「「「「……は?」」」」
浦原を攻撃した乱入者の姿を目にして、一護ら4人の眼が点になる。
150cmほどしかない小柄な女で。
少し癖のある黒髪を肩まで伸ばして。
赤い死覇装を着て。
左腕に包帯を巻いて。
右手に赤い石剣を握って。
側頭部に鬼の仮面を着けていて。
「零番隊集合!!」
「「「「「ハッ!!」」」」」
足止めの滅却師がユーハバッハに殺されたからか、彼らの相手を務めていた4人の零番隊がいつの間にかこの場に辿り着いていた。
彼らは和尚と共に女の号令に従い地面に転がる浦原を囲む。
「……有罪」
「「「「「御意」」」」」
「「「オラオラオラオラァ!!!」」」
「ぎぃやぁぁぁぁあああああああ!!!!」
そして一斉にリンチを始めた。
6人がかりで足元にいる浦原を何度も何度も踏み潰した。
しばらくして動きを止めた彼らの足元には(モザイク)が転がっていたが……魂がグレートスピリッツに導かれていないので生きてはいるのだろう。
時間の問題な気もするが。
「まったく余計なことを……わざわざ知らせる必要ないじゃろ!
全部問題なく済んだんじゃから!」
「ぅわっはっはっは!
しかしアレの気持ちもわからんでもなかろう?
なぁなぁに済ませてしまえても、それでは心の整理ができまい」
「つーかお主も割と同罪じゃからな、和尚」
「……わっはっは」
(モザイク)を放置し、零番隊の5人を引き連れて歩いてくる女。
それはどこからどう見ても。
「姉貴……だよな!?」
「おう。儂が黒崎隣互、お主のねーちゃんじゃよ?」
「……じゃあ、アレは?」
一護は上空の光の球体を指さす。
「アレも儂じゃ」
「……なんなんだよ!?」
怒涛の展開の連続でついにオーバーフローを起こした一護が、脈絡のない叫びを上げた。
――――……
「やがてグレートスピリッツが育てばもはや何者にも揺るがせぬ。
世界の維持は不変となるが……それまで儂は封印されたも同然の状態となる。
いずれ解放されるとしても、それでは儂が霊王になるのと大差がない」
再び霊王という人柱を必要としない方法を説明していた場面に遡る。
ヒノカミが霊王の座を拒否したのは家族に辛い思いをさせないためでもあるのだ。
どれだけ時間がかかるか予測できないが、彼らと同じ時間を生きることができないのでは意味が無い。
「なんで、コレを使う」
ヒノカミが掲げたのは錬金術の世界で譲り受けた『核鉄』。
そして彼女は武装錬金を発動させ鎧を作り出した。
……座っている彼女の背後に。
今までは『刻思夢想』で再現した複製品だったから霊力を注ぎ続ける必要があった。
その都合上使うことができなかったが、武装錬金『鬼相纏鎧』にはもう一つの能力がある。
この鎧はある程度なら『遠隔操作』が可能なのだ。
部分発動により仮面だけの状態にした武装錬金を掲げ、続けて話す。
「これをアンテナ代わりにする。
これと儂が捨てる『人間の体』を組み合わせて、儂が遠隔操作できる『端末』を用意してもらいたい」
それが浦原と、零番隊の修多羅千手丸への依頼だった。
その発想の源は彼女にとって憎き敵であった『安心院なじみ』。
奴は世界中に途方もない数の『端末』を作り支配していた。
非常に……非常に腹立たしいが、その能力を模倣する。
そしてヒノカミが修行に専念している間に義骸作りを得意とする浦原と複数の機械義肢を自在に操る千手丸が協力して、ヒノカミが集めた道具を改造して組み込んだ『もう一つの体』を完成させた。
武装錬金の遠隔操作能力。
『神霊のヒノカミ』を持ち霊とし『端末のヒノカミ』をシャーマンに見立てた憑依合体。
中身は神霊の方に持ち込まれたが、肉体に残された『ノー・モア・タイム』の個性を通じたリンク。
これらを組み合わせることで神霊となった彼女は端末を自分の体のように動かすことが可能だ。
端末の中には霊界と魔界の世界で譲り受けた『おしゃぶ……』いや『霊界の至宝』が埋め込まれている。
膨大な霊力を溜め込むことができるこれを端末のエネルギータンクとし、端末周辺の霊子を『滅却師』の力で吸収し蓄積。
そして蓄積した霊子を使って『死神』の力で端末を動かす。
更に端末自身にも自衛の手段……可能な限り高い戦闘力を持たせるため、曳舟桐生の手により赫月と白星とスピリット・オブ・ファイアの魂の一部から『義魂』を製作。
それらを端末に持たせる武具に組み込んで改良し、『完現術』によりその力を引き出せるようにした。
『シャーマンの世界』で麻倉葉から譲り受けた『フツノミタマノツルギ』には赫月の。
一度『ヒーローの世界』に戻り相澤に譲ってもらった『捕縛布』には白星の。
そして『武装錬金の仮面』にはスピリット・オブ・ファイアの義魂が組み込まれている。
――――……
「この装束も霊圧を込めて強化・修復できる特別製で、千手丸に仕立ててもろうたんじゃ。
まぁこんだけ手を尽くしても、かつての儂よりは遥かに弱くなってしもうたがの」
「それが、弱体化……?
