『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第24話 雄英体育祭

ヴィラン襲撃事件から約2週間後。

毎年恒例の、雄英高校体育祭が開かれる。

今年は開催を自粛すべきではという声もあがったが、生徒たちにはとってはスカウトに来るプロヒーロー達に自分をアピールする貴重な場であり、世間に『こんなに優秀なヒーローの卵たちが育っている』と伝える意味もある。

何よりここで開催を渋れば逃げ出した弔と黒霧に『自分たちの雄英襲撃で体育祭を中止させることができた』とわずかな達成感を与えてしまう可能性もある。

折角圧倒的な勝利を演出したのだから『お前たちなど恐るるに足りないのだ』と、揺るがない姿勢を見せつけるべきだろうと話がまとまった。

ただし当然対策はする。例年より警備を大幅に強化し、たくさんのプロヒーロー達を集めた。

その中には当然、教師たちと親しいヒーローも混ざっている。

 

「舞姉、お待たせ!」

 

「おぉ燈矢。今日はよろしく頼むぞ」

 

「おいおい、今日の俺はヒーローなんだぜ?

 ちゃんと『ブレイザー』って呼んでくれよな!」

 

「だったら儂のことも『ヒノカミ』と呼ばんかい」

 

立派になった一番弟子と待ち合わせ場所で対面。

兄のエンデヴァーも来ているが、彼はブレイザー以外の家族と共に観客席にいる。

短期間とは言え、一度はオールマイトを超えナンバー1ヒーローになった男。

客席で観客に姿を見せた方が安心感もあるだろうと判断され、問題発生時には独自裁量で行動して良いと許可を得ていた。

ブレイザーも優秀だがまだ彼のような特別待遇を受ける立場ではないため、他のヒーローたちと同様に巡回警備に当たる。

折角なので、その相方は彼の親族であり相性も良いヒノカミが受け持つことになった。

割り当てられた時間が終われば、観客席の家族に混ざって末っ子を応援する予定だ。

 

「でさ、結構評判伸びてきてるんだぜ?

 次のランキングでいよいよ俺もトップヒーロー入りかもな?」

 

「最近頑張っとるらしいのぅ。

 じゃが慢心してはいかんぞ?

 上はもちろん、下にも強敵は多いからの」

 

「わかってるって。

 いつか親父だって超えてみせるし……焦凍にだって負けねぇよ」

 

「その意気や良し、じゃな」

 

一方その頃、A組控室にて話題の焦凍が緑谷と爆豪に宣戦布告していた。

 

「お前らの何が舞姉を動かしたのか……無駄なことする人じゃねぇから、そこ詮索するつもりはねぇが……お前らには勝つぞ」

 

「……上等だ。この舞台で白黒つけてやるよ!」

 

「僕も本気で……獲りに行く!」

 

バチバチと燃え上がる三人を見て、一部生徒が議論していた。

 

(……シスコン?)

 

(いや姉じゃなくて叔母だろ?)

 

(オバコン?それとも『aunt』だからアンコン?)

 

(どっちにしても語呂悪いねぇ)

 

轟は訓練ばかりの青春を送って来たせいで友達が少なく、結果家族という存在に比重が寄ってしまっている。

彼が周囲と一般的な交友関係を築き誤解が解かれるようになるのは、まだまだ先の話になるだろう。

 

場面は戻って巡回中のヒノカミとブレイザー。

屋外で待機している彼らは、設置されている大型モニターで1年ステージの様子を見物している。

間もなく選手宣誓が行われるようだ。

 

「あの爆豪ってのが、俺の弟弟子の一人なんだっけ?

 あの場に立つってことは首席か……どうした?」

 

「いや、やらかさんかと少し不安でな」

 

『せんせー』

 

どこか腑抜けた声に反応し、ブレイザーは視線をモニターに戻した。

 

『俺が一位になる』

 

ブレイザーはぽかんと口を開け、ヒノカミは片手で顔を隠して天を仰ぐ。

爆豪は増長した態度をヒノカミによって矯正され、ある程度他人を認めることを覚えたがそれは相手が強者な場合だけ。

自分より遥かに実力が劣りかつ努力も不足している者は相変わらずモブ扱いだ。

同じヒーロー科のクラスメイト達はともかく、明らかにやる気のない普通科の生徒たちは見下しているのだろう。

選手宣誓ではなく優勝宣言。彼のふてぶてしい態度に、生徒たちからだけでなく一部観客からもブーイングが湧く。

爆豪は表情を変えることもなく、壇上から降りることもなく、もう一度口を開く。

 

『勝つつもりねぇやつは失せろ。時間の無駄だ』

 

今度は気迫が込められた声。

ブーイングが一瞬止み、その隙に更に言葉を続ける。

 

『A組だろうがB組だろうが、普通科だろうが知ったことか!

 全力で優勝獲りに来いや!

 それを全員ぶっ潰して!俺が!一位になる!!』

 

ここで彼を知る緑谷以外も、彼がただ他の参加者を見下しているだけではないと気づく。

彼の言葉はまさに『宣誓』。

絶対に誰にも負けないと、自分自身に誓ったのだ。

その覚悟を理解した生徒たちが触発され、『勝つのは俺だ!』と声を上げる者も現れ始めた。

 

「あっはっは!言うねぇあいつ」

 

「男子三日会わざれば、か。

 教え子の成長を実感するのは嬉しいものじゃな」

 

同時に、主審の18禁ヒーロー『ミッドナイト』は生徒たちから青春成分を補給し悶えていた。




・フレイムヒーロー『ブレイザー』

エンデヴァーの長男でサイドキック。
ヒノカミの一番弟子であり、師と同じく炎と刀で戦う。
個性と体質が合っていない問題でサポートアイテムが欠かせないため、他のヒーローよりも低く評価されがちだが実力はトップクラス。
ヒーロー名は『ブレイズ』+『レーザー』

雄英体育祭編開始…ですが、かなり大幅にスキップします。
この物語の主人公は生徒ではなく教師であり、轟家の不和がなくドラマが少ないということもありまして。
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