『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第34話

「……こぉれはまた、酷いモンですねェ……」

 

心優しい織姫と虎徹勇音に最低限の治療を施され、ようやく意識を取り戻した浦原が戦場を見上げて呟く。

 

1から3の数字を与えられた十刃はみな強敵だった。

彼らの臣下もまた席官や副隊長に匹敵する強者だった。

 

だが数が違い過ぎた。

偽の空座町で藍染を待ち構えていたのが6人。

虚圏から戻って来たのが3人。

隊長と同等以上の仮面の軍勢が8人。

夜一と一心の2人。

そして彼らと並んでも引けを取らない一護。

 

隊長格は合計20人。加えて。

 

「はっはァー!

 なんや知らんけど虚化しっぱなしでもマジで全然疲れへんわ!!」

 

「おい!やっぱ俺は治さねぇようにできねぇか!?」

 

「諦めなさい、更木隊長」

 

「治るとしても、痛いのは嫌だねぇ~」

 

戦いの中で死神たちが傷つくと、突如白い炎が現れ彼らを包む。

そして炎が消えると傷が完全に回復しているのである。

 

隣互が提案した作戦はこうだ。

『負傷も消耗も全部自分が元に戻すから好きに暴れろ』。

……どこが作戦なのかと問い詰めたくなるような頭の悪い作戦である。

 

死神の結界の内側に転移した直後、隣互は『領域』を展開し結界の柱への手出しと外部への脱出、内部への侵入を防いだ。

そして敵に気付かれないように即座に姿を隠した。

この『領域』という能力。

文字通りその内側は隣互の支配する『領域』であり、常に内側の状況を把握し遠隔で干渉できるとのこと。

だからこそ彼女は他人を連れて転移する場合は直接手で触れるか、対象を領域の内側に取り込んで捕捉してから転移している。

領域が広かったり内側に人や物が多いと流れ込んでくる情報量が多すぎて頭がパンクするのでシャットダウンしているらしいが、街一つ分程度の広さで敵と味方合わせても50人足らずなら全く問題ないとのこと。

彼女は今も姿を隠しながら、戦場全域を観測している。

 

そして味方が傷ついたり消耗したと判断すれば即座に『領域』内の対象に『不可死犠』を発動。

傷を癒すと同時に自身の霊力を分け与えているのだ。

恐ろしい話だが、彼女は異界で手に入れた能力によりエネルギー切れというものが存在しないらしい。

最大出力こそ上限があるものの、それに満たないなら半永久的に能力を使い続けることができる。

彼女が作戦立案前に参戦する人数を尋ねた理由がこれだ。

何人までなら同時に『不可死犠』を発動できるかを推測し、そして33人という数なら問題なく『可能』と判断した。

 

よって領域の内側に潜んでいる隣互の存在に気付き、浦原たちでさえ察知できないほど完全に隠れている彼女を見つけ出してから、藍染を瞬殺できる圧倒的強者である彼女を排除しない限り、敵がどれだけこちらの軍勢を攻撃しても誰一人倒れないし疲れもしない。

全く持って、酷い話だ。

……突入直後から今に至るまで浦原は対象外にされていたが、いざとなれば治療してくれるはず。

そう信じている。そうに違いない。きっとそうだ。

 

 

「ふざけるな……!なんだそれは!?」

 

超速再生は虚の専売特許だったはずだ。

だが速度も再生回数も完全に死神たちの方が上。

オマケに傷だけでなく、体力や霊力まで回復しているという有様。

破面たちは彼らなりに全力を尽くして戦い続けたが、どんどん劣勢になっていく。

ついに第1十刃であるスタークが、周囲に聞こえるようにつぶやいた。

 

「……あ~、無理だなこりゃ」

 

「スターク!貴様ぁ!」

 

「アンタの『老い』も綺麗さっぱり消されてんだろ。

 連中はピンピンしてんのにこっちはボロボロで息切れ寸前。

 どういう原理で回復してんのかも、止めさせ方もわからねぇ。

 覆ってる壁はびくともしねぇし、何故だか知らんが手勢も呼べない。

 ……これでどうやって覆せってんだ?」

 

「ぐ……ぬぅ……!」

 

反論のしようもない事実にバラガンも言葉を詰まらせる。

そしてスタークは解放状態を解除し、両手を上げた。

 

「降参だ。どうしてもってんなら俺の首をくれてやる。

 だから頼む。俺の仲間を殺さないでくれ」

 

「わかった」

 

「「「一護!?」」」

 

彼の敗北宣言に、真っ先に一護が返答した。

死神たちが反論を言う前に畳みかける。

 

「姉貴ならそうした。

 仲間を大事にする奴は、絶対殺さねぇ」

 

「っ……むぅ」

 

「仕方、ありませんね」

 

「……あんがとよ」

 

「……えらい変わったもんやな、護廷十三隊も」

 

平子が思わずそう呟くほどの変貌ではあった。

死神達は尸魂界での一件で黒崎隣互に対して大きな借りがある。その弟である一護にもだ。

なので彼から彼女の名前を出されては強く出られない。

 

「……悪いィな、藍染サマ。

 義理、返せなかった」

 

 

 

「残念だよ」

 

 

 

天を仰ぐスタークの胸から、刀が生えた。

 

「「「!?」」」

 

「藍染……サマ……!?」

 

「まさか苦労して集めた十刃が時間稼ぎにしかならず、あまつさえ死神に降伏するとはね」

 

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