『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第10話 かめはめ波

 

「いやぁー、こんな涼しいんは久しぶりだべ。

 山があんななっぢまっでがらは年中蒸し暑ぐでよ!がはは!」

 

「夏も冬も、どこでも快適よね~。

 ね、ね!その妖術っての、わたしも覚えられる!?」

 

「あー……すまん。儂の術はほぼ儂の生まれや体質依存なんじゃ」

 

くだらない雑談を続けていると悟空が戻ってきた。

筋斗雲にはチチという少女も乗っている。

どうやら彼女も『良い子』であるようだ。

しかし彼らは芭蕉扇らしきものを持っていない。

 

なんと亀仙人は芭蕉扇をうっかり捨ててしまっていたらしい。

なので代わりに本人が来て山の火を消してくれるということだが。

 

「ん~……だったらいっそ儂が……」

 

「ん?なんか言った?」

 

「……いや、何でもない。来たようじゃぞ」

 

悟空が指さす先から、回転して空を飛ぶ亀の上に乗った亀仙人がやって来た。

今日は先日のようなアロハシャツではなくしっかりとした服装で、おそらく久しぶりに会う牛魔王に威厳を見せようとしているのだろう。

……着地した途端に『目が回った』と嘔吐し始めたが。

 

「これ牛魔王よ、お前評判が良くないのぅ……。

 己の宝を守る為とはいえ幾人も殺生しているらしいではないか」

 

「誠にお恥ずかしい限りですだ!

 つい欲にかられまして!

 火さえ消えれば宝など捨てますっ!」

 

「まぁ捨てることはないじゃろ、もったいない」

 

「すげぇ……牛魔王が謝ってら」

 

大きな体を地面につけて亀仙人を敬う牛魔王の態度に、彼の悪名を知るウーロンなどは圧倒されている。

……ここまでは良かったのだ。ここまでは。

 

気恥ずかしそうな亀仙人が悟空に命じて、ブルマを連れてその場を離れていく。

物陰に入った彼らの会話を、普通の人間なら聞き取れなかっただろうが。

 

「じいちゃんがお前の胸をつつきたいんだと」

 

ヒノカミにはがっつり聞こえていた。

ブルマが探しているドラゴンボールがフライパン山にあり、彼女が火を消したがっていると知った亀仙人が条件を出して来たらしい。

 

「いいじゃないか胸つつくくらい」

 

事の重要度が判っていない悟空は、育った環境故に仕方ないとして。

 

「このまま帰っちゃおうかな~~」

 

「おう、帰れ帰れ」

 

このスケベジジイは突き放しておく。

 

「ぬなっ!?お嬢ちゃんいつの間に!?」

 

「ヒノカミ、聞こえてたの!?」

 

「儂ゃ地獄耳じゃからな。

 ……で、帰るんじゃったな。どうぞお引き取りを」

 

「でも火が消えねぇと困るんだろ?」

 

彼らの傍に転移したヒノカミは会話に割り込み主導権を奪い取る。

 

「ちぃと時間をもらえるなら、あんくらい儂だって消せるわい」

 

「ホント!?」

「なんと!?」

 

「伊達に『火の神(ヒノカミ)』を名乗っておらん。

 道具で手軽に済むなら任せようと思うたがな。

 ……で、どうする?

 久しぶりに会った弟子にあそこまで見得を切って、女の胸がつつけぬからと今更帰るか?

 儂らは構わんぞ。牛魔王らには事細かに伝えておこう」

 

「ぐっ、ぐぬぬぬぬぬっ……!」

 

「へへ~~~~ん!」

 

劣勢を覆せぬと観念した亀仙人は、落ち込んだ様子ですごすごと戻っていく。

その後ろをついていこうとする悟空を呼び止めた。

 

「悟空、女性は親しくない相手に体を触られるのを嫌がると散々言うたであろうが」

 

「へ?でも亀仙人のじっちゃんとは知り合いだろ?

 胸つつかれるくらいでも駄目なのか?」

 

「大体の女性は、胸と尻周りは特に嫌がるもんなの!

 覚えときなさい!」

 

「そっか~……それでチチも怒ったんか」

 

「……アンタまさか『パンパン』したんじゃないでしょうね?」

 

「ばあちゃんに駄目って言われたからしてねぇ」

 

「はぁ、良かった……」

 

「だから『コンコン』した」

 

「たわけぇ!!」

「オバカッ!!」

 

如意棒を掲げてにこやかに宣言した悟空の頭を、二人がかりで『ゴン』『ゴン』しておいた。

 

 

 

しかし亀仙人はどうやって山の火を消すつもりだろうか。

彼は武闘家でありヒノカミのように特異な能力は持っていないはず。

しかし『仙人』を名乗るならば仙術も修めているとは思うが。

 

「わしセクシーじゃろ?」

 

「はいはい」

 

背負っていた亀の甲羅と上着を脱ぎ、上半身裸になった亀仙人が瓦礫の上によじ登り、燃え盛る山を正面に捉える。

 

 

 

「……はっ!!!!」

 

 

気合を入れると同時に亀仙人の筋肉が膨れ上がり、全身から凄まじい『気』が溢れ出す。

 

 

「「「「げげげげげげっ!!!!」」」」

 

「で、出るだ!

 武天老師様の『かめはめ波』!!」

 

それは全身の気を増幅させて掌から放出させる、亀仙人の編み出した必殺技。

 

「か……め……」

 

腰を落とし、両手を広げ前に向け、上下に手首を合わせる。

 

「は……め……!」

 

手首から先はそのままに、上半身を捻って両手を腰の横にまで持っていく。

 

 

「……波!!!」

 

そして再び正面に突き出した掌から巨大なエネルギーの塊が放出された。

 

 

「まずっ!!」

 

気付いたヒノカミが慌てて左手をピストルの形にして前に向け、右手を左手の手首に添え叫ぶ。

 

 

 

「霊丸!!!」

 

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