じゃあ『死ぬ』ってのは!?」
「この端末がどうしようもなく破壊されてしまえば元通りに修復するまでには途方もない時間がかかるじゃろうからなぁ。
『黒崎隣互』という『人間』が現世において『社会的に死ぬ』という意味では、あながち間違いではないの」
勿論、本体は霊王大内裏の上にいるので問題なし。
会話できる程度までなら数年で修復できるだろうから、霊王宮に来てもらえれば話はできる。
霊王の親族や友人なら、生きてても死んでても霊王宮へはフリーパスだ。
いつでも遊びにおいで。おねーちゃんは大歓迎だよ。
「……なんなんだよ!?
なんなんだよそりゃあ!!」
「だ~から余計な事を言う必要などなかったんじゃ。
本質は変わってしもうたが、儂自身は変わらず人として暮らせるわけで。
将来的にこの世界が崩壊する危険も無くなったんじゃからの。
……浦原は妙に気にしておったから、和尚の言う通りなぁなぁで済ませたくなかったんじゃろうがな」
「うがぁぁぁぁぁああああ!!」
浦原が語っていた『計画の基礎が完成した』とはまさに今の段階。
妹らの入学祝をしたあの日の時点で、すでに彼女は端末だったのだ。
浦原が一護らをけしかけた理由は『護廷十三隊の被害を減らすため』というのも確かにある。
しかし一番の目的は『戦いにかこつけて一護らを霊王宮へと連れて行き、自分たちが黒崎隣互に背負わせてしまった宿業を伝えること』だった。
一護らの裁きを受ける前に、自力で封印を解いて転移してきた本人に裁かれてしまったが。
真相を知った一護はユーハバッハとは別の意味で膝をつき慟哭した。
「……させぬぞ!!」
その隙にヒノカミの端末に斬りかかろうとしたユーハバッハを、兵主部が阻んだ。
どうやら怒りによって失意の底から立ち上がったらしい。
「貴様さえ……貴様さえいなければぁぁぁぁぁああ!!」
「いやこの体は端末じゃから無駄で……と言っても聞く耳持たぬか、その様子では」
肝心の本体には一切影響がないのだからもはやただの八つ当たりにしかならないというのに、ユーハバッハは目の前の小娘を斬り殺そうと息を荒げる。
「……ま、試運転には丁度いいか。
零番隊諸君、危なくなったら助けてくれ」
「「「「「御意」」」」」
「おい!その体で戦う気かよ!?」
「かか。この場を凌いでも、いずれこの身で戦わねばならぬ時は来るじゃろうからな。
しかし今の儂の実力はお主とそう変わらぬ……思えば、経験がなかったな」
ヒノカミの端末……黒崎隣互は黒崎一護の隣に立つ。
「どうじゃ?儂と一緒に、戦ってくれるか?」
「っ!?……ああ!!」
一護は虚の仮面を呼び出し、右手に天鎖斬月を構え、左手に死神代行証を掴んで完現術を発動しもう一つの刀を生み出した。
隣互は武装錬金の仮面をかぶる形で虚化し、右手の石剣から炎の刃を伸ばし、左手の帯を編み上げ巨大な左腕を作った。
「死ぃねぇぇぇぇぇええええ!!」
「……月牙!」「天衝!!」
次回、アフターストーリー完結となります。