『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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シャーマンの世界:アフター

シャーマンキングとなったハオは、自分を打ち倒した者たちとの約束を守り『真っ当な王』として振舞おうとした。

しかし『害悪である人間を滅ぼすべき』と決めつけていた彼は、それ以外の王の在り方を考えたことがなかった。

だから手探りでどのような世界にすべきかを模索し、彼にとって最も身近だった、彼の配下たちのような人間が生きやすい世界を目指すことにした。

かつて彼らを仲間に引き入れる時の偽りの約束を同時に果たそうとしたのだ。

 

彼らの多くはシャーマン能力を持つからこそ疎まれ恐れられてきた。

かつてのハオも、彼の母もだ。

強大な力を持とうとシャーマンは少数、無知蒙昧な凡愚から数の暴力に晒されてきた。

 

……ならば理解者を増やせばよい。

その理想形は双子の弟の隣にいたちっちぇ友人。

『霊が見える人間に悪い奴はいない』。それが弟の口癖だった。

だから彼は『霊視能力を持つ人間』を増やそうと世界に働きかけた。

 

霊が見える人間が増えれば、シャーマンに理解を示す者も増えるだろう。

死者の声を聞く人間が増えれば『死人に口なし』と安易に殺人を行う者も、『死は救い』などという幻想に憑りつかれた者も減るはず。

やがて彼らの中からもシャーマンを志す者が出てくるかもしれない。

そして精霊や神霊の声も届くようになれば、彼らの力の根源である地球の自然を護ろうとするはずだ。

 

「ことはそう単純ではなかろうがな。

 それでもただ衰退してく今の世界を放置するよりはよほど未来がある。

 ちゃんとハオ兄上が神様しておって安心したわい」

 

「その神の世界に堂々と居座っている貴様は何なんだろうな。

 しかも本当に神罰すら跳ねのける力を手に入れてくるとは……」

 

「いやぁ、儂としても当時は冗談のつもりじゃったんじゃがなぁ」

 

シャーマンファイトが終わって一年後、突如として麻倉紅葉を名乗っていた魂がハオの前に……グレートスピリッツの中のシャーマンキングのコミューンに現れた。

彼女の手に入れたスキル『書国漫遊(ジャンプワールド)』のベースとなったのは、好きな場所にいられるスキル『腑罪証明(アリバイブロック)』。

密室だろうが宇宙だろうが、人の思い出や心の中だろうが存在できるスキルだった。

そして好きな場所に『いられる』ということは、その場所に『適応できる』ということでもある。

だから彼女はグレートスピリッツの中だろうが肉体を持ったまま転移し存在することができる。

 

シャーマンの世界に戻って来た彼女は困惑するハオに頭を下げ教えを乞うた。

この世界を旅立ってからのこと、今直面している問題を洗いざらい話し、それを乗り越えるためにハオの知恵と力を借りたいと。

彼女の成長を目の当たりにし、彼女の計画を聞かされ、ハオはそのぶっ飛び具合に頭を抱えた。

とは言えこんな奴でも一時は血を分けた妹だった。

兄と慕われながら兄らしいことを何もしてやらなかった負い目もある。

よってハオはグレートスピリッツの滞在と弟子入りを許可した。

彼女は数年をかけてグレートスピリッツの中のコミューンを巡り、ハオからシャーマンとしての技術を学び、知識と経験を積み重ねようやく彼女の計画を実行できるだけの下地が出来上がった。

そしてすぐにでも死神の世界に戻ろうとする彼女をハオが呼び止める。

 

「これだけは聞かせろ、紅葉。

 なぜそこまであの世界に尽くす。

 ……それはこの世界での時間を費やすほどの価値があったのか?」

 

シャーマンの世界には彼女との再会を待ち望んでいた人間もいると言うのに、彼らに自身の帰還を知らせず、彼らと共に暮らせたはずの数年を犠牲にしてまで、彼女は死神の世界を救う力を求めたのだ。

そして何も言わずにもう一度戻れる確固たる保証もないまま旅立とうとしている。

 

「何よりお前がやろうとしていることは人間の枠組みを大きく超える。

 ……すでに超えているような気がしないでもないが、もはや言い訳すらできなくなる。

 お前は自分が人間でいることに誇りを持っていたんじゃなかったのか?」

 

「……そうじゃな。

 『ついにここまで来てしまったか』と、我ながら寂しく……虚しくもある」

 

「ならば何故?」

 

「以前宣誓した通りよ。

 『世界一つを見殺しにした儂を、明日の儂が笑うじゃろう』。

 やらない理由を並べて自分自身に嘘をついたら儂は『自分』で無くなる。

 それなら『人間』で無くなる方が……うむ。まだ、マシじゃな」

 

「……フン、納得しきれていないじゃないか。

 気に食わないことがあれば全力で反発していたお前が、どういう心境の変化だ?」

 

「何を言う。気に食わぬことや思い通りにならぬことがあるのは当たり前じゃろう?

