『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第42話 轟 炎司

チーム『ワン・モア・タイム』の中で最もやる気と決意に満ちていたのは、間違いなくエンデヴァーだろう。

社会を守るためだけでなく、家族と向き合い取り戻すための戦いとなれば当然だ。

だからこそ彼は『努力(エンデヴァー)』の名に恥じぬ過酷な修行を続け、誰よりも著しく成長した。

その結果。

 

「凄いよエンデヴァー!

 もう完全に追い抜かれてしまったな!」

 

「……そうか……」

 

1ヵ月足らず。

雄英生徒たちのインターン開始前の時点で、彼はオールマイトと同等の身体能力を手に入れた。

彼の個性である炎も、その上位互換であるヒノカミから使い方を学び急激に成長している。

もはや彼の実力は完全にオールマイトを上回ったと言えるだろう。

そしてヒノカミの簡易武装錬金『鬼相纏鎧』。

他の誰にも使えなかったがエンデヴァーだけが使用できることが判明し、これにより『熱が籠りやすい』という彼の個性の欠点は解消され、オールマイトをはるかに超えるパワーを手にすることとなる。

まだ修行途中の段階とはいえヒノカミを除いた他のメンバー全員を相手に完封できる強さ。

彼は間違いなく、歴代最強の『ナンバーワンヒーロー』となった。

 

(こんなものなのか……?

 こんなもののために俺は、何を捨ててきた……!?)

 

しかしエンデヴァーの中にあるのは達成感ではなく、虚脱感と虚無感だ。

どれほど足掻いても叶わないと諦め、人道に背く行いをしてまで求めたものが手に入った。

拍子抜けするほどあっさりとだ。

だからこそ余計に虚しかった。そしてその思いが彼に一つの決断をさせた。

 

「ヒーローを……引退するじゃと……!?」

 

「あぁ。家族にも伝えてきた」

 

一次インターン終了後、エンデヴァーはチームの会合にて宣言した。

 

「荼毘が燈矢だと知られれば、どうせ突き上げをくらい辞職することになる。

 ならば先んじて責任を取る形で引退した方がよかろう」

 

「それは、そうかもしれないが……!」

 

「オールマイト……今なら少しだがお前の気持ちがわかる気がする。

 後を託せる者たちがいる。そしていずれ俺を超えていく。

 それが寂しくもあるが……どこか誇らしい」

 

「決意は……固いようだね」

 

校長の確認に迷うことなく頷く。

 

「わかった。ただ発表はことが終わるまで……いや、そうだね。

 君の引退発表を作戦に組み込んでもいいかな?」

 

「構わん。道化でもなんでも演じてやるさ」

 

「……やれやれ、ナンバーワンが立て続けに引退とはねぇ」

 

「ていうかそうなると次はまさかオレですか?

 不味いですし、無理ですよ。

 オレはヴィランの子で、しかも公安とどっぷりだったんですよ?

 過去がバレたらそれこそエンデヴァーさん以上の大炎上ですって」

 

「となると次点は私だが……実力が劣る身でトップを名乗るのは、流石にな。

 ミルコはどうかな?日本初の女性ナンバーワンヒーローは受けもいいと思うが?」

 

「え~やだよめんどくせぇ。

 全員嫌だってんならもう戦って決めようぜ。

 負けたやつがナンバーワンな」

 

「ミルコさんそれ逆とちゃいますか!?」

 

「つーかナンバーワンの座を押し付けあってんじゃねぇ!

 だったらオレによこせコラ!!」

 

「僕らまだ学生だから!さすがに無理だから!」

 

残るメンバーたちが騒ぎ出す様子を、エンデヴァーとオールマイトが並んで見守る。

 

「くっくっく……おい見ろオールマイト。

 ナンバーワンヒーローの座がじゃんけんで決まりそうだぞ?」

 

「みんな私以上に活躍してくれそうだけど……流石にじゃんけんは勘弁してほしいかな……!?」

 

「優秀な後継が選り取り見取りか、贅沢な悩みじゃの」

 

二人の会話にヒノカミが割り込んだ。

 

「しかしエンデヴァーよ、おぬしはその後どうするつもりじゃ?」

 

「そうだな……看守でも目指してみるか。

 どんな形でもいいから、燈矢の傍にいてやりたい」

 

「元ナンバーワンヒーローの看守か……この事件が終われば大量の逮捕者が出るじゃろうし、需要はありそうじゃの。

 しかし血縁がおるとなれば贔屓だなんだと余計な勘繰りもされるじゃろう。

 最低でも、お主が燈矢を捕えねばな」

 

「当然だ。

 ……それに関して一つ頼みたい。

 教えてほしい技がある」

 

「ふむ、なんじゃ?」

 

 

 

――――……

 

 

 

 

主戦場である山荘から離れ、火災を危惧し森を抜け、ヒーローによる包囲網の外側の荒野にて炎を向けあう荼毘とエンデヴァー。

 

「くそっ、くそっ、くそぉっ!!」

 

「どうした燈矢!炎の練りが甘くなっているぞ!

 そんなことで俺を超えられるのか!?」

 

「うるせぇぇぇぇえええ!!!」

 

荼毘の放つ炎はすべてエンデヴァーの鎧に吸収されている。

おまけにオールマイトすら優に超えるパワー。最初から荼毘に勝ち目などなかった。

彼の機動力を前に逃げ出すこともできず、破れかぶれで炎を吐き出し続けることしかできずにいた。

 

荼毘は熱に弱い体質で、自分の放つ炎に肉体が耐えられない。

だから炎を使うほど体は燃え、死に近づいていく。

 

「手本を見せてやる!プロミネンスバーン!!」

 

エンデヴァーの練り上げた『白い』炎がまたも荼毘を飲み込んだ。

 

「なんだよ……なんなんだよこれはぁ!?」

 

炎の中から出てきた荼毘の体は、個性を使うたびに黒く焼け爛れる肌は、また少し……『白く』なっていた。

 

「無駄に拡散させようとするから肉体への負荷が大きくなるのだ。

 瞬時に圧縮して一点にて解放しろ!それが赫灼の極意だ!

 ……もう一度だ、燈矢!」

 

「うぁぁぁぁぁああああっ!?」




・ヘブンフレイム

癒しの力を持つ白い炎。
ヒノカミの『不可死犠』の劣化模倣。
炎で包んだ者の肉体を活性化させ、怪我や病を癒す。
熱を込めるほど治癒力が強化され、圧縮して放てば欠損すら再生する。
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