『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第6話 ウーロン

 

村にやってくるウーロンは悟空なら問題なく倒せるだろう。

しかしヒノカミが恐れているのはウーロンが複数犯か、あるいはウーロンに協力者がいるケースだ。

その場合、村に行ったウーロンの帰還が遅いと判断したそちらが逃げ出す可能性がある。

そこで攫われた娘たちを連れて行かれたり、人質にされたりすると面倒なことになる。

 

だから彼女は別行動を提案し、一人でウーロンの住処を探す。

はっきりとした場所はわからないが、やってくる方角は決まっているらしい。

ならばと探知能力に優れたヒノカミが空を走る。

 

「……アレじゃな」

 

この近辺の村の発展具合にそぐわぬ、やたらと大きく豪華な屋敷が一つ。

気配を消したまま降り立ち、中の気配を探る。

 

(小さな気配が複数、デカい気配はない)

 

侵入者を察知する装置などがないか警戒しながら、慎重に奥へと進む。

 

(複数の音と声……一か所にまとめられている?)

 

脱走を防ぐ警備がいるかもしれないと、扉の外から中の様子を伺う。

 

(……!?)

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

「「「びえぇ~~~~~~ん!!!」」」

 

「そんで、この有様なワケね」

 

「フンッ!まだまだ叱り足りんがな」

 

ウーロンを捕えて住処にやって来た悟空とブルマと村人たちが目にしたのは、ヒノカミの前で正座させられ大泣きする娘たちだった。

 

彼女らは確かに最初は攫われたのだろうが、ウーロンが実は弱いと知り、やがて贅沢することを覚えてからは怠惰な日々を過ごしていたのだ。

村の家族たちがどれほど心配しているかなど考えず、帰りたくないなどとのたまう始末。

そしてヒノカミの雷が落とされた。

普段は頭の横や後ろに着けている鬼の仮面が顔の前に移動している。

 

「で、この豚がウーロンの正体か。

 ……焼くか?」

 

「ヒィィィッ!?」

 

「こんな不味そうなチャーシューはいらねぇや」

 

「アンタは食べる前提で話すな!」

 

ウーロンの正体は12歳の悟空よりも更に小柄な豚の獣人だった。

どんなものにでも変化できるが短時間だけで、本体の強さは変わらない。

まさに見掛け倒しの能力しか持っていなかった。

 

しかし小さな生き物や空を飛ぶ生き物などにも変化できるのは厄介だ。

どこに閉じ込めても逃げ出すだろう。

しかし村人らは殺された者はいないからと、命まで奪うつもりはないらしい。

 

「……しゃーない。儂らで連れていくか」

 

「はぁっ!?なんでだよ!?」

 

「閉じ込めるのも始末するのも駄目なら更生させるしかあるまい。

 目の届くところに置いておけば対処は容易いからな。

 見込みがないようならその時は……」

 

「よ、養豚場の出荷直前の豚を見るような目……!」

 

「ばあちゃんはオラより強ぇぞ。

 そんで嘘はつかねぇんだ。

 あと怒るとすげぇ怖ぇ」

 

悟空が一緒に住んでいたパオズ山では妖怪の類も多くいた。

中にはあまりに悪逆が過ぎる者もいて、それらは皆ヒノカミの炎により灰となった。

村人は彼を殺さないというが、彼らの眼の無いところであれば彼女はためらわない。

 

「選べ。服従か死か」

 

「ヒィィィッ!オレなんかよりよっぽど発言が悪党染みてんじゃねぇか!?」

 

再び鬼の仮面が正面に移動しその眼が光る。

ブルマの方も『変化の術は役に立つかも』とウーロンの同行に乗り気だ。

結局観念して、彼は一行に加わることになった。

 

大きな河をボートで移動している途中、次の目的地が『牛魔王』の住むフライパン山と聞いて早速逃げ出しそうになったが。

 

「ぎぃやぁーーーっ!」

 

ヒノカミの左腕に巻き付いていた帯が生きているように動き、魚に変化したウーロンを隙間なく雁字搦めにして、少しずつ圧をかけ始める。

 

「……更生の見込みが無ければ処分すると言ったはずじゃが?」

 

「逃げませんっ!もう逃げませんからぁーーーっ!」

 

進むも地獄、逃げるも地獄。

少しでも長く生きられる方をとウーロンは観念した。

 

「……ありゃ、ガス欠だ。

 ウーロン、アンタガソリンに変化できない?」

 

「化けれるわけないだろ……」

 

仮にできたとしたら、消費した分の体積はどうなるのだろうか気になるところだ。

 

「じゃあ岸につけてホイポイカプセルでガソリンを出すから、オールに化けてよ」

 

「それなら、まぁ……」

 

筋斗雲に乗った悟空かヒノカミが引っ張ることもできたのだが、ウーロンへの罰のつもりでヒノカミは敢えて何も言わなかった。

そしてウーロンの化けたオールを使い悟空が船を漕ぐ。

 

「こらっ!オレはデリケートなんだぞ!

 もっと丁寧に扱えっ!!」

 

「やっぱり遅いわねー」

 

子供と女とは言え、3人も乗っているのだ。どうしても重さがある。

加えてウーロンの変化は1度に5分まで。

その後1分のインターバルが必要だ。

時間切れ寸前で岸の傍まで辿り着き、陸地に飛び移った悟空がボートと木の幹を縄で繋ぐ。

そして上陸したところでブルマがポケットに手を突っ込むが。

 

「な、ない……カプセルの入ったケースが……!

 きっと河に落としたんだ~~~~!」

 

「はぁっ!?」

 

大きなものでも小さく収納できてしまうからこそ、無くなっても気付きにくい。

ガソリンも、バイクも、家も、何もかもカプセルの中だ。

財布の中のわずかなお金を残してブルマは全てを失ってしまった。

そしてカプセルが無ければ、彼女はただの無力な人間でしかない。

ボール探しを続けるどころか故郷に帰ることすらできないだろう。

 

「……あぁもぅっ、世話が焼ける!儂が探してくる!!」

 

ボートを取り出すときには確かに持っていたのだ。

間違いなく河に入ってからここまでのルート上にあるはず。

 

「い、いいのっ!?でもこんなでっかい河よ!?」

 

「通って来たルートは覚えておる!」

 

河の流れも、その方向も、流れの強さもだ。

後はカプセルの重さから推測すれば多少は範囲が絞れる。

 

「ただし捜索は半日で打ち切る!

 期待はするなよ、いくら儂が失せ物探しの達人じゃとしてもな!

 後で追いつくから、お主らは少しでも先に進め!」

 

「ごめんっ!ホントごめんねっ!」

 

ヒノカミは脚から炎を噴き出して空を飛んだ。

そして岸から離れた河の水面の上で思いっきり掌を叩く。

 

(……あぁくそ!石ばっかりでわかりづらい!!)

 

発動した領域の内側の物質を認識し、判別する。

人や生き物がほぼいないのは助かるが、単純に似たような大きさのものが多すぎる。

広大な領域を全て精査し終えたが、見つからない。

 

「……えぇいっ!次っ!!」

 

そしてまた少し移動し、同じように領域を発動。

広大な河に沈んだ小さなカプセルを探し続けた。

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