『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第31話

「ルキア、無事か!?」

 

「兄さま!」

 

「おい、さっきの斬り甲斐のありそうなデカブツはどこいった!?」

 

「真っ先にそれか……変わらんの、貴様は」

 

「ん?おぉ?」

 

「隣ちゃんだぁ!」

 

「お久しぶりです、隣互さん。

 虚圏にいらしていたのですね。

 うまく霊圧が感じられなかったので気づきませんでした」

 

「あー、その辺はちと説明が難しいんじゃが……。

 ま、何はともあれ久しぶりじゃの。卯ノ花、更木」

 

数分も経たない内に3人の隊長と2人の副隊長が合流した。

涅マユリとやらはまだ距離がある。妙に移動速度が遅い。

奴が嫌いな彼女にとっては好都合だ。

 

「情報交換したいんじゃが、付き合ってもらえるか?」

 

「残念ですが、今は時間が……」

 

「っ!そうだ、空座町があぶねぇんだ!

 何とかして現世に戻る方法を探さねぇと!」

 

「ふぅむ……」

 

どうやら差し迫った事態ではあるようだが、何もわからずに動くのは危険だ。

家族のいる空座町に危険が迫っているとなれば、猶の事万全を期しておきたい。

 

「……今なら、いけるかのぅ?」

 

隣互は足元に落ちていた拳大の石を拾い、少し離れた場所へ放り投げる。

 

「ふっ!」

 

直後掌を叩きつけテリトリーを発動。

その場の全員を覆う、最小限の結界を作り出した。

 

「これって、さっきの?」

 

「……領域、だったか?

 なんだ?周りになんか潜んでいやがんのか?」

 

「……成功、か。

 最近無茶したからコツを掴んだかの?

 ほれ、そこを見てみぃ」

 

「「「?」」」

 

両手が塞がっているので、隣互は顎で結界の外を指す。

その場にいた全員がそちらに視線を向けると。

 

「石が……浮いてる?」

 

「かか、違う違う。『時を止めた』のよ」

 

「なっ!?」

 

雨竜が結界の外を見渡す。

元々変化が乏しい砂漠のような場所だったのでわかりづらかったが、風があったはずなのに砂が動いていない。

そしてその風の音すら消えている。

 

「じゃがこれは……維持するだけで手一杯じゃの。

 卯ノ花、皆の治療を頼む。見ての通り時間はいくらでもあるから、ゆっくりでええぞ」

 

「……勇音、手伝いなさい」

 

「は、はいっ!」

 

「時を……止めた……!?

 隣互さん、アナタは一体……!」

 

「ん~……厳密に言うと今の儂は、『黒崎隣互』であって『黒崎隣互』ではないんよな」

 

「どういうことだよ!?」

 

「今から全部説明してやるわい。

 とりあえず、座ろうか」

 

隣互はさらにもう少しだけ霊力を絞り出し、結界の内側にピクニックシートを具現化した。

砂漠のような場所なので、流石に地べたに直で座るのは憚られたからだ。

 

「これは!?」

 

「……この程度の物の具現化も容易にできぬか。

 さ、ともかく小休止じゃ。休息しながらで良いから耳だけ傾けてくれ」

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

記録映像を流せれば話は早かったのだが、時間を止めながらでは霊力の上限に達しそうだったので諦めた。

彼女が今使っているのは時間操作能力であり、できることは時間停止だけではない。

制御を誤って時間停止が解除されるだけならまだいいが、時間を加速させてしまったら目も当てられないので。

 

「生まれ、変わり?異世界から!?」

 

「この世界に生まれた当初は時間移動と思っておったんじゃがな。

 ここの後の世界でようやく気付いたんじゃ」

 

「……ってことはもしかしてあの時、姉貴はどっかに飛ばされたんじゃなくて死んじまってたのか!?」

 

「……そうなるなぁ」

 

「「「っ!?」」」

 

突如殺気を放ち始めた隣互に一護たちは息を呑むが、すぐに収めたので立ち上がりかけて止めた。

狭い結界の中なので逃げ場などないが。

 

「なるほど、道理で……少し背が伸びていると思いました」

 

「わかってくださるかっ!?」

 

