『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第36話

「要!ギン!この術の起点を探し出せ!」

 

「ハッ!」

「しゃあないなぁ」

 

術の起点は浦原かと考えていたが、彼が堂々と前に出てきたことからおそらく異なる。

藍染の叫びに応え、彼に残されたたった二人の部下が動き出す。

 

「行かせぬぞ!東仙!」

「そこまでよ、ギン!」

 

「狛村!?」

「……乱菊」

 

しかし山本を除いた護廷十三隊の死神たちが彼らの行く手を阻む。

仮面の軍勢と破面、一護と浦原たち、山本総隊長のみがその場に残り、引き続き藍染に刃を向ける。

 

「浦原……ならば貴様を捕えて吐かせるまでだ!」

 

「アッハッハ……不可能ですよ」

 

何しろ浦原もその原理を知らず、隣互がどこにいるかもわからないのだから。

しかしそれを挑発と受け取った藍染は平時の余裕を失っているため露骨に反応してしまい、眉間に皺を寄せ舌打ちする。

 

「……平子、そして破面たちよ。

 儂から一つ提案があるのじゃが?」

 

山本がこの場限りの共闘相手に声をかける。

 

「なんや?」

 

「言ってみろ」

 

「所詮我らは異なる勢力の寄せ集め、連携などできぬ。

 されど如何な傷を負おうとたちどころに治るのなら、互いの攻撃に巻き込んでも問題あるまい?

 故に加減は不要。存分に暴れようではないか。

 誰が藍染を仕留めるかは……早い者勝ちというのはどうかね?」

 

ひげ越しでもわかるほど口角を吊り上げた山本。

そして彼に負けぬほど平子とバラガンも凶悪な笑みを浮かべる。

 

「……おもろいやん!話がわかるようになったなぁ総隊長サン!」

 

「よかろう!我が『死』の力、存分に見せつけてくれるわぁ!」

 

一斉に仮面の軍勢が虚化し、破面たちも刀剣解放。

 

「万象一切灰燼と為せ、『流刃若火』」

 

そして山本もまた斬魄刀を解放した。

 

「『早い者勝ち』、だと!?この私を!」

 

藍染は強い。

斬魄刀の力など無くとも、基礎能力そのものが死神や破面たちよりも遥かに上を行く。

たとえ目の前にいる軍勢に一斉に襲い掛かられようと全て切り伏せることができるだろう。

 

だが何度切り伏せても敵は死なない。

鬼道での封印も試したが白い炎で諸共燃やし尽くされる。

彼は無駄だとわかっていても、ひたすらに刀を振るい続けながら思考を巡らせていた。

 

 

 

 

虚の力を取り込み、虚化を習得していた東仙は強敵であった。

今も狛村を筆頭にした多くの死神たちが彼に当たっている。

 

しかし虚の力を持たずにいた市丸は劣勢に陥っていた。

超高速で刀身が伸縮する刀、それが彼の斬魄刀『神槍』。

その力で向かってくる死神達を何度も貫き、切り裂いた。

 

(……こらぁ、アカンなぁ)

 

だが敵を殺すことはできても、止めることはできない。

死ぬことすらない決死の戦士たちの猛攻を前に次第に追い詰められていく。

 

「ギン!」

 

彼の幼馴染である松本乱菊が、他の死神たちの援護を受けて彼へと迫る。

彼女への攻撃だけ手緩くなっていたことに気付かれたのだろうか。

そして彼女の『灰猫』が、彼の体へと届いた。

 

(……ここまで、かぁ)

 

足を抉られた。彼女に続き殺到する死神達から逃げることはもうできない。

 

(……まぁ後はもう大丈夫そうやし。

 最期にキミの顔を見て逝けるんやったら、上々かもしれへんね)

 

彼は迫る死を受け入れ、細めていた目を少しだけ開き、穏やかに笑った。

死神たちの刃が彼を貫いた。

 

 

 

そして白い炎が彼を包んだ。

 

 

 

「「「なっ!?」」」

 

炎が消えると、市丸が受けた傷もまた完全に消失していた。

 

「……おい浦原!どういうことだ!?

 なんでコイツにまで術が及ぶ!?」

 

「えっ!?あ、いや、アタシにも何がなんだか……!」

 

術の原理を知らぬ死神たちは『死者に対して無条件に発動する術式か』と一瞬誤解した。

しかし自分たちが戦いで傷ついたり消耗した際にも発動していたし、そもそも敵も蘇生されるなら戦いにならない。

そして術を発動させているはずの浦原にすらわからぬというのはどういうことか。

何にせよ蘇生術が発動するなら、市丸を攻撃しても意味が無い。

死神たちは彼を無視して浦原に詰め寄る。

 

「……ギン?」

 

「…………」

 

松本もまた、市丸の目の前で立ちすくむ。

 

 

 

「卍解『神殺槍』」

 

 

 

そして市丸は卍解を解放し神速の刃を伸ばした。

 

仮面の軍勢や破面たちに対処していた藍染に向けて。

 

「「「!?」」」

 

「ぐっ!?」

 

藍染はこの展開を予想していた。

しかし大勢から囲まれていたため完全に回避することが出来ずわき腹を貫かれた。

 

「……なんや、やっぱバレとったんですか。

 心臓を狙ったんやけどなぁ……。

 ボク演技力には自信あったんに、この術といい自信なくすわぁ」

 

「ギン、アンタ……!」

 

「『鏡花水月の能力から逃れる唯一の方法は、完全催眠の発動前から刀に触れておくこと』。

 ……その一言を聞き出すのにボクが何十年かけたと思うとるん?

 今までの苦労、ぜぇ~んぶ水の泡になってしもうたわ」

 

「「「……!」」」

 

一度白い炎に包まれた以上、市丸も鏡花水月の完全催眠から解放されたことになる。

今となっては役に立たない情報を、彼は惜しげもなく披露する。

 

市丸の狙いが自分への反逆だと、藍染は最初から気付いていた。

それでも彼を傍に置いたのは、彼がどうやって自分を殺すつもりなのか興味があったから。

しかしこの追い詰められた状況で、かつての慢心が致命的な結果を招き寄せた。

 

「市丸……!」

 

「見えます?山本総隊長。

 ボクの斬魄刀のココ、欠けてんの」

 

彼が指さした斬魄刀には、刀身に小さな穴が開いていた。

 

「ボクの卍解、伸び縮みする際に一瞬だけ塵になるんです。

 そして刃の内側に……『細胞を溶かし崩す猛毒』があります」

 

「「「!?」」」

 

一同が市丸の言葉の意味に気付いて、一斉に藍染の方を向く。

彼のわき腹には、今しがた市丸が付けた傷がある。

そしてその中には、市丸が置いてきた卍解の欠片があった。

 

「藍染隊長を殺すのは早い者勝ち、でしたっけ?」

 

「ギン!貴様……!」

 

 

 

「悪いですなぁ……ボクの勝ちや」

 

 

 

藍染の傷が膨張し、彼の下半身が消し飛んだ。

 

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