『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第35話

スタークから斬魄刀を引き抜きながら、藍染は死神の一人に視線を向ける。

 

山本の炎上網などその気になればいつでも抜け出せた。

しかし藍染はここまで観察に徹し、敢えて手を出さなかった。

その理由は。

 

「虚圏から即座に戦力を連れ戻し、これほどの治癒術と防壁まで作り出すか。

 まさかこの私を以てしても原理すらわからぬとは。

 やはり恐るべき頭脳だよ、浦原喜助」

 

「……へ?あ?アハハ……はは……」

 

ず~~~~~っと浦原を警戒していたからだ。

 

 

 

ズタボロになって現れた浦原を、藍染は偽物かと思っていた。

 

(出来の悪い影武者を仕立て、機を伺うつもりか)

 

しかし織姫たちに治療されたそれは、間違いなく本物の浦原喜助だった。

 

(では先ほどまでの様子は演技?

 それともこの術を完成させるために、奴が血を流す必要があった?

 他人を治療しておきながら、何故自分自身を治療できないのだ?)

 

そして浦原は復活しても戦闘に参加すらせず、ただ戦場を眺めている。

 

(動かない……いや、この術を維持するには動くことができない?

 だとしたら何故私の前に姿を現した。

 姿を見せることが条件とでもいうのか?

 ……一体どのような鬼道を開発したのだ)

 

終始この調子で、十刃が戦闘不能になるギリギリまで考察を続けていたのだ。

なまじ浦原の頭脳を認め警戒していたからこその誤解。

思いもしなかっただろう。

まさか彼が己以上と認めた天才が、一人の心の平定のために切り捨てられただけなどと。

そして今の事態とは全くの無関係であるなどと。

 

 

 

「藍染!!」

 

元々忠誠を誓っておらず、奴が自分たちを切り捨てたと真っ先に気付いたバラガンが藍染に刃を向ける。

 

「手間取らせるな」

 

そして藍染はバラガンを斬り、さらにハリベルも斬り捨てた。

 

「「「「バラガン様!」」」」

「「「ハリベル様!」」」

 

死神達との戦いでボロボロの忠臣たちが血を流し落下する主君を受け止めようと飛ぶ。

藍染は十刃にも劣る破面に何の興味も持っていない。

連中を放置したのは処分する手間すら惜しんだからだ。

彼はここからは自分と、死神たちとの戦いになると予見していた。

 

「……なに?」

 

だが傷ついた3人の十刃を、白い炎が包み込んだ。

彼らに近付いていた他の破面たちも同様にだ。

 

「……こいつぁ……」

「体が……」

「我々も、だと!?」

 

そして彼らの傷もまた消滅し、万全の状態に戻っていた。

 

「……どうやらこの力は、アナタ方も『仲間』と見なしたようですね」

 

「我らが死神の仲間だと!?ふざけるな!!」

 

「やったら休戦協定ってことでええやろ。

 オレらも似たようなモンやしな。

 お前らが今ぶちのめしたいのはオレらと藍染……どっちや?」

 

「……藍染!!」

 

バラガンに対する平子の問いに対し、先に行動で示したはハリベルだった。

彼女は槍を構えて藍染に突撃する。

 

「君如きがこの私に、二度も剣を振らせるな」

 

しかし返す刀で、今度は首を斬り落とされた。

 

「「「ハリベル様!!」」」

 

結局、ここまで観察しても治癒術と防壁の正体はつかめなかった。

だから藍染は『傷を負っても治るというなら、一太刀で命を絶てばよい』という結論に達した。

どれほど強力な回道であろうと、対象が死んでしまえば作用しないはずだと。

そして彼は傷を負うことなく全員の首を斬り落とせる実力を持っていると自負していた。

防壁は浦原以外を駆除してから彼を尋問し聞き出せばよい。

 

再びハリベルの体から白い炎が湧き上がる。

白い炎は激しく燃え上がり、彼女の遺体全てを飲み込んだ。

 

 

 

「なん……だと……?」

 

 

 

そして炎が消えると中から無傷のハリベルが姿を現した。

 

「私は、今……死んだはずでは……!?」

 

「残念でしたねぇ、藍染サン」

 

