『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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一応、外伝の最後まで話が出来ましたので1日2回投稿します。
かなり荒いですが、これ以上推敲するより勢いで誤魔化すことにします。


第46話 兵主部一兵衛

「着いたぞ!ここが霊王宮だ!」

 

「ここが……」

 

尸魂界に向かった隣互を待ち受けていたのは、霊王直轄の最強の部隊『零番隊』の一人。

ダルマのような姿をした巨漢の男性で、通称『まなこ和尚』こと『兵主部一兵衛』だった。

彼は押しの強さと勢いで周囲の意見や反論を封殺し、隣互を瀞霊挺の上空に浮かぶ浮島『霊王宮』へと強引に連れてきた。

 

「尤も、ここはまだ『表参道』に過ぎぬがな。

 浮いとる島が五つあるのがわかるか?

 あれは『零番離殿』と言って、我ら零番隊の五名が一つずつ治めておる街だ。

 儂以外の四人も、後ほど紹介しよう。

 そして浮島の中央にあるのが……」

 

「『霊王』がおわす本殿というわけか」

 

「如何にも。『霊王大内裏』だ。

 未だかつてないことだぞ!?

 死神どころか人間が、霊王にお会いできるなどとな!」

 

「……そこがわからぬのです」

 

和尚の後ろをついていく隣互が歩みを止める。

 

「儂は死神ですらない人間。

 未だ尸魂界の住民ではなく、霊王への忠誠心があるわけでもない。

 そしてここへ攻め入ろうとした藍染を遥かに超える力を持つ。

 そのような危険な存在を霊王のもとに迎え入れる理由……それをお聞かせ願いたい」

 

答えを聞くまで、梃子でも動かない。

その決意を込めた視線を和尚へと向けた。

和尚は右手でアゴヒゲを撫で、少し考えてから語り始める。

 

「おんしが霊王と同質の力を揃えておるからよ。

 人、死神、滅却師……そして『完現術者(フルブリンガー)』の力をな」

 

「……『完現術者(フルブリンガー)』?

 それはどのような力で?」

 

「……おんしは斬魄刀を持っておるか?」

 

「?これのことでしょう?」

 

隣互は自分の斬魄刀を呼び出し、前に突き出して和尚へと見せる。

 

 

 

 

「……そのちっぽけな『傘』が斬魄刀か?」

 

 

 

「!?」

 

『まなこ和尚』とは『真名呼和尚』。

『真の名を呼ぶ』者、すなわち彼こそが三界に存在する全てに名を付けた者であり、故に全ての名を知ってる。

その和尚に真の名を呼ばれたことで、隣互の斬魄刀が本来の姿を取り戻した。

……黒崎隣互が幼い頃に愛用していた、子供サイズの真っ赤な和傘の姿を。

 

「斬魄刀を作り出せるのはただ一人、零番隊『二枚屋王悦』を置いて他にない。

 あ奴は全ての斬魄刀を生み出し、把握しておる。

 故に断言できる……おんしのそれは、斬魄刀ではない」

 

「……ではなぜ、傘が刀に?」

 

「おんしは母が襲われた際、虚を祓う力を求めたな?」

 

彼は三界で起きたあらゆる事象を把握することができる。

この世界での黒崎隣互の過去を知ることなど造作もない。

 

「当時のおんしの中には『死神』と『滅却師』の力が眠っていた。

 しかし目の前で母の『滅却師』の力が失われたためそちらを信用できず、無意識に『死神』の力を求めたのだ。

 そして『完現術(フルブリング)』……『物質に宿った魂を引き出す能力』がおんしの中の『死神』の力と呼応した。

 結果その場にあった傘がおんしの想いに応え、自身を『死神の力を振るうに相応しい形』へ……すなわち『斬魄刀』へと変化させたのだ」

 

「『物質に宿った魂を引き出す能力』……それを扱える者が『完現術者(フルブリンガー)』というわけですか」

 

「いかにも。

 井上織姫と茶渡泰寅も同様であり、奴らもまた完現術者。

 それ即ち、おんしらの中に『霊王の欠片』が取り込まれていることの証明でもある」

 

「霊王の、欠片?」

 

「それは霊王と会えばわかる故、今は口を噤もう」

 

衝撃の事実ではある。

だが死神と言うものに誇りも何も持っていない彼女は驚いただけで消沈はしなかった。

しかし和尚は更に爆弾を投下した。

 

「加えて、おんしは今や『虚』の力も兼ね備えておる」

 

「……虚を?そのような覚えは……」

 

虚の力を持つ死神が存在することは知っている。

他ならぬ弟と、仮面の軍勢と名乗っていた者たち。

彼らは何らかの形で死神と虚の境界が崩れ、『虚化』という能力を手に入れた。

しかし隣互は虚の力を身に着けるような経験はない。

 

「おんしが直接にではない。おんしの中におる者が、な」

 

「……スピリット・オブ・ファイア?」

 

彼女の呟きに応え、炎の大精霊が姿を現す。

 

「その巨人が先日の戦にて喰らった破面『ワンダーワイス』は藍染が作り出した『改造破面』だった。

 奴がその破面に付与した能力は『完全な熱への耐性』。

 故に本体が食われても虚の因子は燃え尽きることなく、巨人の一部として取り込まれたのだ。

 改造により破面の人格がほぼ消え去っていたため、拒絶反応を起こすこともなくただの力としてな」

 

「……赫烏封月、白鎖彗星」

 

隣互の呟きに応えて、炎を纏う八咫烏と白銀の大蛇が炎の巨人の両脇に並ぶ。

 

『赫烏封月』は言うまでもなく『死神の力』。

滅却師十字を媒介としていた『白鎖彗星』は『滅却師の力』。

破面を喰った『スピリット・オブ・ファイア』は『虚の力』。

そして彼らをまとめ従える隣互は崩玉の魂すら引き出す『完現術者』。

 

「壮観であるな。

 『死神』『滅却師』『虚』『完現術者』の頂点に立つ存在が一つ所に集う様は。

 ……やはりおんしの力は、霊王すら上回っとるようだ」

 

「自分を超えうる存在……それが霊王が儂に興味を持たれた理由ということですか?」

 

「……会えば、わかる」

 

話は終わりだと踵を返す和尚の後ろを、隣互は再び追いかける。

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

「……『コレ』が……『霊王』……!?」

 

和尚に連れられるままに『霊王大内裏』へと入り、王の前へとやって来た隣互は思わず言葉を漏らす。

 

「そうだ……『コレ』が『霊王』だ」

 

彼女の正面、王の間に鎮座していたそれは。

 

 

 

四肢をもがれ水晶に閉じ込められた、男の遺骸だった。

 




隣互が持っていたのは『完現術』で作り出した『斬魄刀もどき』です。
そして崩玉を従えその力を引き出せていたのは彼女が『完現術者』だからです。
何度も転生し何千年も共にあり、そしてついにその存在を認識したことで崩玉という『物質』に対し『完現術』を使用できる下地ができていました。
藍染の崩玉が『自分の意思で行動した』のも、隣互に掴まれたことで彼女の影響を受け『魂の力を引き出された』からです。
『崩玉』の力を十全に引き出せる存在こそ『崩玉が認める主』に相応しく、藍染の崩玉も彼女に従うことを選んだ、というのが真相となります。
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