黒崎隣互の享年は15歳。

今の体は安心院なじみの世界に生まれた時の物で、不老になったのは20歳。

個性の影響で外見はほぼ同じに育っているとはいえ、5歳ほど年を取っている。

身長も160センチにまで成長しているのだ。1桁目を切り上げたら。

 

「ゴホン……儂はもう何度も生まれ変わり、長い間戦い続けてきたんじゃ。

 そしてようやく時間と世界の壁すら超える転移術を身に着けた。

 しかし黒崎隣互が死ぬ以前の時間軸に来てしまうと、平行世界が生じる可能性があってな。

 万が一のために少し後の時間を狙った結果が今というわけじゃ」

 

仮に過去に来たとしても、過去の自分と出会わなければ問題はないのかもしれない。

しかしもし顔を合わせたとしたら、過去の自分は今の自分とは別存在となってしまう。

自分の記憶の中に、自分と出会った記憶はないのだから。

 

「ほ~ぉ。どんだけ強くなったんだてめぇ」

 

「……月を破壊したことならある」

 

「「「月ぃ!?」」」

 

「ぐははははは!そいつはスゲェ!

 後でやり合おうぜ!!」

 

「楽しみだね剣ちゃん!」

 

「貴様は相変わらず物怖じせんな~……。

 んで、転移以外にも色々な力を手に入れた。

 先ほどの鬼の鎧や炎の巨人、時間を止めたのもその一つじゃ。

 生意気に聞こえるじゃろうが藍染など今の儂にとっては蟻に等しい。

 『鏡花水月』とやらも多分効かん……というか目を閉じていても秒で斬り殺せるわい」

 

「……頼もしいことだが、これが事実ならば藍染は哀れなものだな」

 

「『私が天に立つ』、でしたか。

 ……今までの振る舞いが滑稽にしか映りませんね」

 

「とまぁ、儂からはこんなところじゃ。

 次は主らの聞かせてくれ」

 

「あぁ、尸魂界の戦いの後……」

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

時は遡り、藍染の手により虚圏と現世を繋げる黒腔が閉ざされた直後。

藍染は部下である二人の死神と多数の破面を連れ現世へと侵攻した。

これを予期していた護廷十三隊は、敵の破壊対象である空座町を住民ごと尸魂界へと転移させ、代わりに張りぼての街を配置することでそこを決戦の地とした。

対して藍染は、ならば死神たちを殲滅し尸魂界で空座町を破壊し目的を達成すると宣言。

 

「……ついに始まりましたね」

 

偽の空座町を覆う結界の外で、死神たちと藍染たちが向き合う様子を観察しながら、浦原は待機していた。

傍には死神の力を取り戻した黒崎一心と、夜一も控えている。

浦原はこの日に備え、崩玉と一体化した藍染を封印するための術式を開発していた。

これを奴に打ち込むために、敢えて戦線には参加せず結界の外から隙を伺っているのだ。

 

「……隣互サンは間に合いませんでしたか」

 

しかし残念ながらもう一つの布石、黒崎隣互はこの場には現れなかった。

浦原が意図的に転生させて、成長と再来を期待した異界の旅人。

どれほど成長するかは予測もつかないが、自分の開発した術などより遥かに頼りになっただろう。

 

(藍染の動きが予想より早かったのもありますが……仕方ない。

 今はアタシらにできることを……!)

 

 

 

「いや、間に合ったぞ」

 

 

「「!?」」

 

「っ!?隣互サ……!」

 

浦原は背後からの声に気付いて後ろを向き、そこで硬直した。

 

「間に合ってよかった……戦いで貴様が殺されてしまったら……」

 

 

 

 

 

「儂が貴様を殺せんからなぁあああああ!!」

 

 

「アバーーーーーーーーッ!!?」

 

 

鬼が、いた。

 




あらゆる場面に転移できるスキル『書国漫遊』は複数のスキルを混ぜて作られており、その中には時を操るスキル『時感作用』も含まれています。
なのでヒノカミはある程度時間を操作する能力を持っています。
今の彼女の全力でも、領域で仕切った狭い空間に限定してなんとかというところですが。

一度故郷に戻り、諸々の憂いが晴れた彼女はどんどん自分の殻を破っていきます。
一応本編は完結したし、もうどんどんやっちゃえって感じで。
加速するチートを前に、悪党どもの悲鳴と仲間たちの胃痛が響き渡ります。
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