『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第42話 再戦

『一手、仕合うていただきたい』

 

それはかつて双殛の丘にて、隣互が山本に放った言葉。

朽木ルキアを逃がすべく、護廷十三隊最強の男を足止めするための宣言。

そして当時の彼はそれに応じた。

ならば同じ言葉を投げかけられた隣互に『断る』という選択肢はない。

戦いの決着が藍染の暗躍発覚により有耶無耶になっていたので猶更だ。

 

「確か、この辺りであったな」

 

「間違いない。

 ……ほれ、この溶けた岩は儂が斬ったものじゃ」

 

「本当に良く覚えておるの」

 

そして当時と同じ場所、人気のない岩だらけの荒野で再び向かい合う。

ただあの時とは違い立会人はいない。

山本は誰にも知らせていなかったし、同行したいと言ってきた浮竹にも遠慮願った。

周囲に二人の他に誰もいないことを再確認してから、隣互は胸に手を当てて請願する。

 

「……『大願成珠』よ。

 儂の力を使い、儂の代わりにこの一帯を覆う『領域』を発動してほしい」

 

すると彼女の体が光を放ち、願いの通り半径数キロメートルの『領域』が展開される。

彼女が掌を合わせていないのにだ。

 

「重ねて願う。我らは命の取り合いまでは望まぬ。

 どちらかが死に瀕する前に『不可死犠』を発動し双方を救命せよ」

 

そして彼女の体がもう一度光る。

見た目の変化はないが願いは通じたとわかった。

 

「なるほど、そのように使うのか」

 

「発動条件を肩代わりしてもらっているだけで、霊力自体は儂から出しておるがな」

 

『大願成珠』で奇跡を起こすには、その奇跡の大きさに応じた強い想いが必要になる。

これはあくまで試合。あまり強い感情は込められないので大きな奇跡は起こせない。

なので『領域』を維持するための力は自分が負担する形で願ったが、まだ想いが弱かったようだ。

通常よりも領域の維持の霊力を余計に消耗しており、ほんのわずかにだが彼女は弱体化している。

 

「改めて説明する。

 この領域『刻思夢想』は空間そのものを遮断する。

 同じく空間に干渉する能力か絶対破壊能力でもなければビクともせぬ。

 外部への余波、外部からの横やり、一切を封じる」

 

「解除方法は?」

 

「本来なら発動条件である『合わせた掌を放す』ことも含まれるが、今回それはない。

 儂が能動的に行うか、儂が維持できぬほど追い詰められぬ限りは解除されぬ」

 

「ふむ……気付いておると捉えてよいのか?」

 

「貴殿の卍解であろう?

 詳細は分からぬが、周辺への被害が大きいものと見た。

 この中ならば、尸魂界へは一切悪影響を及ぼさぬ」

 

隣互との戦いで最後の一撃になるまで使おうとしなかったこと。

発動寸前に狛村らが慌てて退避したことからの推測である。

尤も、隣互や一護のような特異な卍解でなければ大体は巨大化するので周辺への被害が大きくなるのは当たり前なのだが。

 

「感謝する。

 ……まさか儂が気遣われ、挑む側になるとはな。

 長生きはしてみるものだ」

 

「……あまり長生きしすぎるのもどうかと思うがな。

 今更意味もなく自死を選ぶつもりはないが……」

 

「その様子では、もしや今はお主の方が年上か?

 年長者を相手にするのもまた久方振りよ」

 

雑談を交えながらも双方が刀を抜いた。

 

この戦いにおいて、隣互は自分に制限を課している。

それは『死神の世界を離れた後に手に入れた能力は使わないこと』だ。

白星とスピリット・オブ・ファイアには体の中に引っ込んでもらっているし、武装錬金も聖光気もオーバーソウルも転移も使うつもりはない。

『絶飲絶食』はどうにもならないが、無尽蔵のエネルギーを笠に着た戦い方はしないと決めている。

何故ならこれは、かつての戦いの続きだから。

どう言いつくろっても『手を抜く』という宣言に過ぎないのだが、山本は自分から戦いを挑んだのだからと了承している。

 

まずは隣互が宣言する。

 

「卍解『赫烏封月』」

 

真紅の刀が炎へと変化した。

それは触れるもの全てを焼失させる絶対切断剣。

 

「卍解」

 

対して山本もまた宣言する。

彼は刀を抜いた瞬間、すでに始解を発動しており、刀身からおびただしい量の炎が溢れ出している。

 

 

「『残火の太刀』」

 

 

そして刀が纏う炎が全て消え、焼け焦げた消し炭のような真っ黒い刀身が残った。

一筋の煙が立ち上っている。

 

「なるほど……安易に使えぬわけじゃな」

 

彼が卍解を発動した直後から、領域の内側が急速に乾燥し始めた。

荒野にわずかにあった雑草が見る見る枯れ、やがて発火し燃えて灰となる。

ある程度はコントロールできているようだが、制御し損ねた余剰分が熱として周囲に広がっているのだろう。

仮に領域が無ければこの熱が尸魂界全土に伝播し、やがてすべての霊魂がマッチのように燃え尽きたはずだ。

 

「それにしても……よもや儂の卍解と同種の能力であったとは」

 

「くく、当時は儂も驚いた。

 まさか『焼き斬る』ことにかけて儂以上の斬魄刀が現れるとは夢にも思わなんだ」

 

山本が隣互の卍解を見てすぐに気付いたように、隣互も山本の卍解を一目見て気付いた。

膨大な熱が刃先に集中し、全てを『焼失』させる炎となっている。

彼の卍解もまた、『絶対切断』能力を有していたのだ。

ならば並みの攻撃など避けるまでもなく受け止める彼女の防御力も無意味ということ。

なるほど、彼は今の隣互すら打倒しうる強敵だ。

 

「護廷十三隊一番隊隊長及び護廷十三隊総隊長。山本元柳斎重國」

 

「四楓院夜一が弟子にして黒崎一心の娘……そして黒崎一護の姉。黒崎隣互」

 

かつての戦いを焼き直すかのように、二人は改めて名乗りを上げる。

 

「いざ……」「尋常に……」

 

 

「「勝負!!」」

 




『ただ触れるもの全て跡形もなく消し飛ばす』

『残火の太刀』と『赫烏封月』は同種の能力であり攻撃力自体は同じ。
ただ『刃先』だけでなく『刀全体が炎になっている』分、後者の方が攻撃範囲が広い。
よって『全斬魄刀中最高の攻撃力』の称号は後者に与えられます。
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