『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第26話

第二種目は騎馬戦。

障害物競争の上位42名が2~4名で騎馬を組み、騎手が頭につけたハチマキを奪い合う。

通常の騎馬戦との大きな違いは二つ。

一つは途中で騎馬が崩れたりハチマキを失ったとしても失格にはならないこと。

制限時間の15分が過ぎるまで何度でも挑戦することができる。

そしてもう一つは騎馬の参加者の第一種目の成績に応じてポイントが割り振られ、ハチマキに騎馬の合計ポイントが設定されるということ。

最下位の42位は5ポイント。

上位になるほど5ポイントずつ増えていくが、一位のみ例外として一千万というまさに桁違いのポイントが設定される。その結果。

 

「おのれ……焦凍を村八分にするとは……!」

 

「いやこの状況じゃしょうがねぇだろ……でも確かに参ったな……」

 

一位の轟と組めば全員から狙い撃ちにされる。

そうと分かって積極的に組もうという者はそうはいない。

逆境を望むとしたら爆豪くらいだが、彼とは互いに宣戦布告し合った立場であり論外。

そして轟自身が社交的でないため交友関係も少ない。

このままでは騎馬を組むことすら絶望的かと思われた。

 

「ねぇ、誰か焦凍に話かけてるよ?」

 

クラスメイトにも避けられ孤立していた轟に近づいたのはB組の夜嵐イナサ。

彼はエンデヴァーの大ファンで、推薦入試の際に轟と友達になった少年だ。

熱血でクソ真面目で距離感がおかしい夜嵐は友達の窮地に力を貸すのは当然と協力を申し出て、人付き合いの経験が薄い轟は普通の友達とはそういうものかと受け入れる。奇妙な天然コンビである。

しかし夜嵐は障害物競争4位であり、轟との個性の相性も良く、B組トップの実力者。

この二人は1年ヒーロー科二大巨頭なのだ。

彼らならば他の全員に狙い撃ちにされようとも最後まで一位の座を守り抜くことができるかもしれない。

そう判断した数名が改めて轟の勧誘に乗り、何とか4人騎馬を組むことができた。

 

「フン……現金な奴らだ!」

 

「台詞とにやけ面が一致してねぇぞ。

 あといい加減火ぃ止めろ」

 

次男の夏雄に小突かれてエンデヴァーはようやく炎を納めた。

また警備のヒーローの方たちの手を煩わせるわけにはいかないので、彼も容赦はしない。

 

『さぁ15分のチーム決め兼作戦タイムを経て、フィールドに12組の騎馬が並び立った!』

 

『……一組、明らかにヤバイのがいるな……』

 

「まったくじゃ。バランス狂いすぎじゃろ」

 

休憩室で小休止中のヒノカミがモニターを見て呟く。

騎手、轟。前騎馬、夜嵐。この二人だけでも厄介なのに、上鳴と八百万が両脇の騎馬を務めている。

八百万も推薦入試合格者なので、特に優秀な4人の内3人が結束していることになる。

 

「そんなにやべぇの?」

 

「あぁ。あれは逃げるのではなく、襲い来る者をすべて返り討ちにするための布陣じゃ」

 

「うへぇ……」

 

轟の個性による氷と夜嵐の個性による風で自分たちを覆う壁を作れば大抵の敵は彼らに触れることすらできなくなる。

しかし轟はそこに無差別広範囲攻撃を得意とする上鳴と、彼の放電から味方を守る絶縁膜を作り出せる八百万を加えた。

勧誘できる相手が限られたこともあるが、防御重視ならこの選択は取らないだろう。

 

「こりゃ決まったの。焦凍の一位は確定した。

 後は2~4位にどこが食い込むかじゃな」

 

「二人の弟弟子でもなんともならねーの?」

 

「ふーむ……」

 

緑谷は麗日・飯田・常闇。爆豪は切島・芦戸・瀬呂と組んでいる。

緑谷は合計ポイント上位の自分たちも狙われると危惧し、防御面も考慮して常闇を加えたようだ。

守りに意識を割いているようでは轟を倒すのは不可能だろう。

爆豪は攻撃重視のようだが、炎・氷・風・雷の四重の結界を超えられるとは思えない。

仮に超えたとしても八百万が作り出す多彩な武器を操る轟本人が待ち構えている。

 

「無理じゃな」

 

「そっか。

 兄貴としては嬉しいが、あれに追いかけられる身としては複雑だぜ」

 

「それは頑張れとしか言えんの」

 

彼女の予想では轟チームが一位、緑谷チームと爆豪チームはよほどの失態をしない限りは4位以内には入る。

あと一組がどこになるかまでは予想できない。

他の面子の実力に大きな開きがないこともあるが、把握しきれていない戦力もあるからだ。

ヒーロー科は40名で参加者は42名。

残る2名である普通科の少年とサポート科の少女がどのような人間でどのような個性なのかは彼女も知らない。

 

「そろそろ休憩も終わるな。

 交代までもうひと踏ん張りじゃ。

 この進行速度なら最終種目の途中くらいから兄上たちに合流できるじゃろ」

 

「あー……俺やっぱ別行動していい?」

 

「逃がさんぞ」

 

本戦で焦凍が活躍すれば、炎司は第一種目以上の勢いで燃え上がるだろう。

炎は舞火の個性で散らすことができるが、肉体も鍛え上げている兄を彼女一人で取り押さえるのは無理だ。

かといって他人である周囲のヒーローに何度も頼るというのは身内としてあまりに申し訳ない。

一部除き騎馬は4人で、上位4チームが勝ち残りだから選手は16名前後。

例年通りなら最終種目は一対一の戦いになるから4回勝てば優勝。

つまり轟が優勝する場合は今の第2種目を含めて、エンデヴァーはあと5回炎上する計算になる。

 

「失敗したー。

 年食ったんだからもう落ち着いたと思ってたんだけどなー……。

 これなら家で中継見てた方がマシだったぜ」

 

「そう悲しいことを言うな。

 弟をしっかり応援してやれ、『お兄ちゃん』。

 ……あぁ、彼女に会いに2年のスタジアムに行きたいのなら許可するぞ?」

 

「っ!あの子はそんなんじゃねーよ!早く行くぞ!」

 

警備スタッフの休憩室から駆け出すブレイザーに、ヒノカミが続いた。




轟チームは飯田の代わりに夜嵐が加わります。
緑谷がトップではないので飯田は彼の誘いを受けました。
爆豪は原作通り。
夜嵐が雄英推薦合格を蹴らなかったのでB組の一人が普通科に落ちています。
そしてヒーロー基礎学を受けられず実力が不足し障害物競争で勝ち残れませんでした。
物語に影響ないのでそれが誰かすら決めていません。ごめんよB組の誰か。

そして最後に触れた燈矢の彼女(?)。
渡我被身子です。
原作では荼毘がヴィランの道に引き込みましたが、ここでは燈矢がヒーローとして彼女を救い出しました。
渡我は燈矢に憧れ彼の母校である雄英に進学しています。
彼女は敵連合に参加しません。
それはつまり出番がなくなるということなのですが……幸せだから許して!
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