『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第22話

オールマイトが抑え、ヒノカミが切り裂き、脳無が失った部位をまた生やす。

このやり取りを繰り返すこと十数分。

ようやく状況が動いた。

 

「…………」

 

「……おい、脳無。

 どうした、動け!動けよ!」

 

力の差をわからせるために、あえて弔と黒霧はその場に残すようヒーローたちに要請していた。

彼らにとってもはや唯一の希望である脳無が目の前で音を立てて倒れる。

 

「やれやれ、ようやっとか」

 

「私並みのパワーに加えてあんなとんでもない再生を何度も繰り返したら、エネルギー切れするのも当然だよね」

 

「これが貴様に従うだけの道具でなければ、ここまで追い込まれる前に異常を伝えるか、状況の変化に合わせて行動を変えることもできたであろうが……。

 無能な上司を持つと、部下は苦労するよなぁ」

 

「くそぉ……この……チートどもがぁ……!」

 

セメントスが檻を解除し、動かない脳無を引きずるオールマイトと炎を消したヒノカミが歩み寄ってくる。

ヒノカミは自分の個性の影響で衣服がボロボロだが、目立った傷はない。

オールマイトは血の一滴すら流すことはなかった。

他のヒーローも生徒も全員無事。

対してヴィランは逃げ出した者も含めて一人残らず拘束されている。

言い訳のしようもない完全敗北。

その結果が弔たちに突き付けられた。

 

「さて、忘れんうちに続きと行こうか。

 ……よしよし、小刀は無事じゃな」

 

「ちょっと待った!まさか彼の手を斬り落とす話続いてたの!?

 流石に戦意を失ったヴィランに手を上げるのは不味いって!!」

 

「仕方ないのー……良かったな小僧。

 『オールマイトに助けてもらえて』」

 

「っ!ぐああああああ!!」

 

これ以上とない屈辱だろう。

受け入れがたくとも事実として残る。

オールマイトを殺しに来た死柄木弔は、オールマイトに助けられてしまったのだ。

 

(((えげつねぇ)))

 

ヒノカミはこの流れを狙っていたのだと察し、オールマイトだけでなく周囲のヒーローたちも呆れ果てる。

 

「なんでだ『先生』!話が違うじゃないか!

 これならオールマイトにも勝てるって言ったじゃないか!」

 

「「「……!」」」

 

ヒーローたちが弔の絶叫に、聞き捨てならない単語が含まれていることに気づく。

 

「それがこんなあっけなく……何もできずに終わるってのか!?

 俺を騙したのかよ!先生!……ゲボッ」

 

突如、弔の口から黒い液体が吐き出された。

 

「なんじゃ!?」

 

「!?こっちもです!!」

 

イレイザーヘッドが拘束していた黒霧の体からも同様に液体が溢れ出し、彼らを包み込む。

液体は小さくなっていき、やがて何一つ痕跡を残さず消え去った。

 

「……イレイザー!」

 

「黒霧の個性は消していましたし、液体も見ていました。

 他の者の個性と思われます」

 

「転移系個性は希少ですよね?

 黒霧の他にもう一人いたってことですか?」

 

「……外と連絡取れました。

 他のヴィランは全員拘束しており、逃げ出した者はいないそうです」

 

「コノ場ニ現レタ者デハナイ……恐ラクソレガ」

 

「『先生』……この事件の真の黒幕か……」

 

オールマイトたちはすでに黒幕が何者か把握している。

しかしそれを明かすわけにはいかず押し黙った。

 

「ま、何はともあれ騒動は終結じゃ。

 被害状況の確認と今後の対応は、後ほど協議すればよかろう」

 

ヒノカミが手を叩き、ヒーローたちの話を打ち切って視線を集める。

 

「……ということで、その時になったら起こしてくれ」

 

「「「は?」」」

 

言うだけ言って、ヒノカミは倒れる。

受け身も取らず、顔面から、音を立てて。

 

「ヒノカミ!?どうしました!?」

 

「無茶しすぎたんだよ!救護ロボ呼んで!」

 

自分の個性による爆発のダメージと、赫灼熱剣の制御に費やした精神力の消耗。

そして掠れば即死する暴力の嵐に晒され続けたストレス。

現役から退いて長い彼女には耐えられるものではなかった。

保健室に運ばれた彼女はこのまま寝かせてやろうという話になり、警察へのヴィラン引き渡しや捜査への協力など、事後処理は他のヒーローたちだけで対応することにした。

主犯格の二人に逃げられたことだけは失点だが、それ以外は完璧な対応ができたと言えるだろう。

 

故に雄英は、隠すことなく今回の事件の詳細を公表。

USJにはあらかじめスタンドアロン型の録画機器を設置しておいたので、通信妨害が行われている最中の映像もすべて記録されている。

転移系個性持ちによる襲撃と離脱を防ぐ難しさは素人でもわかることであり、生徒にもヒーローにも一切の被害がなくほぼ全員のヴィランを捕らえたこともあって、世間では雄英への批判はほとんど起きなかった。

マスコミの中にはそれでも雄英から謝罪を引き出そうと食いついてくる者がいたが、そこで今回の襲撃に当たりマスコミたちがヴィランに利用されていたという証拠映像を公開。これ以上藪をつつけば自分たちにも批判の矛先が向くと理解した途端、彼らは一斉に掌を返し雄英を称賛する記事を書き始めた。

 

「時にはヒノカミ流のやり方も悪くはないよ。状況次第というやつさ!HAHAHAHAHA!!」

 

内面にヒノカミ以上の闇を抱えている根津校長は、実に狂気じみた顔で笑っていた。




襲撃事件の片棒を担いだとなれば、マスコミがでかい顔できるはずがないと思うんですよね。
証拠もばっちり揃えているので言い逃れは許さん。
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