『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

23 / 787
第23話

「ヒノカミ!大丈夫かい!?」

 

「静かにしな。まだ眠ってるんだよ」

 

事後処理を終え保健室にやって来たオールマイトを、リカバリーガールがいさめる。

 

「申し訳ありません……それで、彼女の容態は?」

 

「各部に打撲と、骨に少しひびが入ってるくらいだね。

 精神的な疲労が主だろう。

 ……二週間後の雄英体育祭までには綺麗さっぱり治ってるよ。

 それまでは安静にさせておく」

 

「?貴方の個性で治さないのですか?」

 

リカバリーガールの個性は治癒する対象の生命力を消費する。

今のヒノカミに使うのは論外だが、明日にでもなれば十分に体力は回復しているはずだ。

彼女はしばし沈黙し、口を開く。

 

「……この人には、もう治癒の個性は使えないよ」

 

「どういう、ことですか……?」

 

リカバリーガールはヒノカミのベッドの傍に移動し、彼女の体を覆っていた毛布をめくった。

 

「……これは……!」

 

「見ての通りさ……数日前に検査した時には、ここまでじゃなかったんだけどね……」

 

各部に包帯が巻かれたヒノカミの上半身。

隙間から見える彼女の皮膚には、いたるところにうっすらと『ひび割れ』が走っていた。

 

「今回の件で、また寿命を削ったんだろうね。

 大した怪我ではないとはいえ、治癒で無理やり治せば負担はかかるんだ。

 これ以上この人の寿命を削る可能性がある行為は、避けなきゃいけない」

 

筋力や個性の出力には影響が出ないようなので気づきにくいし、だからこそ周囲に隠し通すことができている。

加えて本人があまりに飄々としているので時折忘れそうになるが、彼女は余命1年足らずと宣告された末期患者なのだ。

 

「いや、もう半年も持たないだろうよ」

 

「何ですって!?」

 

「もしかしたら予知の死はAFOに殺されるのではなく、戦いの最中で寿命が来たのかもしれないね。

 ……まったく嫌になるよ。

 こんな状態の病人に頼らなきゃいけない自分たちの弱さがね」

 

「そうですね……あぁ、その通りだ……」

 

全盛期のオールマイトであれば、ヒノカミが他のヴィランを倒しきる前に脳無を仕留められていただろう。

いや、死力を尽くせば実際に可能だったのかもしれない。

しかし作戦にて『決して苦戦する姿を見せてはならない』と決まりその理由に納得したため、指示に従い時間稼ぎに専念した。

確かに弔と黒霧というヴィランには圧倒的敗北を突き付けることができただろう。

しかしその代償として彼女の残り少ない命をさらに削ることになったとあっては、本当にこれで正しかったのかと考えずにはいられない。

 

「……あまり余計な事を考えるな。

 貴様のような馬鹿には似合わん」

 

「起きてたのかい」

 

「ごめんよ、私が騒いだせいで起こしちゃったんだね」

 

ヒノカミはよいしょと上半身を起こす。

元々症状がひどかった背中は、全体に卵の殻のようなひびが走っている。

 

「その様子では、諸々終わった後か。

 大きな問題はなかったようじゃな?」

 

「あぁ。USJ以外に敵の襲撃があった形跡は無し。

 USJそのものの損害も大きなものじゃない。

 生徒も他のヒーローたちも傷一つないよ。君のおかげだ」

 

「感謝は受け取っておくが、これは皆で備え、立ち向かった結果じゃよ。

 ……しかし怪我がないとはいえ生徒たちには怖い思いをさせてしまったか。

 ヒーローを目指せばいずれ向き合うことになるとはいえ、悪いことをしたのぅ。

 トラウマにならなければ良いのじゃが……」

 

「そんなことはないさ!」

 

オールマイトが立ち上がって叫ぶ。

 

「彼らだって目にして、感じたはずだ!

 本当のヴィランの恐怖と、それに立ち向かうヒーローたちの……君の雄姿を!

 敵も馬鹿なことをした……あのクラスは強いヒーローになるぞ!!」

 

「……じゃな」

 

オールマイトの力強い笑顔に、ヒノカミも笑顔で答えた。

暫く笑い合った後、オールマイトが呟く。

 

「それにしても……」

 

「?」

 

「君にもそういう気づかいの心ってあったんだねぇ。

 緑谷少年たちへの教育態度を知ってる身としてはびっくりだよ!

 彼らにも教えてあげようかな?HAHAHA!!」

 

「ぬな!?余計なことは口にせんでいい!

 あ奴らは飴より鞭の方がじゃな……ぶっ!?」

 

「病人が騒ぐんじゃないよ。

 オールマイト、アンタもさっさと行きな」

 

「了解了解!少年たち、きっとよろこぶぞぉ~!HAHAHA!」

 

「廊下を走るんじゃないよ!」

 

オールマイトは高笑いをしながら、仮にヒノカミが追いかけても追いつけない速度で走り去っていった。

彼は今、ヒノカミに口で勝てたというほのかな達成感で満たされていた。

尚、執念深い彼女が快復した後に仕掛けてくるであろう復讐については考えないものとする。




原作ではオールマイトの無茶を方々が責めるという形ですが、この世界では主人公の無茶にオールマイトが曇らされる形になります。
しかしオールマイトと違いどうしようもない病気なので周囲も強く言えません。
そして主人公の病気の正体。
原作を知ってる方なら症状から原因を察することができると思います。
そしてオールマイト達も原因を知っているので、OFA後継者を選ぶ流れが変わりました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。