 それを飲み込み、妥協し、時に目を逸らしてでも前に進まねばならぬのが人生よ。

 今回のは流石にデカイんで飲み込むのに苦労しとるがの」

 

「お前は今まで妥協してきたつもりだったのか!?」

 

ハオは紅葉……ヒノカミが他の世界でしでかしてきた所業の数々を彼女自身から聞き及んでいる。

あれだけ暴れておきながら、コイツはその結果に満足していなかったのだ。

 

「ハァ……魂の起源が異なるとはいえ、こんな奴が妹とは。

 ……お互い苦労するな」

 

「ウェヘヘヘ。まぁでも相変わらずで安心もしたかな」

 

「は!?」

 

ハオの後ろに小さな人魂が現れ形を変え始めた。

若き日の麻倉幹久にも似た、長髪で気だるげな青年の姿に。

 

「……葉兄上か!?」

 

「おぉ、紅葉久しぶり。

 でっかくなったなぁ……オイラの方が随分背は伸びちまったけどよ」

 

「何故ここに!?グレートスピリッツの中じゃぞ!?」

 

「死んだからに決まっているだろう。つい先ほどだがな。

 紛争を止めようと戦場に飛び込み、爆撃を防ぎきれずにこの様だ」

 

「いやぁ、兄ちゃんも世界を良くしようと頑張ってるみてぇだし、オイラもなんかしなきゃってさ。

 アンナたちと一緒に世界を回っとるんよ」

 

「敵を皆殺しにすれば簡単だろうに。

 ……まぁ、妻子を守り抜いたことは評価してやる」

 

「アンナ……『たち』!?妻『子』!?

 まさかもう子がおるんか!?まだハタチ前じゃろ!?」

 

「おぉ長男だ。『花』つってな。小憎たらしいけど可愛いんだぜ?

 ……生まれるところ、お前にも立ち会ってほしかった」

 

「あ……すまぬ……」

 

「世界一個丸ごと救おうとしてるんだろ?

 オイラたちも兄ちゃんから聞いてる。

 だからお前が全部終わらせてくるのを待つさ。

 ルドセブとセイラームと、みんなでな」

 

「……必ず戻る。その時には、儂にも甥御を抱かせてくれ」

 

「ウェッヘッヘッヘ……あれ?

 そろそろアンナから蘇生されてもおかしくねぇんだけどなぁ……」

 

「ここの状況は僕が連絡しておいた。数分待つそうだ」

 

「サンキュー兄ちゃん。

 でも数分か……よし!コレ持ってけよ!」

 

「フツノミタマノツルギを!?麻倉からの預かりものではないのか!?」

 

「お前も麻倉じゃねぇか。別にいいって。

 オイラは兄ちゃんみたいに、お前に兄ちゃんらしいことしてやれなかったからさ。

 ……つってもオイラもお前もデカくなっちまったから、兄ちゃんが一番ちっちぇっつうか弟っぽいけどな」

 

「……この姿を見てもそんなことが言えるか?」

 

「おぉ?それが大陰陽師だったころのハオ兄上か」

 

「そんな張り合わなくても……悪かったって」

 

「フン」

 

ボフンという音と共にハオが二人の見慣れた姿に戻ると、葉の魂が透け始める。

 

「っと、時間か。ふんばれよ紅葉。

 大丈夫、なんとかなるさ」

 

「あぁ、皆によろしく伝えてくれ」

 

「ウェッヘッヘッヘ」

 

そして葉の姿が完全に消え、またハオと二人になった。

 

「……ありがとう、色々と手を回してくれていたんじゃな」

 

「構わんさ。だがそうだな……。

 恩を感じているというのなら、この世界に戻ってきたら僕に手を貸せ。

 シャーマンキングも中々に苦労が多いものでな」

 

「かか、人々をまとめるのが王の仕事じゃからな。

 なって終わりとはいかぬものよ……心得た」

 

「約束だ。忘れるなよ。

 ……ではいけ、愚妹。成し遂げてこい」

 

「あぁ……行ってきます!」

 




続編を知っている方向けに大まかに捕捉します。

葉が原作より強いのでアンナと花が死亡することなく、花が鬼を取り込むフラグが消滅しました。
葉とアンナが紅葉と幹久の関係を反面教師にしたため親としてふんばり続けています。
放置して旅に出たりしません。旅に出る時は一緒に連れて行きます。
ハオが真っ当な王になろうとしているのでフラワーオブメイズの開催そのものの可能性が低くなりましたが、仮に開催された場合はヒノカミとゴーレムがハオ陣営として参加することが決定しました。
概念攻撃を無効化し、巫力切れが無く、開催地である月を消し飛ばした実績を持ち、現時点で霊力値2億以上。
いずれ10億まで成長することが約束されている戦力です。
……テンプラでもヤービスでもかかってこいやぁ!
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