第59話 六道リンネ:リスタート
ヴィラン蔓延る世となった今ではほとんど見ることも無くなった『極道』、指定敵組織『死穢八斎會』。
危険な薬物を売り捌くこの組織を撲滅し、組織に利用されている少女を助けるため、多くのヒーローがチームを組んで襲撃作戦を決行した。
OFA関係者としてナイトアイの下にインターンに訪れた緑谷と爆豪もまた、彼の指揮下にて他のヒーローやクラスメイトと共にこの作戦に参加していた。
しかし拠点に侵入した後に分断工作を受け、『透過』の個性を持つルミリオンだけが先に進むことになった。
遅れて辿り着いた時には彼は既に満身創痍であり、敵の作り出した特殊な銃弾を撃ち込まれ個性すら失っていた。
緑谷、爆豪、ナイトアイが治崎に挑む。
並みのヒーローを超える戦闘力を持つ生徒二人と、オールマイトの元サイドキックである優秀なヒーローは確かに治崎を圧倒した。
しかし治崎は自分を慕う部下すら次々と取り込んで巨大化し、受けた傷を『修復』して何度も立ち上がる。
イレイザーは連れ去られこの場にいない。どれだけ攻撃してもキリがなかった。
「がっ……!」
「ナイトアイ!!」
そしてまず一人、脱落した。
「かっちゃん!!」
「さっさと行けぇ!!」
爆豪の『爆破』で生じた『炎を操作』することで連携していた緑谷が、『転移』でナイトアイのもとに移動する。
まだ未熟な彼では自分一人、見えている場所にしか移動できないため、ナイトアイを抱えて走り、戦線を離脱する。
「サー!!」
「ひどい……くっ!」
ミリオの傍にナイトアイを寝かせる。彼の腹には孔が開いていた。
緑谷は掌から白い炎を生み出しナイトアイを『再生』しようと試みるが。
(……傷が深すぎる!こんなペースじゃ間に合わない!)
まだ慣れていない能力だからか、再生速度はあまりに遅い。
このままでは傷が塞がる前に彼の命が尽きてしまうだろう。
「緑谷……何をしている……」
「しゃべらないで!血が!!」
「戻れ……壊理ちゃんを、助けろ……!
お前は、オールマイトが見込んだヒーローだろう……?」
「ダメだ、ダメだダメだ!!
生きて皆でもう一度会おうって約束したじゃないですか……『あの人』に!!」
「……緑、……!?」
ナイトアイが言葉を止め、目を見開いた。
彼の視線は緑谷の背後に向けられており、何事かと緑谷も後ろを振り向く。
「え……」
彼の後ろに立っていたのは、機械の鎧を纏った鬼。
見る者を威圧する憤怒の表情を象った仮面が、無言で緑谷たちを見下ろしている。
『……』
「っ!?サーーーー!!!」
突如、鬼がナイトアイに向けて『白い炎』を放った。
それは緑谷が使っていた炎と同じもの。
しかし彼を遥かに超える熱量を持つそれは、瞬く間にナイトアイの傷を再生した。
「アナタは……」
『……』
鬼は何も答えず、振り向いて治崎の方へと歩き出す。
治崎も爆豪も、鬼の存在に気付いた。
「なんだ……?貴様も病人か……?」
『……』
右手に炎の剣を生み出し、左手に白銀の蛇を従えた鬼が、治崎へと襲い掛かった。
勝負は、一瞬だった。
鬼は治崎の前に転移した直後、炎の剣で彼の体から生えている巨大な手足を斬り落とした。
そして彼が自分を修復する前に巨大化した蛇が彼を覆い、締め上げ、何度も何度も巻き付いて巨大な球体となった。
何故か蛇には彼の『修復』が通用せず、しばらく足掻いていたようだがやがて静かになった。
「……何者だ、お前は!」
他のヒーローに救助され再び戦場に戻って来たイレイザーが、状況を理解してもなお鬼に敵意を向ける。
どうやら助けられたようだが、その恐ろしい姿と圧倒的な戦闘力を持つ正体不明の存在を警戒するのは当たり前だ。
続いてやってきた他のヒーローや、同じく作戦に参加していた雄英生徒たちも身構える。
『……』
「ダンマリか……?」
しかし鬼は何も言葉を返すことなく、無言で佇んでいる。
ヒーローたちはより一層警戒心を大きくした。
「……待ってください!!」
「っ!?オイ、デク!?」
しかしヒーローたちの包囲網を突破して、緑谷が強引に鬼へと迫る。
それを止めようと爆豪も続く。
もはや二人は鬼の目と鼻の先。
彼らを傷付けさせるわけにはいかないとヒーローたちが鬼に飛びかかろうとする。
「『ヒノカミ』さん!!」
そして緑谷の叫びを聞いて動きを止めた。
緑谷は気付いていた。
彼女が姿を隠し言葉を発しないのは、『また』間違えている可能性を、『また』拒絶されることを恐れ怯えているだけだと。
「あの、僕、ずっと見てて!
その……『夢』で!」
『……』
「『死神』とか、『シャーマン』とか……『別の僕達』のこととか!
その、ええと、だから……!」
ここには彼女の事情を知らぬものが大勢いる。
余計なことを口走るべきではないとわかっている。
だが『今』言わなければいけないのだ。
「……『おかえりなさい』!!」
彼女を迎え入れる言葉を。
『……っ!』
鬼が動き、二人に掴みかかろうとする。
しかし寸前で纏っていた鎧が消滅した。
「わっぷ!」
「ハァ!?」
和服を着た小柄な女性が二人の頭に両腕を回し、抱え込んで呟いた。
「……『ただいま』」
本作の本編はこれにて完結となります。
ご愛読ありがとうございました。
この後設定紹介を投稿します。
外伝を予定していますが、それは暫く間を空ける予定です。