『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第37話

「横取りする形になってしもうたけど、ボクの方がずぅ~っと前から狙っとったんやし、堪忍したってや」

 

「藍染様!」

 

ついにたった一人の部下となってしまった東仙が藍染へと駆け寄ろうとするが、死神達に阻まれ叶わない。

彼の視線の先で、藍染の体が崩壊を始める。

 

 

 

「うぉぉぉおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 

 

「「「!?」」」

 

しかし上半身だけの藍染が裂帛の気合を叫ぶと同時に、彼の胸に埋め込まれていた崩玉から白いエネルギーが放出され、彼の体を包み始める。

 

「……進化には恐怖が必要だ。

 今のままではすぐにでも滅び失せてしまうという恐怖が」

 

顔まで覆い尽くされていく状況で、冷静さを取り戻した藍染が笑みを浮かべる。

 

「ありがとう、ギン。

 君のお陰で私は、死神も虚も超越した存在になれる」

 

やがて変化が収まった彼の新たな姿は。

再生した下半身、それはまだわかる。

しかし胸に埋め込まれた崩玉とそこから上下左右に伸びる黒い十字の線以外は全身白一色という異質さ。

のっぺらぼうのようになった顔の、黒い目が開く。

 

「魂が組み変わる……ついに私は、崩玉を従えた!

 見るがいい、神への進化が始まったのだ!」

 

死神達も破面たちも、隔絶した力を手に入れた藍染の霊圧が感じられなくなっていた。

唯一の例外である一護のみがその膨大な霊圧におののく。

一同が改めて身構える中で。

 

 

 

「…………やじゃ」

 

 

 

どこからか、声が響いた。

 

「いやじゃいやじゃいやじゃぁぁぁぁぁあああ!!!」

 

「「「!?」」」

 

防壁が消え去り、藍染と東仙以外の者の体を覆っていた白い炎が消えた。

そして突如として一人の人間が戦場のど真ん中に現れた。

 

「貴様は……黒崎隣互!?」

 

「あらぁ~……やっぱり彼女だったのね」

 

「おい、どうした姉貴!?」

 

「隣互!!」

 

錯乱する隣互に、一心と一護が駆け寄る。

最後まで支援に徹すると言っていたはずだ。

それを中断してまで飛び出してくるとは。

何より彼女の様子はただ事ではない。

一体何があったのかと問いただそうとするが、子供のように泣きわめくばかりで要領を得ない。

 

「姉貴!しっかりしろ姉貴!!」

 

「いやじゃ!いやじゃ!!」

 

 

 

 

「あんな変態白タイツマンになるのはいやじゃああああああああ!!!!!!」

 

 

 

「「「ぶっふぅーーーーーーー!!!」」」

 

緊張の糸が音を立てて千切れた。

尚、今の藍染は蝶になる前のサナギのような状態なので『変態』という表現は二つの意味で正しい。

 

「ぶはははは!変態!!変態白タイツマン!!」

 

「アカンでひよ里!本人は大真面目なん……ぶはっ!」

 

「……くっ」

 

「兄さまが笑った!?」

 

「隊長が!?くそっ、見逃した!

 こんな機会二度とねぇかもしれねぇのに!!」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁあああん!!」

 

「ガチ泣きじゃないッスか……隣互サン!!」

 

全員の意識が白タイツマンに向いている隙を突いて、東仙が隣互に迫る。

虚化、更に刀剣解放した今の彼の姿はまさに化け物。

膨れ上がった黒い毛むくじゃらの胴体から細い4本の腕と脚が伸び、背中には虫の翅。

怪獣ではなく怪蟲だ。

 

「死ね」

 

隣互が現れた途端に防壁と白い炎が消えた。

術の起点は間違いなく彼女。

東仙は藍染の命令に従い、彼女を始末しようとした。

そして隣互は未だに錯乱状態にあり東仙に気付いていない。

 

『…………』

 

「なっ!?」

 

だが彼女は一人ではない。

突如彼女の背後に現れたスピリット・オブ・ファイアは広げた右手を掲げていた。

 

「へぶちっ!?」

 

全長数百メートルという巨体の前では怪蟲であろうと羽虫も同然。

そして羽虫は掌で叩き潰されるものと相場が決まっていた。

 

「東仙!」

「東仙隊長!」

 

狛村と、隣互の領域が解除されたことで中に入ることが出来るようになった東仙の元部下である檜佐木が駆け寄る。

彼は巨大な掌の痕が付いた地面の真ん中でピクピクと震えていた。

辛うじてだが息はあるようだ。

 

「熱っ……溶けてる!?」

 

近付いてみれば、巨人が触れた建物やアスファルトが融解していた。

元が黒くてわからなかったが、東仙の体もいたるところが焼け焦げ炭化している。

 

「「隊長!!」」

 

「おぉ、テメーらか」

 

檜佐木と同じく転界結柱を守っていた一角と弓親も更木のもとに馳せ参ずる。

 

「ずるいですよ!隊長はあんなに大暴れして、僕たちは指を咥えて見てるだけなんて!」

 

「せめてこのデカブツとやり合うのには混ぜてもらえますよね!?」

 

「駄目だよツルリン!あの子は隣ちゃんのお友達だもん!」

 

「「……味方ぁ!?」」

 

「そういうこった。今は我慢しろ。

 後で隣互とやり合う時にはちゃんと混ぜてやらぁ」

 

更木たちスピリット・オブ・ファイアのことを知る者の反応で、敵ではないと判明した死神や破面たちはそれでも巨人の威圧感に呑まれ押し黙る。

巨人は隣互の傍に控えつつ、とうとうたった一人になった藍染をじっと見つめている。

 

「……ワンダーワイス!!」

 

藍染は一体の破面を呼ぶ。

領域が解除されたため、彼の呼び声に応え黒腔から新たな敵が現れた。

 

「あ~……う~……」

 

子供の姿をしたそれは、本来は山本元柳斎の斬魄刀『流刃若火』を封じるためだけに作った改造破面だ。

絶対的な熱吸収能力と引き換えに言葉も知識も記憶も理性も失った。

山本以外にぶつけるのは不本意だが、どうやら炎でできているらしいこの巨人を始末するためにはやむを得ないと札を切った。

 

「オァァァァアアアアア!」

 

刀剣解放により異形の化け物となったワンダーワイスが炎の巨人を喰らい尽くそうと飛びかかる。

 

 

『……』

 

「オァ?」

 

 

ぐちゃ。

 

「「「!?」」」

 

そして逆に喰われた。

炎の巨人はもごもごと咀嚼し始めた。

 

ワンダーワイスは炎を吸収し封じ込める能力を持つ。

封じた熱は彼の死と共に放出され大爆発を起こす。

それを証明するかのように巨人の口の中から爆発音が響いたが、巨人は意に介した様子もなく咀嚼を続け、やがてゴクリと飲み込んだ。

 

「ワンダー……ワイス……?」

 

応える声はない。

代わりに炎の巨人が再び視線を向けてくるだけだった。

 




白タイツマン「これが崩玉を得た者の姿だ!」
隣互「やだーーーーーー!!」
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