『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第32話

「な、なんじゃ貴様は!破面か!?」

 

「落ち着け夜一サン、そりゃ姉貴だ」

 

「「一護!?」」

 

突如現れ、浦原の胸倉を掴んでつるし上げる正体不明の鬼の怪人。

敵かと思い身構えた夜一を止めたのは、虚圏にいるはずの一護だった。

彼だけではない。

同行した茶渡と雨竜、攫われた織姫、尸魂界からの援軍であるルキアと恋次、さらに卯ノ花、虎徹、白哉、更木、草鹿まで。

 

「お主らは!?

 先ほど藍染は『虚圏に幽閉した』と……」

 

「その様子では、藍染が現れて間もないようですね」

 

「あ、あぁ。まだ1分そこいらで……ていうか隣互!?」

 

一心は浦原にアイアンクローをかます鬼を二度見する。

 

「うまくいったようですよ、隣互さん。

 ……お気持ちはわかりますが、中断してください」

 

「……仕方ない」

 

卯ノ花に促され、隣互は浦原から手を離した。

そして武装錬金を解除、再びテリトリーを発動し、結界の外の時間を止める。

 

「ゲホッ、よ、夜一サン!

 アタシの頭無事ですか!?割れてませんか!?」

 

「無事とは言えんな。元からイカれとる」

 

「隣互ーー!我が娘よーーーー!!!」

 

「父上ーー!手が離れたらまずいんで抱擁は待ってくれーー!!」

 

「変わんねぇなぁ、姉貴は」

 

「どれほどかは知らないが、長い年月が経っているとは思えないね」

 

「……なるほど、確かに志波の娘だ」

 

「いーから、さっさと伝えること伝えて戦場に行こうぜ。

 これ以上お預け喰らうのは御免だぞ」

 

「そうですね。夜一さん、こちらの状況を説明したいのですがよろしいですか?」

 

代表して卯ノ花が口を開く。

 

黒腔が閉ざされたことで虚圏にいた一同は帰還手段を失った。

そこに転生を繰り返して圧倒的強者となった隣互が転移にて来訪。

彼女は即座に虚圏を守っていた破面を無力化した。

彼女は平行世界の壁すら超える力を手に入れている。現世への転移など造作もない。

しかし詳細な状況を把握した彼女はどうせならと別の提案をしてきた。

 

現世と虚圏が完全に遮断された状況なら、時間が経った虚圏から遮断された直後の現世に転移しても過去の改変にはあたらないはず。

ならば黒腔が閉じた直後の時間軸に帰還すれば良いのではないか?

 

現世と虚圏は異界ではあるものの隣り合う世界であり、平行世界ではない。

他の人間を連れて転移することも、細かい時間を指定して転移することも容易であるとのこと。

そして実行。夜一の気配を辿って転移し合流したところで今に至る。

 

「隣互はそんなことまでできるようになったのか……。

 ……む?お主ら頭数が足りんのではないか?涅はどうした?」

 

「彼ならば……」

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

「アイツら……一体どこへ行った!

 ようやく黒腔を操作する技術が確立したというのに……!」

 

「マユリ様、彼らの痕跡が残る場所に手紙らしきものが」

 

「よこせ!!」

 

 

『現世に戻る手段が見つかりました。先に帰還します。 卯ノ花』

 

 

「……ふざけるんじゃないヨ!!

 なんだその手段とやらは!

 私が黒腔を解析するのにどれだけの時間をかけたと思っている!?」

 

「時間がかかったから、置いていかれたのではないでしょうか」

 

「ウルサイんだヨ!!」

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

「英断じゃの。

 隣互とアイツは反発する未来しか見えぬ」

 

「一人でも戦力は多い方がいい……と考えておりましたが、どうやら彼女一人がいれば事足りるようなので」

 

「頼もしいやら末恐ろしいやら……。

 しかしあ奴はなぜ斯様に浦原に当たっておるのだ?」

 

「あ~……夜一サンたちは姉貴の事情を知ってるんだよな」

 

テリトリーを維持しつつ、決して逃がさぬと浦原を踏みつける隣互を一瞥し、一護が彼らに明かす。

 

 

 

「姉貴が死んだの、あの野郎が仕込んだ爆弾のせいらしい」

 

「「あ”ぁ”ん!?」」

 

「ひいぃっ!!」

 

浦原の敵がまた増えた。

無理もない。隣互は一心にとっては愛する娘であり、夜一にとっても愛弟子である。

なるほど、隣互が浦原に激怒するのも……雨竜たちまでもがゴミを見る目を向けているのも納得だ。

 

「スイマセンでした!

