『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第11話

 

亀仙人が放出した『かめはめ波』を目の当たりにした悟空たちは言葉を失っていた。

しかし亀仙人自身もまた、背後を振りむいて驚愕している。

 

(全力でなかったとはいえ……儂のかめはめ波を弾き飛ばしたじゃと……!?)

 

しかも亀仙人のように時間をかけて気を高めたわけではなく一瞬で発射していた。

そして後から放って追いついたということは、彼女の方が弾速が速かったということ。

 

(指先の一点から圧縮したエネルギーを弾丸にして……。

 『どどん波』かと思うたが違う、この娘一体何者じゃ!?)

 

「……はぁ~~~~」

 

視線を向けられたヒノカミは長く大きく息を吐き、勢いよく顔を上げて叫んだ。

 

「……アホかぁーーーーーーっ!!」

 

「およ?」

 

「儂らは『山の火を消せ』と言うたんじゃ!

 誰が『火ごと山を消し飛ばせ』と言ったぁーーーー!!」

 

「……あ!」

 

亀仙人の放ったかめはめ波は凄まじい威力で、しかも真っすぐにフライパン山に向けられていた。

ヒノカミの霊丸がぶつかり炸裂したことで少し軌道が横に逸れたが……山の一角がごっそりと抉り取られている。

直撃していれば山も、城も、中の財宝も、下手をすればドラゴンボールさえも消えていたかもしれない。

 

「「「「…………」」」」

 

「……はりきりすぎちゃった!テヘッ!」

 

厳しい視線を向けていたブルマたちは亀仙人の茶目っ気にズッコケてしまったが、ヒノカミは肩を怒らせてずんずんと前に進み亀仙人を追い越す。

 

「もうよい!これだけ勢いが落ちたならすぐに済む!」

 

直撃ではなかったが、霊丸が炸裂した衝撃とかめはめ波が通り過ぎた余波でフライパン山の火はかなり弱まっている。

ヒノカミは鬼の仮面を顔に重ね、獣のような唸り声を挙げた。

 

 

 

『ウォォォォーーーーーーーッ!!!』

 

「「「!?」」」」

 

すると声が届いた炎が鬼の仮面に引き寄せられていく。

 

「ほ、炎を……食べてる!?」

 

まだ山に残っていた炎が欠片も残さず鬼の口に飲み込まれ、やがてフライパン山は真っ黒な燃えカスの山になった。

頂上には確かに牛魔王の城が燃え残っている。

 

「……周辺の熱も一緒に奪っておいた。

 これでええじゃろ」

 

「こ、こらぁたまげたべ……!」

 

気温も山が燃える前の涼しかった頃に戻っていた。

 

「ちょっとちょっと!何よもう!

 そんなことできるんならちゃっちゃとやってくれりゃよかったじゃない!」

 

「今の儂では先ほどまでの火を一度に消すのは難しかった。

 その点では亀仙人のお陰じゃ。礼くらいは言っておけ」

 

「うっ……その、ありがとね、亀仙人さま!」

 

「んむ……いや、儂も良いものが見れたわい。

 ……お嬢ちゃん、本当に何者じゃ?」

 

「その辺は……城で話そう。牛魔王殿らが呼んでおる」

 

山火事が消えたことで、一行は頂上の牛魔王の城へと向かう。

 

 

流石に十年も放置されていれば至る所が劣化しており、特に食糧庫などは熱のせいもあって酷い有様だった。

しかし宝物庫は一際頑丈な部屋だったから無事で、その中からドラゴンボールが見つかった。

 

「そんだけじゃ足んねぇべ。

 ホレ、これも持っでげ」

 

約束通りボールを受け取って宝物庫を出ようとしたブルマとウーロンに、牛魔王が一抱えの財宝を押し付ける。

 

「えぇっ!?いいの!?」

 

「んだ。おめぇらにゃ世話んなっただよ。

 これからは心を入れ替えるべ。

 武天老師さまにも約束しただがらな」

 

「ありがとう!正直、お金が少なくなってきてて困ってたの!」

 

「お、オレもいいのかっ!?バンザーーイ!」

 

 

ブルマがボールを探しに行っている間に、ヒノカミは城の外で亀仙人と雑談をしていた。

 

「なるほど、不老の妖術師か……」

 

「望んでなったわけではないがな……お主とは違って」

 

亀仙人もかつて不死鳥の血を飲み、不老となったらしい。

ちなみにその不死鳥は去年食中毒で死んだそうだ。不死鳥なのに。

 

「よもやこの年になって儂以上の強者に会おうとは……長生きはしてみるもんじゃの」

 

「儂とお主では強さの種類が違うじゃろ。

 ……悟空が学ぶべきはお主の強さじゃ。

 よろしく頼むぞ」

 

「ふぉっふぉっふぉ、孫悟飯への義理もある。任せておけ」

 

悟空はドラゴンボール探しが終わったら、亀仙人に弟子入りすることになった。

決め手は悟空が『かめはめ波』を一目見て模倣したからだ。もちろん威力は亀仙人のものとは比べ物にならない弱さだが。

彼も元々悟空を高く見積もっていたが、まだ見くびっていたと認めざるを得ない。

『修行次第では自分を抜く』という言葉はお世辞でもなんでもなく、確固たる未来として確信している。

 

「……お主が『ボンキュッボン』だったら、是非とも一緒にと誘ったんじゃがなぁ」

 

「かっかっか、しばくぞクソジジイ」

 

とある事情から悟空の傍から離れるのは不安があるのだが……亀仙人なら大丈夫だろう。

彼なら自力でなんとかするだろうし、何より多少痛い目を見ても心が痛まない。

 

 

そして件の悟空は、牛魔王の娘のチチと共にいた。

 

「なぁ悟空さ、おらたちおっきくなったら、嫁にもらいに来てくれな?」

 

「ヨメ?嫁って結婚するってことだったか?

 なんでオラとなんだ?」

 

「やんだーー!わがってるくせに!」

 

「いやようわからんけど……」

 

ヒノカミに詰め込まれたが、悟空は相変わらず知識だけでしか物事を知らない。

だから『結婚』を『大人の男と女が一緒になって暮らすこと』程度にしか理解していなかった。

しかしヒノカミも亡き祖父も、悟空にそれを望んでいるということだけは知っていた。

 

「……んじゃ結婚すっか」

 

「ホント!?」

 

「おぅ。ばあちゃんが言ってたから、オラたちがでっかくなってそん時にチチにまだその気があったらな」

 

「うんうん!待ってるだよ!

 あんまり遅かったらこっちから迎えにいくからな!」

 

だからあっさりと応じてしまった。

ヒノカミと悟飯が聞いていたら『違う、そうじゃない』とツッコミを入れていただろう。

 

 

フライパン山の一部が抉れてしまったため、彼らは住居を山のふもとに移すつもりだそうだ。

持っていた財宝も、少しずつ真っ当な使い道で減らしていくとのこと。

そしてヤムチャからもらった小さな車では次の目的地まで時間がかかるだろうからと、牛魔王からより性能の良い大きな車まで譲ってもらった。

これでボールは6つ。

悟空、ブルマ、ヒノカミ、ウーロンの4人は、遂に7つ目のボールを目指して旅立った。

 




ヒノカミの参戦により、余計なうっかりが色々と帳消しにされていきます。
あと現時点での悟空の身体能力は原作とほぼ変わらないんですが、原作より多少常識を知っていたり、苦手を克服していたりが差異となります。
体は十分鍛えてあるので頭を鍛える方を重視しました。
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