ゴホンと一つ咳ばらいをして、亀仙人は自慢気に語る。
「この筋斗雲に乗れば意のままに空を飛ぶことができるのじゃ」
「へーっ、空を飛べるのか!」
「ただし清い心を持っていないと乗ることはできん!
つまり良い子でなくてはダメということじゃ。
どれ、手本を見せてやる!」
そして亀仙人は雲をすり抜け地面に落下し腰を痛めた。
「きゃはははは!」
「……そういえば悟飯から聞いたの。
亀仙人殿はとても……スケベじゃと」
「あはは、そりゃ乗れないワケね!」
続いて悟空があっさりと飛び乗り、自在に空を飛び回り始めた。
「なかなかの雲捌きじゃな」
「わたしもアレ欲しいっ!」
「やめとけブルマ。多分お主には乗れん。
……正直、儂も怪しいの」
「何よ!わたしはいつも清く正しいわよっ!」
「……イチゴや恋人のためにドラゴンボール探しとる強欲さでそれを言うか。
っとそうじゃ、亀仙人殿。一つお尋ねしたいことが」
「なんじゃ?」
ヒノカミはドラゴンボールの一つを取り出して彼に見せる。
「これと同じ物、持っているのでは?」
「へっ?」
「おぉ、これか?
百年ほど前に海底で拾ったんじゃ」
「あぁっ!!」
彼が長いヒゲで隠れていた首飾りを見せる。それは間違いなくドラゴンボールの一つだった。
「やはりか。レーダーで一つ近づいてくるのでもしやと思うたのよ」
「そういうことね!
ねぇ!筋斗雲はいいからこれちょうだい!」
「高価なもんだったのか?であれば流石に容易に手放すわけにはいかんの」
「ぬぅ……生憎と路銀の持ち合わせはな……」
「亀仙人さま、ワタシからもお願いできませんか?
こちらのお二人にもご迷惑をかけてしまいましたし……」
「むむむ……」
そしてさんざん悩んで亀仙人が出した条件が。
「そっちのスタイルが良い方のお嬢ちゃんが……ぱ、パンチーを見せてくれたらな?」
「「スケベジジイ」」
「筋斗雲に乗れない理由がはっきりしましたね……」
「……わかった、しばし待て。着替えさせる」
「ちょっと!」
亀仙人の要求は『この場で服をめくって下着を見せろ』ということだとは理解している。
しかしブルマが今着ている服はズボンだ。
着替えさせると聞いて、亀仙人はスカートに履き替えるのだろうと予想し了承した。
どうせ下着を見るなら雑にズボンをおろすより、恥じらいながらスカートをめくってもらう方が彼的にもセクシーポイントが高いので。
(わたしイヤよ!?
アンタが見せればいいじゃない!)
(あっちが指定したのはお主じゃし、ボールを必要としとるのもお主じゃろうが。
いいからついてこい)
そして二人が揃ってカプセルハウスの中に入り数分。
再び出てきたブルマの服装は。
「……ありゃ?変わっとらんのぅ」
彼女の服装は上下ともにそのまま。下はズボンのままだ。
ヒノカミが前を歩き、ブルマがその後ろに小さくなって隠れて進む。
「ほれ」
「おぉっ!」
そしてヒノカミは可愛らしいパンチーを摘まんで亀仙人の前に突き付けた。
思わず反応してしまったが、彼は少し落胆していた。
彼が見たかったのは、スタイルのいいブルマが恥じらいながらスカートをたくし上げ下着と一緒に太ももを晒す姿だったのだ。
このジジイ、筋金入りである。
「ん」
「へ?」
そんな亀仙人の手に、ヒノカミがパンチーを握らせる。
(……あたた、かい……!?)
掌から伝わるほんのりとしたぬくもり。
鼻孔をくすぐる女の子の香り。
そしてヒノカミの後ろに隠れたまま視線を落としてもじもじと震える大人しいブルマの様子。
(ま……まさかぁっ!!!)
布切れを持たされた彼の手が震え、鼻の孔から赤い雫が零れ落ちる。
「亀仙人殿……これと『交換』でよろしいかな?」
「どうぞお持ちになってくだされぇーーーーー!!!」
亀仙人はドラゴンボールを献上した。
筋斗雲に満足した悟空が戻ってきて、パンチーに満足した亀仙人が去っていく。
彼の姿が見えなくなるまで、ブルマは俯いたまま一言も声を発しなかった。
「……行ったぞ」
「……そう」
そして二人は。
「「イェーーーーーイ!!!」」
勢いよくハイタッチした。
「わたしたち嘘は言ってないもんねーー!」
「なんか誤解しとったような気がするけど気のせいじゃよなー!
ちゃんと確認して了承は取ったからなー!」
亀仙人に渡したのは、間違いなく『ブルマのパンチー』だ。
正真正銘『ブルマの(下着の予備である未使用品に彼女の香水を軽くふりかけ手で擦ってしわを付けぬくもりを持たせた)パンチー』である。
「これで4つ目!予定よりずっと早く手に入ったわ!
人助けもしてみるもんねーーー!!」
「そうじゃろうそうじゃろう。
みんな満足大団円じゃ。
んじゃ早速5つ目目指して出発しようかの!」
「オッケーー!
孫くーん!行くわよー!!!」
「「がっはっはっは!」」
二人は高笑いをしながらカプセルハウスへと歩いていく。
彼女らの背中を見ながら悟空が呟いた。
「……ばあちゃんたちは筋斗雲乗れなさそうだなぁ」
状況はまったく理解できていないが、悟空は直感的にそう思った。