『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第46話 デク:ライジング

(……なんだ……?)

 

緑谷の傲慢な発言に一度は激昂し錯乱しかけた死柄木弔だったが、今は巨大な怪人の中から冷静に戦況を観察していた。

体にかかる負担は大きいが、あのふざけたロボットと渡り合うにはそれ以上の巨体とパワーでぶつかるしかないと判断。

再生個性持ちの自分の方が有利なのだからと持久戦に徹していた。

しかしここに来て彼は自分の体の異変に気付いた。

 

(頭が痛ぇ。目が……意識が、かすむ……!?)

 

無理な増殖をした肉体への反動、とは思えない。

だったら症状は頭より先に体に現れるはずだ。

 

『……オイクソ指、聞こえてっか?

 聞こえてんならいいこと教えてやらぁ』

 

今まで散々こちらに爆撃を加えてきたロボットが結界のすぐ傍で動きを止め、半透明の膜を叩く。

 

『こいつぁテリトリーっつってな、空間を遮断する障壁だそうだ。

 これで通信や転移、テメェの崩壊の伝播を妨害してんのさ。

 ついでに光以外は全部遮断する設定にしてあるらしい。音も、風もだ』

 

生意気なガキの声が聞こえてくる。

何が言いたいのかと問い返そうにも、この肉の鎧に声を発する機能はない。

そして何より、思考がまとまらない。

 

『……さぁて、ここで問題でぇす』

 

爆豪はあざけるように問いかける。

表情のないロボットだというのに、あのむかつく顔の幻が見えるようだ。

 

 

 

 

『この障壁の内側の『酸素』はあとどのくらい残ってるでしょーかぁ!?』

 

 

(……!?)

 

直径およそ5キロメートルの球状の結界。

内側にいる人間は、死柄木自身を合わせても僅か4人。

呼吸だけで消費し切るはずもない。

しかし爆豪がロボットを操縦し始めてから、あの巨体で散々大爆破を行ってきた。

加えて今の死柄木自身の肉体が。

 

 

『そのデカイ図体動かすためにどんだけ激しく呼吸してんだろうなぁ!?

 怪人の巨大化は『負けフラグ』だバァーーーカ!!!』

 

 

そしてロボットの腕と背中のユニットから、再三の大爆破攻撃が行われた。

爆破の威力が少しずつ弱くなっていたのは相手が疲弊してきたからと考えていたがそうではなかった。

燃やす酸素が、もうこの結界の内側に少なくなっていたからだった。

そして今の爆破攻撃によりさらに酸素が激減した。

一層動悸が激しくなる。今死柄木を襲っているのは、酸欠の初期症状だ。

 

(だっ……たら……!)

 

酸素が無くても活動できるよう、自分の体を作り替えればいい。

改造されたこの体なら能動的に肉体を変化させ、環境に適応することができる。

 

(……ぐっ……!)

 

だがそんな簡単にできる規模の変化ではない。手指を増やすのとはわけが違う。

地球上にいるあらゆる生命体は呼吸を行い、酸素で栄養分を燃焼させエネルギーを生産して活動している。

光合成を行い酸素を生み出す植物ですら呼吸という行為は必要だ。

生物という枠組みを外れるほどの暴挙を、まともな思考ができない状態で、短時間で行おうとすること自体に無理がある。

むしろその選択により、鈍っていた巨体の動きが更に悪くなった。

 

『その隙を!』

『逃しはしない!!』

 

操縦者をスイッチした機神が拳を黒いエネルギーで覆い、怪人の胸を殴りつける。

 

(亀裂が大きい、再生も遅い!これなら!)

 

『トランスミッション!!』

 

爆豪に交代していた間にクールタイムは終了している。緑谷は再び『変速』を発動。

死柄木が埋まっている頭部を避けるように攻撃し、体を削り落としていく。

しかしここで死柄木も攻勢に出た。

接近している機神を包囲するように、いたるところから無数の腕が伸びて襲い掛かってくる。

 

『手足は瞬時に復元させる!構わず攻めよ!』

 

『ありがとうございます!!』

 

一気に『五速(オーバードライブ)』まで引き上げ、両手のラッシュで無数の腕を迎撃する。

一度攻撃する度に機神の腕に崩壊の亀裂が走るが、メインコクピットにいるヒノカミが霊力を注ぎ瞬時に再構成、そして再び攻撃するを繰り返す。

 

『うぉぉぉぉぉおおおおお!!!』

 

機神の拳と怪人の拳が、何度も何度もぶつかり合う。

一発一発が全部100%以上、しかも全長50メートルを超える巨体で増幅再現された攻撃。

テリトリーが無ければその余波だけで周辺都市は甚大な被害を受けていただろう。

 

 

『死柄木……『こんな言葉を知ってるか!?』』

 

それは緑谷と死柄木が初めて出会った日の焼き直し。

あの時はまだ互いに弱く、オールマイトと脳無に託して見ているだけだった。

だが今、彼ら自身が戦場で向かい合う。

 

『……『PLUS(更に)』!!』

 

押し負け続けて首から上だけになった怪人に、機神の右の拳がめり込む。

 

『『ULTRA(向こうへ)』!!』

 

そして振り抜かれ、機神の胴体ほどもあった頭部が吹き飛び障壁に激突。

ひびが入った頭部は地面に落下すると同時に崩れ落ち完全に崩壊。

本体であった死柄木弔が、力なく結界の底に投げ出されていた。

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