『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第55話 瀞霊廷の決戦

ユーハバッハは『見えざる帝国』を引き連れ、遂に尸魂界に侵攻した。

 

彼は自軍による蹂躙を疑っていなかった。

それだけの力があった。

それだけの備えもした。

しかしいざ戦いの火蓋を切ってみれば、予想外の事態が次々と彼らを襲った。

 

特記戦力の一つであり未知数の『潜在能力』を持つ黒崎一護の参戦は予想していた。

破面の参戦は最初から問題視していなかった。だが。

 

「何故零番隊が……霊王宮を護るべき奴らが瀞霊廷にいる!?」

 

同じく特記戦力であり未知数の『叡智』を持つ零番隊頭目である兵主部一兵衛、そして彼が率いる零番隊の参戦は完全に予想外だ。

彼らはユーハバッハですら一筋縄ではいかぬ相手。

滅却師たちが死神の卍解を奪う手段を持っていても、卍解を使うまでもない圧倒的強者である彼ら相手では太刀打ちできない。

 

「何故……奪えぬ卍解がある!?」

 

一番隊副隊長の雀部の卍解は奪えた。

メダリオンが正常に機能しているのは間違いない。

しかし他の死神の卍解が奪えない。

 

……当時のその場に居合わせた死神でもなければ気付かないだろう。

滅却師が奪えない卍解は『黒崎隣互により一度破壊され作り直された卍解』だ。

異界の知識すら混ぜ込んで再構成された斬魄刀は滅却師の理解の及ぶ存在ではなくなっており、メダリオンの支配を受け付けない。

 

特に問題なのが、3人目の特記戦力である護廷十三隊総隊長山本重國だ。

彼の卍解は再構成される際に隣互の『赫烏封月』の情報が組み込まれた。

その結果漏れ出ていた余剰熱が完全に刀身に封じ込められている。

余剰熱そのものも武器だったためそれを失ったのはマイナスだが、周囲や世界への被害を気にする必要がないというプラスの方がはるかに大きい。

彼は今も嬉々として卍解を振り回し続け、滅却師を次々と両断していく。

 

更に護廷十三隊のもう一つの特記戦力、更木剣八。

奴はそもそも卍解に至っていない。

しかし始解を習得していた。

そしてその始解で他の死神の卍解を優に超えているのだ。

戦いを楽しむためにと無意識に課していた枷もいつのまにか外しており、その凶暴さもあって手が付けられない。

 

確かに死神の側にも甚大な被害が出ている。

しかし卍解を奪えず戸惑う者、零番隊や山本や更木にぶつかった者が次々とやられ、滅却師側の被害もまた甚大。

 

「何故……何故力が私の下へ戻ってこない!!」

 

そしてこれがユーハバッハの最大の想定外であり誤算。

彼は自分の魂の欠片を他者へと分け与える力を持つ。

そして分け与えた者が死ぬとその者の力が全て自分へと還元される。

故に彼は自分の魂の欠片を戦場にまき散らした。

敵味方問わず死者が出る度に自らの力が高まっていくはずだった。

 

しかし死者の魂はユーハバッハが与えた力ごと、どこかへと吸い込まれ消えてしまう。

よって今の彼は自分の魂をまき散らした分だけ、無意味に弱体化してしまったのだ。

この分では『聖別』……生きている者から強制的に力を徴収したとしても戻ってくるかも怪しい。

失敗すれば自軍の戦力が減るだけだ。

劣勢に陥る現状で不確実な可能性を試すわけにはいかない。

 

「陛下……」

 

「むぅぅ……」

 

今日の戦いは様子見のつもりだった。

まだ自分が力を取り戻すための9年は完全に終わっておらず、滅却師たちは己の拠点である影の領域の外での活動時間に限界がある。

いずれ瀞霊廷全体を影の領域で飲み込み、その上で本格的な侵攻を行う予定だった。

 

しかし様子見のはずの戦いで自軍の戦力が削られすぎた。

彼は力を与え直すことで死した配下を蘇らせることも可能だが、魂そのものが消滅してしまえば流石に不可能。

これでは再度侵攻したとしても現状の焼き直しになる。

配下に与えていた力を集めれば自分一人でも死神を殺し尽くせるという自負はあったが、それができず原因もわからない現状では力の9年を終えたとしても勝ち目が薄い。

 

「……ハッシュバルト。領域外での活動時間はまだ余裕があるな?」

 

「では?」

 

「罠の可能性が高いが、零番隊の不在を突くしかあるまい。

 これより霊王宮に侵攻し、霊王を討つ」

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

『連絡します!ユーハバッハに動きがありました!

 最小限の手勢を引き連れ、霊王宮に侵入したようです!!』

 

瀞霊廷ではなく霊王宮を観測することでユーハバッハの動きを察知した浦原が、一斉に連絡する。

自軍である死神と破面たちだけではなく、敵軍である滅却師たちにも聞こえるようにだ。

戦いの隙を突かれ敵に本陣に乗り込まれたという自軍の劣勢を敵に伝えるなど、本来なら愚の骨頂。

しかし『聖別』というユーハバッハの能力を知る滅却師にとっては事情が異なる。

 

ユーハバッハは『不要』と判断した配下から力と命を奪い取る。

置いて行かれたということは、不要と判断されたのではないか。

実際には足止めの捨て石なのでユーハバッハは今のところは殺すつもりはないのだが、彼の内心を知らぬ滅却師たちの一部は恐慌状態に陥った。

戦士としての覚悟ならば数段上の死神達が、弱った滅却師たちを次々と撃破し始める。

 

「なぁ、ハゲのおっさん!

 霊王ってのがやられたら世界の終わりなんだろ!?

 アンタらがこんなとこにいていいのかよ!!」

 

一護が近くにいた零番隊の兵主部に問いかけるが、彼は豪快に笑う。

 

「案ずるな。行ったところでユーハバッハ如きにはどうにもならぬ!

 ……しかし霊王の地を土足で踏みにじられるのは気に食わんな……」

 

「……和尚!山じいからの伝言だ!

 ここはボクら護廷十三隊に任せて、零番隊は霊王宮に戻ってくれ!」

 

「ふむ?」

 

「浦原に準備を進めさせてる。

 ……一護くん、キミたちも一緒に行くんだ」

 

「浮竹さん……いいのかよ?」

 

「……キミたちには知る権利がある。

 そうでしょう?兵主部一兵衛」

 

「……よし、ついて参れ!」

 

「「「「応!」」」」




申し訳ありませんが、本作では霊王への対策に動いていたヒノカミや浦原たちの仕込みがメインとなっています。
滅却師たちやユーハバッハとの戦いはオマケでしかありません。
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