『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第51話

藍染との戦いが終わり、1年以上が経過した。

 

黒崎一護は死神代行として空座町の人々を護り続けた。

彼の傍には仲間である石田雨竜、井上織姫、茶渡泰寅がいた。

時には尸魂界から派遣された死神、浦原商店のメンバー、黒崎一心らと力を合わせることもあった。

 

しかしそこに黒崎隣互はいなかった。

 

もう黒崎家を離れる理由は無くなったというのに、なぜか彼女は一護が死神になる前と同じく、時折にしか戻ってこない。

聞くところによると零番隊……霊王に仕える王族特務隊とやらと、何かとんでもないことに取り組んでいるらしい。

普段は彼らの拠点である霊王宮にいて、現世や虚圏や瀞霊廷を頻繁に行き来しているとか。

出会ったタイミングで何をしているのか隣互本人に尋ねたが『その方がカッコイイから』と秘密にして教えてくれない。

浦原や護廷十三隊の隊長数名は事情を知っているらしいが、同じく口を閉ざしている。

それ以外の死神たちも最近はどこか余所余所しい。

 

「なぁ銀城、アンタは何も聞いてねぇか?

 姉貴の先生やってたんだろ?」

 

「知らねぇよ。つーか思い出させんな。

 ……一刻も早く忘れてぇんだから」

 

先代にして初代死神代行、そして隣互の『完現術』の師だという銀城空吾に尋ねるが、やはり彼も彼の仲間たちも知らないらしい。

 

かつて死神代行を務めていた銀城は、死神の裏切りにより『完現術者』の仲間たちを殺され一時はその復讐のために動いていた。

しかし尸魂界はその事実を知らず、彼を突如尸魂界に反逆した危険人物と見なしていた。

 

全てが明るみになったのは零番隊の兵主部から情報を得た山本総隊長が動いてから。

真の下手人は尸魂界四大貴族の一つ『綱彌代』家の当主。

事件の真相は彼が完現術者の中にある霊王の欠片を回収しそれを隠蔽するための偽装工作だったと判明した。

彼はこれ以外にも多数の悪事を重ねていた事実も見つかり、藍染に組した東仙の復讐相手も彼だったと発覚。

証拠を突き付け追及したところ反抗したため、兵主部と山本を筆頭とした死神たちに力尽くで取り押さえられた。

相当な実力者であったが、零番隊の頭目が参戦している時点で勝ち目はなかった。

尸魂界の死神達は噂でしか知らなかった零番隊の実力に衝撃を受け、自らの未熟を恥じ、一層鍛錬に励み始めたとのこと。

 

そして志波家に続き綱彌代家も消滅し、五大貴族は今や三大貴族となっている。

貴族に対する尸魂界の視線は厳しさを増し、中央四十六室も幾分大人しくなった。

護廷十三隊の中でも貴族だからと偉ぶっていた者たちは皆縮こまったが、朽木白哉などは『やましいことなどない』と堂々としている。

 

銀城にまつわる事件の真実を知った浮竹は彼を信じ切れなかった自分を恥じ、隣互に協力してもらい現世に潜んでいた彼を探し出して接触。

土下座して詫びることで、なんとか誤解を解くことはできた。

銀城も今更死神と仲良しこよしには戻れないが、敵対するつもりは失せたらしい。

でなければその場で足元にあった浮竹の首を刎ねていたはずだ。

 

そして隣互はそのまま彼らに『完現術を教えてほしい』と付きまとい、あまりのしつこさから銀城が遂に根負けしたわけだが。

 

「……信じられるか?

 アイツ不眠不休でとは言え、無知から三日でマスターしやがったんだぞ?

 俺らがどんだけ打ちひしがれたことか。

 ……まぁお前もお前の仲間も、だいぶぶっ飛んでやがるけどよ」

 

そして修行を終えた隣互から紹介される形で、一護も銀城と知り合った。

一護は銀城が死神代行を辞めた経緯を知らされていないが、語りたくないことだろうとはわかっていたので追及はしなかった。

何度か顔を合わせるうちに先輩後輩として良好な関係が出来上がり、今は一護らもまた彼から完現術を学んでいる。

 

「しっかしお前もアイツも、なんでそんなに力を求めんのかねぇ。

 破面も藍染とかいう奴も全部ぶっ飛ばしたんだろ?

 もう敵う奴なんていねぇじゃねぇか。

 ……尸魂界と一戦交えるつもりだってんなら、手ぇ貸してやってもいいぜ?」

 

「しねぇよ!

 姉貴の方は知らねぇけど、オレが強くなりてぇのは姉貴に置いて行かれたままじゃいられねぇからだ!」

 

「おっと、相手がアレなら手は貸せねぇ。

 俺らもまだ死にたくねぇから」

 

「……姉貴はアンタらに何やったんだ……」

 

「……思い出させんな、頼むから」

 

結論から言うと『何もやっていない』。

だからこそ『実力差を思い知らされた』のだ。

 

あまりに鬱陶しいから脅すつもりで剣を突き付けたが動じないので、銀城が少し痛い目を見せようと剣を振り下ろしたら粉々に砕けた上に霊圧差で反射ダメージを受けた。

隣互を敵と見なした銀城に呼応し、彼がまとめる完現術者の組織『XCUTION(エクスキューション)』が総出で隣互を攻撃したわけだが傷一つつけられなかった。

斬った相手の過去を改変する能力持ちの味方がいたが、刺した刀が過去の重さに押し潰され、わずかに流れ込んできた情報の密度に脳を焼かれて当人が一時発狂した。

転送や変換などの特殊能力も全部かき消された。

 

疲弊し全員の手が止まったところで、彼女自身は『お願いする立場だから』と一切反抗していなかったと発覚。

多少の傷を負ったところで即座に治療できるから、むしろ浮竹の代わりにリンチを受け入れてもいいと思っていたらしい。

伏して頭を下げ続ける無防備で自然体の相手を敵と思い込み、殺すつもりで挑んでこの有様。

自分たちが特別な人間だと考えていた完現術者たちも流石に心が折れた。

関わり合いになりたくないと、さっさと要求を呑んでお引き取り願う方にシフトチェンジした。

彼女と比べれば一護や織姫たちはまだ理解できる範疇なのでXCUTIONにも受け入れられている。

アレが敵にならぬよう媚を売っていると言ってもいい。

 

「ほっときゃいいじゃねぇか。

 隠してんなら相応の理由があるんだろうし、あのバケモンがどうにかされる未来なんて想像できねぇよ」

 

「そうなんだけどよ……姉貴は変なところで抱えちまうから。

 力不足だとわかってるけど、オレにもなんか出来ることはねぇかって思っちまうんだ」

 

「……ともかくだ、俺らはアイツに関しては何も知らねぇし関わり合いになりたくもねぇ。

 至る所ウロチョロしてるんなら、他の連中に聞いてみな」

 

「そっか……次はウルキオラにでも聞いてみる」

 

「……そいつ虚なんだろ?

 てめぇみたいなのが死神代行たぁ、護廷十三隊は一体どうなっちまったんだよ」

 




XCUTIONは全カット。
味方になった和尚から情報を得たため、敵対する理由そのものが消滅しました。
彼らの背景は小説版の設定を参考にしています。
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