ!!」

 

「!?」

 

そして吹き飛ばされた先には黒いエネルギーで覆われた拳を構えた緑谷が待ち構えていた。

 

「くっ!」

 

「スマァァァァアアアアッシュ!!!」

 

死柄木は緑谷の拳に触れようと右手を伸ばすが、エネルギー体に覆われていたため『崩壊』は発動せず、パワーでも完全に押し負け殴り飛ばされる。

結界の底に叩きつけられた死柄木は上半身を起こそうとして違和感に気付く。

緑谷の拳を受けた右手はぐちゃぐちゃになっていた。

埋め込まれた『超再生』の個性により再生を始めているが、これでは暫く使い物にならない。

 

「バカな……オールマイト並みの、パワーなんだぞ!?」

 

「ハッ!オールマイトねぇ!?

 とうの昔に引退した奴を、まぁだ引きずってやがんのかぁ!?」

 

「!?」

 

いつの間にか死柄木の正面に爆豪が移動し滞空していた。

彼の背中についていた2本の筒が肩越しに前を向き、死柄木に狙いを定めていた。

 

 

「ちっちぇなぁ!!」

 

 

筒に蓄積されていた爆豪の汗をエネルギー源とし、筒の先端の砲口が火を噴いた。

死柄木は爆炎に焼かれながら逃げ出したが、全身が焼け爛れている。

 

「がっ!?」

 

「僕らはとっくに……!」

 

逃げ出す方向を予測していた緑谷が左手から伸ばした黒鞭で死柄木を縛り上げ、引き寄せながら右の拳を引き絞る。

 

 

「『更に向こう(プルスウルトラ)』だぁあっ!!」

 

 

強烈なアッパーを受け、死柄木は今度は結界の天井に叩きつけられた。

右手が再生していたので結界に触れるが、やはり『崩壊』しない。

 

(アイツの……!)

 

この球状の壁が個性によるものだとしたら、それを発動しているのは間違いなくあの女。

ならば個性を奪えばこの状況を打開できると、炎の鳥の背に乗って妙な形で腕を組んでいる奴の方に狙いを定める。

 

眼が、合った。

 

 

「!?!?!?!!??!?」

 

 

直後死柄木の全身に走った恐ろしいまでの悪寒。

震えと汗が止まらない。

 

(けお、された!?オレが!?

 くそっ!なんだこの状況は!?

 なんだコイツらは!!?)

 

「うぉぉお!!」

「ハッハァ!!」

 

そして緑谷と爆豪は死柄木に生まれた隙を見逃さず、猛攻を続ける。

死柄木が対応できない速度で滅多打ちにされ、再生が追いつかないほどのダメージを受け続ける。

 

中途半端な目覚めに終わったとは言え、個性『AFO』と共に多数の個性を移植され、オールマイトに匹敵する身体能力を持つに至った死柄木弔。

マキアや異能解放軍との戦いで得た経験と『崩壊』の個性の進化を加味すれば、もはや敵などいないはずだった。

 

『崩壊』させようとしても触れることができない。

触れなければ『AFO』で個性を奪うこともできない。

『崩壊』を伝播させようにも、もう壊せるものがない。

寝起きだったとはいえ脳無たちには『崩壊』が及ばないよう加減したはずだ。

しかし妙な壁が出来て遮られたせいで内側に力が集中してしまい、自分の足場を残し全て壊してしまった。

『電波』の個性で配下との通信を試すがつながらない。使える手駒はもういない。

オールマイト並みの力を手に入れても、オールマイト以上の力を持つ者には及ばないのは当たり前。

他にもいくつか個性はあるが、単純に二人のスピードについていけない。

 

「がぁぁぁぁぁぁああああ!!!」

 

打つ手がなかった。

死柄木の野望が今潰えようとしている。

ヒーローを皆殺しにするはずが、ヒーロー候補生でしかない子供二人に殺されようとしている。

 

「ぁぁぁぁ……ぁぁぁああ!?」

 

体が崩れ始めた。

超再生の個性を持っているはずなのに。まだ再生できるはずなのに。

 

「……今、何月何日だ……!?」

 

ここでようやく死柄木も、今が本来自分が目覚める予定日より遥かに早いことに気付いた。

 

「大きすぎる力に……体が間に合っていないんだ!」

 

緑谷が爆豪を止め、死柄木に向けて叫ぶ。

 

「『オール・フォー・ワン』を手放せ!死柄木!

 そうしなきゃオマエが個性に殺されるぞ!!」

 

「なに……言ってんだオマエ……?」

 

「コイツはテメェも『助けたい』んだとよ。

 イカレてるぜ、ったく」

 

「……『助ける』?オレを?」

 

死柄木は爆豪の言葉が理解できず、そのまま聞き返す。

 

「『オール・フォー・ワン』の個性にはオール・フォー・ワンの意識が宿ってる!

 アイツはオマエの体を奪い取るためにオマエを利用してるんだ!だから!!」

 

「……ふざけんなよオマエ」

 

死柄木の心を占めていたのは、途方もない怒りだった。

自分は子供に、『手加減されていた』。

 

 

 

「ふざけんなぁぁぁぁぁぁあああ!!!」

 

 

 

彼は全身で『空気を押し出し』、緑谷たちを弾き飛ばした。

 

「……ヒーローの築いてきた全てに否定されてきた。

 だからこちらも否定する。

 だから壊す。

 だから力を手に入れる!

 今更理解しようなんて思うなよ……理解できないから、『ヒーロー』と『ヴィラン』だ!!」

 

「「!?」」

 

「離れろぉ!!」

 

ヒノカミの叫びが聞こえて、緑谷は咄嗟に『煙幕』を張って爆豪と共にさらに距離を取る。

無数の腕が絡み合ったような巨大な腕が、緑谷たちがいたところを通り過ぎた。

その余波で煙がまき散らされる。

増殖した死柄木の左腕が奴を包み、巨大な肉塊が膨れ上がっていく。




・ブラックバード

爆豪の背中に取り付けられた推進・攻撃ユニット。
爆豪の個性で生じた汗をエネルギー源としてため込んでいる。
上面は砲口、底面はスラスター。
破壊力はチーム内でも最も高く、人に向けるにはあまりに過剰。
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