 ですがこれには、ふっかぁ~~~いワケが……」

 

「言う必要はない。予想はついておる。

 ……貴様儂の身体に『崩玉』とやらを埋め込みおったな!?」

 

「「なにぃ!?」」

 

「あ、アハハハハハ……」

 

自分の魂の中に何か異物が埋まっていると気付いたのは、OMTから『転生』の個性を摘出するときだった。

最初は安心院なじみの仕業かと考えたが、アイツが隠すつもりならこの程度でバレるようにはしていないだろうし、バレてもいいならそもそも隠さず伝えるだろう。

そういう点ではアイツのことを信用しているし、認めている。

記憶を遡り、他に魂に何かを埋め込まれるようなタイミングがあったとすれば……浦原に卍解を使われた時しかなかった。

そして一体何を埋め込んだのか。

尸魂界にて藍染の目的を聞いていた隣互は、それが『崩玉』であると思い至った。

 

「……崩玉を手に入れた藍染を倒すなら、こちらも崩玉を従えた戦士をぶつけるのが最良と判断しました。

 しかし崩玉が完全に定着するまで藍染にそれを隠しつつ、時間を確保しなければなりません。

 それができるのは平行世界を超えて転生するアナタしかいない。

 だからアタシはもう一つの崩玉を作り……へぶっ!」

 

「テメーうちの娘を何勝手に傷物にしてくれてんだ!

 責任とれんのかアァン!?」

 

「父上!儂コレの『つがい』とか嫌じゃ!!」

 

「俺だってこいつに『お義父さん』とか呼ばれたくねーーー!!!」

 

「ひどっ!アタシもそんなつもりないですが、そこまで言わなくていいんじゃないですかね!?」

 

「俺の娘のどこが不満だってんだゴルァーーー!!」

 

「いい加減にしろやこのクソ親父!

 話が進まねぇんだよ!!」

 

「ぐっはぁーーぶべっ!!」

 

耐え兼ねた一護が一心を蹴り飛ばし、彼は結界に叩きつけられ気絶した。

時間停止の負担を小さくするため結界の大きさは最小限なので、この人数ではちょっと狭い。

 

「ハァ……では夜一さん。

 突入後の作戦を計画しましたので、ご清聴願います」

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

「では皆さん、準備はよろしいですか?」

 

「「「はい」」」

 

「ようやくか」

 

「心得た」

 

「……むぅ」

 

一人不満気な隣互に視線が集まる。

掌を合わせて胡坐をかいている彼女の下には座布団の代わりに浦原が敷かれている。

 

「あの、隣互サン?どうかそろそろ……」

 

「あん?」

 

「なんでもないッス!」

 

しかし彼は身動きこそ取れないもののピンピンしている。

隣互は時間停止中はほとんど何もできないので、未だに彼に手が出せずにいるのだ。

怨敵を前にお預けを喰らい続けたせいで彼女の機嫌はすこぶる悪い。

 

「今は、時間がありませんので」

 

「……わかっておる」

 

そして時間停止を解除すれば戦いが始まる。

浦原も藍染に対抗するための貴重な戦力の一つだ。

 

 

 

「……一分だけですよ?」

 

「よっしゃ!」

 

「マジすかぁぁぁぁぁああああ!?」

 

しかし卯ノ花は浦原という戦力よりも、隣互のメンタルを優先した。

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

「……お!やっぱおるやん一護!

 突然霊圧感じたからビビったわ!」

 

「平子!?やっぱアンタらも来てたのか!?」

 

「おー、藍染の奴をぶっ飛ばしにな」

 

「せやけど死神連中がみょ~な結界張っとって入れへんねん!」

 

「そういうことでしたら、我々と共に向かいませんか?

 間もなく突入する予定ですので」

 

「卯ノ花さん……しゃあない、ここはひとつ共闘といこか」

 

「……なぁ一護、聞いていいか?」

 

「なんだよ、拳西」

 

 

 

 

「HAHAHAHAHAHAHA!!」

 

ゴッ!ガスッ!ベキ!ゴン!ドス、ドス!ゴキィ!

 

 

 

 

「……あれはなんだ?」

 

「気にすんな。ゴミ掃除だ」

 

「ゴミ……」

 

「さ、さよか……」

 

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