『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第8話 ヤムチャ

 

そして機会はすぐに訪れた。

 

「うわっ!アイツが来たぞっ!!」

 

「えっ!?あの人がいらっしゃったのっ!?」

 

ヤムチャが乗った車は移動が遅いハウスワゴンにあっさりと追いつき、並走したところで肩に担いだバズーカをこちらに向けた。

 

「ウーロン、少し離れたところで止まって待機」

 

「どこ!?どこにいらっしゃるの!?」

 

「……悟空、ブルマを取り押さえておけ」

 

ヒノカミは窓の外に転移し、向かってくる砲弾を受け止め爆風に飲み込まれる。

 

「あっ、おい!!アイツ喰らっちまったぞ!?」

 

「大丈夫だって、ばあちゃんはあんくらいじゃビクともしねぇ」

 

外に出ようとするブルマを掴んだ悟空が言う通り、ヒノカミは傷一つ負うことなくその場に立っていた。

 

「なんだとっ!?」

 

「ほぅ、貴様がヤムチャか。

 (なるほどブルマはこういうのが好みか)」

 

冷静に分析しようとするヒノカミだが、ブルマは面食いなので顔が良ければどんな男でもすぐに反応してしまう恋多き乙女である。

 

「やはりあの3人だけでなく、他に仲間がいたのか……」

 

「いかにも、ヒノカミと言う。

 ヤムチャよ、交渉に応じるつもりはないか?」

 

「なに?」

 

「ガソリンが無くてな、余剰があれば譲ってはもらえぬか?

 相場以上の金銭かカプセルで支払おう」

 

「……フッ、断る。

 金もカプセルも、力尽くで奪ってしまえばよいのだからな!」

 

「やはりそうなるか……」

 

そう言って手に持った小銃をこちらに向けるが。

 

「「!?」」

 

引き金を引いた瞬間に銃が爆発した。

 

「儂に銃『火』器は通用せぬ」

 

「貴様……妖術使いかっ!

 武器が使えぬのならばこの拳で打ち砕くのみ!

 喰らえ!狼牙風風拳っ!!」

 

ヤムチャは狼の動きを模した動きでラッシュを放つ。

ヒノカミは彼の両腕を丁寧に捌いていく。

 

「なるほど、我流でここまで鍛え上げるとは。

 行いはともかく、努力だけは認めてやろう」

 

「なにぃっ!?」

 

「貴様ならば死にはすまい。

 歯を食いしばれ……!」

 

「!?」

 

 

 

「DETROIT SMASH!!」

 

 

渾身のストレートパンチがヤムチャの胴体に突き刺さり、吹き飛ばした。

荒野にある無数の岩を貫き、やがてその一つの瓦礫に飲み込まれた。

 

「ヤムチャさま~~!!」

 

「ぐっ……おっ、のれぇ~~!」

 

「ほぅ、意識があるか。

 思ったより頑丈じゃな」

 

しかしダメージは深刻らしく、乗って来た車に戻り撤退するつもりのようだ。

 

「今更逃がすと思うか……?」

 

ヒノカミは逃走を妨害するつもりでそちらに掌を向けた。

内燃機関の車など、ヒノカミにとっては爆弾と変わらない。

 

 

 

ここで話は変わるが、このヤムチャと言う男。

女性が大の苦手である。

正確には好きではあるのだが、目の前にすると緊張して上がってしまい、身動きが取れなくなるのだ。

ヒノカミと合流する前の襲撃で彼が逃げ出したのは、ブルマの存在に気付いたからだった。

 

ではそんなヤムチャが何故ヒノカミを相手に戦えたのか。

 

 

 

「覚えてろよっ!『小僧』!!!」

 

 

 

女性だと認識していなかったからだ。

 

「こっ…………」

 

その一言に動きを止めてしまったヒノカミは、みすみすヤムチャたちを逃がしてしまう。

彼らが立ち去り、ハウスワゴンから出てきた悟空とウーロンが近寄っても、掌を伸ばした姿勢のままピクリとも動かなかった。

 

「すげぇなアンタ!ホントに滅茶苦茶強かったんだなっ!!」

 

「……ばあちゃん?」

 

 

ドシャァアア

 

 

そして音を立てて崩れ落ちた。

 

「あ、オイ!?」

 

「ばあちゃん!?」

 

「まさか、攻撃を喰らってたのか!?」

 

「ばあちゃんがやられるなんて……すげぇ強ぇんだな、アイツ」

 

意識を失ったヒノカミは二人に引きずられ、ワゴンに回収された。

 

 

ヒノカミもかつては自分に無頓着だった。

子供だとか女だとか、そんなことを気にする余裕もない過酷な世界を生きてきたから。

しかし長い旅を乗り越え、経験を積み重ね、多くの人々に導かれ、彼女は人間として大きく成長したのだ。

 

 

「……ガハッ」

 

 

これは確かな成長の証だった。

間違いなく心は成長しているのだ。

体はもう成長しないけど。

 

 

再びハウスワゴンで走り出し暫く。

 

「おーい!おーい!」

 

「またきやがったっ!」

 

今度は自分が戦いヒノカミを護ると車を飛び出し身構えた悟空に対し、ヤムチャたちは胡散臭い笑顔を向ける。

 

「やぁキミたち!さっきはごめんねー!

 よーーーーく考えてみたらさーー。

 ボクたちいけないことしてたんだよねーーーー」

 

「へ?」

 

「だからさーー、お詫びにこのカプセルあげるーー!」

 

そう言ってヤムチャは悟空に向けて一つのカプセルを放り投げる。

車の窓からまたも飛び出そうとするブルマを取り押さえつつ見守っていたヒノカミは、まさか爆弾かと思いガラス越しに掌を向ける。

しかし現れたのは。

 

「……車?」

 

「燃料もたっぷり入れておいたからーー、ぜひ使ってねーーー!

 じゃあ気を付けてーーーー!」

 

「きゃーーーっ!待ってーーヤムチャさまーーー!!」

 

呆けたヒノカミから解放されたブルマが彼らを追いかけるも間に合うはずもなく。

むしろ彼女の姿を見た瞬間に彼らは速度を上げて逃げて行った。

 

「アイツ、根はいい奴なんだな!」

 

「爆弾とかついてるんじゃないだろうな……?」

 

「離れろ、儂が調べる」

 

ヒノカミが近づいて領域を張り、車の内側まで精査すると。

 

(……発信機?)

 

「お、おいっ。まさかホントにあったのかっ!?」

 

「いや、爆弾『は』なかった。

 移動速度とガソリンの消費を考えると、ワゴンよりもこちらに乗り移った方がよさそうじゃな。

 ありがたく使わせてもらおう」

 

「話がうますぎる気がせんか?」

 

「ダメだよ、人を信じなきゃ!」

 

「そーよ!ヤムチャさまからのプレゼントなのよ!?

 さあ、フライパン山にレッツゴーー!!」

 

ヒノカミは敢えて発信機のことを伝えず見逃した。

こんなものを取り付けるということはこちらを追いかけてくるつもりがあるのだろう。

自分たちに執着する理由は不明だが、彼をブルマにあてがえないかと考えていたヒノカミには好都合だ。

出し抜かれる心配もないだろう。思ったより……アホのようだし。

 

昨夜彼らはワゴンに接近した際に悟空たちの話を盗み聞きし、ドラゴンボールの存在を知った。

ヤムチャの狙いがボールだと知っていたら、ヒノカミはこのような甘い対応を取らなかっただろう。

 

……彼の願いが『女の子の前でもあがらないようにしてもらうこと』だと知ったら、掌を返して応援したかもしれないが。

 

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