『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第44話 機神

「SMAAASH!!」

 

「オラァァ!!死ねェェェェエ!!」

 

際限なく膨れ上がり全方位から襲い掛かる死柄木の指。

おそらく触れれば崩壊が走るのだろうが、二人は掠ることもなく全て迎撃している。

しかし破壊しても破壊しても再生し二人へと襲い掛かり続ける。

 

「くそっ!キリがない!」

 

「貴様ら、一旦引け!」

 

「……チッ!」

 

爆豪が大きな爆破で包囲網に風穴を開け、そこから揃ってヒノカミの元へと飛翔する。

二人を追いかけて迫る肉塊は、彼女の下にいる赫烏封月が放つ炎に焼かれて彼らには届かない。

合流したところで何重もの炎の網を張り、3人への攻撃を遮断した。

 

「……コイツはまた、醜い悪あがきだ」

 

距離を取り、結界の端から俯瞰したことで爆豪たちにも全容が見えてきた。

巨大な手が、指が、増殖を続けて結界の内側を埋めつくそうとしている。

 

「どうやら力尽くで結界諸共全て破壊するつもりらしいの」

 

「一応聞いとくが、結界が壊れることはねぇな?」

 

「儂がこの手を解かぬ限り揺るぎもせぬ」

 

今も死柄木が手指の一部を結界の壁に叩きつけているが、びくともしていない。

テリトリーは高い強度を持つ壁を作る能力ではなく、空間を遮断する概念能力だ。

壁という物質が存在するわけではないので触れても『崩壊』することはなく、物理的な衝撃で破壊できるものではない。

突破するなら同種の能力が必要だが、仮に持っていたとしても術者同士の力比べになる。

エネルギー切れがなく圧倒的な霊力を誇るヒノカミ相手に、出力勝負で勝てるはずもない。

そして結界の内側にいるヒノカミを攻撃して解除させようとしたとしても、同じく概念により『全てを焼失させる』赫烏封月が突破されることはない。

 

「……ここまで、じゃな」

 

「「!?」」

 

だがこれ以上緑谷たちを戦わせるわけにはいかない。

 

「もはやお主らだけでなんとかできるラインを超えた。

 これ以上戦うなら命をかけねばならぬ。

 そしてそのような行いを儂は認めぬ。そういう約束だったはずじゃ」

 

「……つまんねぇ幕切れだぜ」

 

「そんな……死柄木!」

 

緑谷は未だに彼の身を案じているが、この状況で無理をせずに彼を救い出す力は緑谷にはない。

ヒノカミなら可能だが、彼女には無駄な苦労をしてまで死柄木を救う理由がない。

 

 

「……しゃーないの」

 

 

ヒノカミは赫烏封月の背中から降りて前に進ませ、炎の結界網の内側のスペースを広げた。

 

「ヒノカミさん……?」

 

「……ちぃっとだけ力を貸してやる」

 

緑谷は約束を守り続けた。

自分や爆豪を危険に晒すような真似はしなかったし、死柄木を助けることも諦めなかった。

ヒノカミは死柄木を救うためでなく、緑谷の想いに応えるために動き出す。

 

「アレとやり合える『鎧』を用意してやる!」

 

ここはヒノカミが発動しているテリトリーの内側。

『刻思夢想』により彼女の記憶にある物を再現できる。

それがテリトリーの外では維持できないほど強大な物であっても、テリトリーの中なら一度実体化できれば消滅はしない。

 

「巨大化した怪人を相手にするなら、『巨大ロボ』と相場が決まっておる!

 ……そうじゃろ、照星!!」

 

ヒノカミの体を起点として彼女を覆うように機械と装甲が生み出され組み合わさり、巨大な人の形を作り上げていく。

それは全身甲冑(フルプレートアーマー)の武装錬金。

 

 

「来い!『バスターバロン』!!」

 

 

西洋甲冑を模した巨大ロボットが、純白のマントをはためかせた。

この武装錬金の本来の特性は『搭乗者の武装錬金の増幅再現』だが、緑谷たちは武装錬金を持っていない。

そのためヒノカミは具現化に当たりアレンジを加え、特性を『搭乗者の能力及び武装の増幅再現』に変更している。

 

『サブコクピットは両肩じゃ。

 儂はコレとテリトリーの維持に力を割かねばならんので、操縦は貴様らに任せる。

 状況に合わせて交代し対処しろ』

 

「オイ……コレに乗れってか!?」

 

「操縦って……どうやって!?」

 

『搭乗者の動きをトレースする。自分の体と同じように動かせるはずじゃ。

 ……ほれ、早くせんかい。

 あんまり死柄木がデカくなると、これに乗っても対処が難しくなるぞ?』

 

「っ!かっちゃん!!」

 

「……あ~クソッ!」

 

緑谷が右肩、爆豪が左肩の上に乗ると、二人の体がその中へと沈む。

 

『死柄木の本体の位置は画面に表示されとるな?

 直撃は避けろよ。確実に殺してしまうからの』

 

『……オイ、なんかあのヤローも形が変わっていってねぇか?』

 

『あれは……上半身だけじゃが人型か?

 全長およそ100メートル……バスターバロンの倍近いな。

 体格だけなら4倍か?

 こっちに合わせてきたようじゃが、いよいよ状況が特撮染みてきたの』

 

「……かっちゃん、お願い。僕から行かせて。」

 

『……とっとと済ませろ』

 

サブコクピットの中で緑谷が構えると、バスターバロンが全く同じ姿勢を取った。

右脚を前に、左足を後ろに。

軽く前に屈んで握った右拳を左腰の横に動かし、拳の上に左手を添える。

 

 

「『2nd(セカンド)』トランスミッション」

 




・バスターバロン アナザータイプ

錬金術の世界、坂口照星の武装錬金の模倣体。
全長50メートルを超える、西洋鎧を身に着けた巨大ロボ。
具現化に当たり手を加えており、特性は『搭乗者の能力及び装備の増幅再現』となっている。
ただし特性を変化させたことでヒノカミの記憶の中のオリジナルと差異が生じ、それが基礎スペックの低下という形で表れている。

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