『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第7話

 

荒野の真ん中に、一台の大きな車があった。

それはウーロンが隠し持っていたカプセルに入っていたハウスワゴン……車と一体になった『移動する家』だった。

一晩ぐっすり眠った悟空とブルマはリビングルームへと顔を出す。

 

「おはよ~……」

 

「ん、おはよう」

 

「……あれ?ばあちゃん?」

 

「あ、ホントだ!

 いつの間に合流してたの!?」

 

「お主らが眠った後にな」

 

ソファに座ったヒノカミが、二人のために朝食を用意して待っていた。

 

「なぁばあちゃん」

 

「なんじゃ?」

 

「ウーロンは何やってんだ?」

 

「何もやらせておらんよ。未遂で済ませた」

 

「「?」」

 

「く、くっそ~~……」

 

リビングルームの天井からは簀巻きにされたウーロンが宙づりになっていた。

 

予定通り半日かけてカプセルの捜索を行ったヒノカミは、転移能力で悟空のもとへと合流。

ハウスワゴンの中に直接入り彼と対面するが異様に深く眠っており、あまりの反応の無さから睡眠薬を盛られたと気付いた。

そして欲望丸出しの悪い声でゆっくりと2階への階段を登ろうとするウーロンを見て状況を把握。

即座に縛り上げ、つるして一晩放置した。

後数分合流が遅ければ、未遂で終わっていなければ、彼はこのままハムにされていただろう。

 

「あ、ねぇウーロン。

 わたしの服洗濯しといてくれた?」

 

「この状況見りゃわかるだろっ!できるわけねぇよっ!」

 

「えぇ~っ!?それじゃ着る服がないじゃない!」

 

荷物を全て落としてしまった彼女は、昨日来ていた一着しか服がない。

今もブルマは大きなタオルケットで体を隠している。

 

「それなんじゃがな、ホレ」

 

「あぁっ!?」

 

ヒノカミが机の上を指さすと、そこにはブルマが落としたカプセルケースがあった。

 

「ほ、ホントに見つけたのか!?

 あのデカい河に落としたのを!?」

 

「儂は失せ物探しの達人じゃぞ?

 ……と言うものの全ては見つからんでな。

 落下の衝撃でケースが開いていたらしく、幾つか抜けがある。

 確認しておけ」

 

「バラバラになってたのを、拾い集めたってことかよ……!」

 

「ありがと~~~~~っ!!」

 

朝食にがっつく悟空を余所にブルマがカプセルの番号を確認する。

 

トランクケースはあった。これで着替えができる。

カプセルハウスはあった。食料と住居も取り戻した。

バイクもあった。移動もできる。

だがよりにもよって。

 

「ガソリンのタンクがない……」

 

相当な広範囲を念入りに探した結果だ。

アレで見つからないということは、下流にでも流されたか河の中の生き物に食べられたか。

もう一度戻って探しても見つかることはないだろう。

 

「このワゴンの燃料はどれほど持つ?」

 

「デカい分消費が激しいんだよ。

 フライパン山まで持つかもわからないぜ」

 

「バイクとかの中もそんなに入ってなかったはずだわ。

 この辺には街もないし……」

 

「……最悪、儂が飛んで買ってくるかじゃな。

 タンクのカプセルが売っていればいいんじゃが……」

 

ホイポイカプセルは非常に高額だ。

大きな街でなければ取り扱っていないかもしれない。

両手に抱えられる量ではたかが知れている。

荷物持ちとして筋斗雲に乗った悟空を同行させても限度があるだろう。

 

「……ちなみにわたしを背負って飛んでくれたりとかは~……?」

 

「乗り心地は保証せんぞ。

 うら若き乙女が空から吐瀉物をまき散らす覚悟はあるか?」

 

「で、ですよね~~……」

 

ヒノカミの空中移動方法は足場を作って跳ねたり、爆風の反動を使ったりなど。

全身から気を放出して風を操り飛ぶこともできるがそれでは背負ったブルマが無事では済むまい。

少なくとも筋斗雲のような快適な空の旅は約束できない。

そしてブルマは筋斗雲には乗れず、小柄な悟空にしがみついての高速移動は負担が大きいだろう。

 

「……ま、行けるところまで行くしかなかろう」

 

「だよな……だからいい加減解いてくれよ~!

 またアイツらが来るかもしれないし、さっさとこの荒野を抜けちまおうぜ!?」

 

「アイツら?」

 

「あのステキな男の人!?

 何言ってんのよ、彼なら大歓迎じゃない!!」

 

「……悟空、何があったんじゃ?」

 

「ヤムチャとか言う奴が襲ってきたんだ」

 

この荒野を根城にしている盗賊がいたらしく、金品を寄越せと言ってきたらしい。

空腹だったとはいえ悟空が敗れそうになったほどの実力者で、その隣にいたのはウーロンの知人であり同じく変化の術の使い手プーアル。

ブルマを見た途端、なぜか逃げ出してしまったらしいが。

そしてブルマの方は一瞬目が合っただけのこのヤムチャとやらに一目ぼれしたようだ。

 

「……もしや、昨晩ワゴンの外にいた気配はそいつらか?

 儂がウーロンを折檻し始めて間もなく立ち去ったようなんで見逃したが……」

 

「いぃっ!?やっぱりまた来てやがったのかっ!」

 

(それなりにデカイ気配じゃったし、ただの悪党ではないな。何より……)

 

「あの人また来ないかしらね~~」

 

「…………ふむ」

 

カプセルから荷物を出して着替え、身支度を始めるブルマを見て一つの考えに思い至る。

 

(……まともなヤツだったらブルマとくっつけて、ドラゴンボールを諦めさせられんか?)

 

ヒノカミが旅に同行しているのは悟空に経験を積ませるためと他の奴にドラゴンボールを奪われないようにするためだ。

ブルマの願いは『ステキな恋人』。

『無害な願いだから』という消極的な理由で同意しているものの、彼女は変わらず安易に願い球に頼ることを肯定してはいない。

 

「……見極めるか」

 

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