そこでようやく戦場に出てきた浦原が、宣言する。

 

「傷の治癒や霊力の回復は副次効果です。

 この炎は『治癒術』じゃなくて……『蘇生術』なんですよ」

 

「『蘇生』、だと!?莫迦な!!」

 

「あはは、アタシもそう思いますよ。

 死者の蘇生などありえないと。

 ……ホント、どうしてこんなことになったんでしょうねェ……」

 

浦原は非常に遠い目をしていた。

 

ここまでの戦いで、隣互は味方だけでなく敵も観察し情報を集め続けていた。

外見、思考、波長、能力、あらゆる情報が十分以上に集まっていた。

そして領域の内側であれば即座に『不可死犠』を発動できる。

であれば対象の霊体が多少欠けたとしても自分の知識で欠損部位を補って再構成し蘇生することが可能。

……重ねて言う。酷い話だ。

 

浦原は軽くかぶりを振って言葉を続ける。

 

「この術が発動し続ける限り我々は不死不滅。

 ちなみに回数制限もありません。

 加えてこの場を覆っている防壁。

 これもまた空間を完全に遮断するもので、破壊も脱出も不可能。

 そして破面たちを切り捨てたアナタ方はもはやたったの3人。

 ……さて、どうします?」

 

「……なるほど、君がこれほど強気に出られるのも無理のない状況だ。

 だが失念してはいないか?」

 

藍染の斬魄刀『鏡花水月』の能力。

それは術をかけた相手への『完全催眠』。

黒崎一護と数名の人間を除いた全員、死神たちも仮面の軍勢も、破面たちすらも術中だ。

そしてその能力はすでに発動している。

藍染は自分の幻影を作り出し自分の姿を見えなくした上で、浦原の背後に回り刃を突き出す。

彼は浦原が術の起点であると判断し、彼を始末すれば解除されると考えたようだ。

術と防壁について聞き出せないのは残念だが、今の状況を打破する方を優先した。

 

「おっとぉ」

 

「なっ……!?」

 

しかし浦原の斬魄刀『紅姫』が作り出した血霞の盾が、藍染の刀を弾いた。

 

「あ~……やっぱり今、催眠かけたつもりだったんスねぇ」

 

「見えて……いるのか?」

 

「アタシだけじゃありませんよ?」

 

藍染が周囲を見渡すと、死神や破面たちもまた浦原の背後にいる藍染に視線を向けていた。

『完全催眠』の術中で……藍染を捉えていた。

 

「『一体いつから鏡花水月を使っていた』かはわかりませんが……」

 

 

 

 

「『一体いつから――鏡花水月が効いていると錯覚していた』んです?」

 

 

 

 

「……!?」

 

「幻覚ってのはつまり、精神に異常を植え付けることでしょう?

 傷を癒し、霊力を補充し、死すら覆す浄化の炎が、精神には作用しないなんて楽観が過ぎませんか?」

 

「……っ」

 

浦原と藍染のやり取りにより、ようやくその場にいた全員が状況を理解した。

 

藍染の完全催眠は無効化された。

何度催眠をかけ直されても白い炎で解除される。

霊力を使い果たしても傷と一緒に回復する。

仮に殺されても蘇る。

防壁から逃げ出される心配もない。

そして戦力差はともかく、人数差は10倍以上。

 

改めて全員が武器を構えた。

死神も、仮面の軍勢も、破面もだ。

その全てが藍染に向けられている。

 

「もう一度お尋ねしましょう……どうします?」

 

「……」

 

藍染の頬に、一筋の汗が流れた。




『不可死犠』のベースは『呪禁存思』、つまり『超・占事略決』です。
彼女は記憶力が良いので一度読んだ書物の内容を頭の中で何度でも読み返すことができ、時間だけは無駄にあったので一通りマスターすることができました。
なので今の『不可死犠』には『呪詛返し』を始めとする霊的な状態異常の解除能力も含まれています。

ザオリクとベホマと各種状態異常回復呪文全部と逆マホトラが一つになった呪文を、指定したパーティ全員に同時発動できる『ヒーラー』が馬車の中から使っていると考えてください。
しかも毎ターンMP全回復。無理ゲーどころではありません。
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