ヤムチャからもらった車に乗って北に進むこと更に二日。
「ねぇ、この暑さおかしくない?」
「フライパン山のせいだ」
ウーロンによるとここは元々涼しい地域だったのだが、10年ほど前に火の精が落ちてきて燃える山と化し、気候も変動してしまったとか。
やがて彼らの眼の前に、炎に包まれた燃え盛る山が現れる。
「見ろ!あの山だ!」
「ひえええ~~~~っ!これじゃ暑いわけだわ。
……ヒノカミ、ちょっと強めにしてよ!」
「儂はクーラーではないんじゃがな……」
炎だけでなく熱を操作する力も持っていた彼女は、ブルマの要望に応えて彼女たちの周辺を快適な気温に保たせていた。
「なぁおい、ホントに大丈夫なんだろうな!?
相手は牛魔王だぞ!?」
「大丈夫よ!牛魔王だかなんだか知らないけど、こっちには孫くんにヒノカミだっているんだし!」
「お前知らずによくそんなことが言えるな!
とにかく無茶苦茶恐ろしい奴で、悪魔の帝王と呼ばれてるくらいなんだぞ!?」
フライパン山の頂上に微かに見える建物は、牛魔王の城だ。
あそこには彼が略奪した金銀財宝が蓄えられており、おそらく6個目のドラゴンボールもあの城の中。
牛魔王は山が燃えるタイミングで家族と共に城を離れていたため、彼もまた城には戻れずにいる。
しかし城の中の財宝を狙う敵は許さないと、今も山の麓で城を守っているらしい。
「アンタやたらと詳しいわねぇ」
「当たり前だ。教科書にも載ってるくらいだからな」
「教科書か……パオズ山に戻る前に、何冊か買いそろえておきたいな」
「うげぇ~~~、また勉強かぁ。
オラじっとしてるっての苦手だぁ」
「呑気だなお前らっ!」
怯えるウーロンを引きずって麓にまで辿り着く。
壊れた建物の残骸と死者の骨が至る所に転がっており、そのすぐ隣には燃え盛る炎の山。
なるほど、この世の地獄を連想してしまうのも無理もない光景だ。
「静かにしろよっ!牛魔王に見つかったら終わりだぞ!?」
「大丈夫だって、ねぇヒノカミ!
……大丈夫よね?ね!?」
ここに来てブルマもようやく不安になって来たらしい。
「安心せい。お主らの考えているような事態にはならぬさ」
「「へ?」」
「すぅ~~~…………」
「……牛魔王殿はおられるかぁーーーーーーーーーーっ!!!」
「「アホーーーーーーー!?」」
突如大声を上げたヒノカミを咎めるように出した二人の声量も負けてはいなかった。
すると彼らの後ろからズシンズシンと大きな足音が近づいてくる。
「「ひっ……ヒィィィッ!!」」
「お~~……おっちゃんでっけぇなぁ……!」
角の生えた兜で目元まで隠し、巨大な斧を持ったヒゲ面の大男が現れた。
「……おらを呼んだのはおめぇか?
こっだらとこに何のようだ?
まさかおらの宝盗みに来たんじゃねぇだろな?」
「お初にお目にかかる、牛魔王殿。
儂はヒノカミと言う。よろしく頼む。
ホレ悟空、お主も挨拶せい」
「オッス!オラ、孫悟空だ」
「生ぎのいい餓鬼どもだべ……おぉ!?」
訝し気だった牛魔王が悟空の背負ったものを見て表情を変える。
「そりゃ如意棒じゃねぇだか!?
『孫』ってもしやおめぇ、悟飯さんの孫か!?」
「うん!!
おっちゃん、じいちゃんを知っとるんか?」
「武天老師様の一番弟子がおめぇのじいちゃんで、二番弟子がおらだったんだべ!
いやぁーー、なっつかすいなーーー!」
「残念ながら……悟飯殿はしばらく前に亡くなられた。
牛魔王殿への連絡が今日まで遅れたこと、お詫び申し上げる」
「!?そっかぁ……いや、よく知らせに来てくれたべ!
城ン中でなぐで悪ぃが、歓迎するだよ!おめぇら!」
「……ちょ、ちょっとヒノカミ!どういうことよ!?」
「聞いての通りじゃ。
彼は悟空の育ての親である、孫悟飯殿の弟弟子にあたる」
「……つまり、知り合いも同然ってことかよ!?
だったら先に言ってくれよ、もぉ~~~っ」
「武天老師って……あのスケベじいさんよね!?
ホントにそんなに凄かったの!?」
「むむ!?もしやおめぇら、武天老師様が今どこに住んでらっさるか知ってるだか!?」
「亀仙人のじいちゃんだろ?だいたいわかるよなぁ?」
「おそらく4個目のボールがあった場所じゃな。
座標なら記憶しておる」
「……うおお~~~~っ!
えがっだーー!
城に帰れるべーーーー!!」
大喜びしてはしゃぐ彼に事情を伺うと、亀仙人の持っている芭蕉扇という道具があればあの山の火を消すことができると聞いたらしい。
しかし亀仙人は住居を転々とすることがあるらしく、今住んでいる場所を知らなかったそうだ。
悟空は筋斗雲を持っている。
亀仙人の居場所はヒノカミが覚えている。
距離はあるが往復まで半日とかかるまい。
牛魔王は亀仙人から芭蕉扇を借りてくることを条件に、おそらく城の中にあるであろうドラゴンボールを譲ると約束してくれた。
「じゃ、オラ早速行ってくる!」
「あ!ちょっくら待った!
こんなにうめぇごど行くと思っでながっだから、昨日おらの一人娘の『チチ』を使いに出しちまっただ。
途中の道にいると思うから拾って一緒に連れてってけろ」
「チチ?」
「気はちいせぇが、めんごい娘だど!
おめぇならヨメにやっでもええな!
ホレ、これが写真だ!」
「なるほど、こりゃ別嬪さんになりそうじゃな。
ただ嫁云々は悟空らが大きくなって本人にその気があったらな」
「その子を連れてけばいいんだな?」
「では悟空、任せるぞ。
儂らはここで待つ」
ヒノカミなら空を飛べるが筋斗雲に追いつける速度となれば負担は大きい。
ただのお使いになるだろうからと彼一人を見送った。
「……?」
ほぼ同時に、二つの気配がこの場から慌てて遠ざかっていくのを感じた。
それが自分たちの後を着けていたヤムチャとプーアルだということを、ヒノカミだけは知っている。
(……まぁ、ええか)
相変わらず彼らの目的が何かはわからないが、仮に悟空を追いかけたとしても筋斗雲には追いつけないだろうと、ヒノカミは黙っていた。