『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第13話

 

作戦会議に時間を使い襲撃を警戒しながら移動してきたため、悟空たちが敵の拠点と思われる場所に辿り着いた時にはもう夕方になっていた。

 

「でかいなー!」

 

「こら、大声出さないの!

 私たちは潜入しに来たんだからね!?」

 

「お前の声もでけぇよ……」

 

荒野の真ん中に立つ『いかにも』な怪しい宮殿。

悟空が見上げ、ブルマが咎め、ウーロンがそれをさらに咎め。

ヤムチャはここに来るまでの間にブルマに密着されグロッキーになり、プーアルは弱った彼を気遣っている。

 

「……あれ?ばあちゃんは?」

 

「え?あ、いねぇ!?」

 

「ちょっと、しーーーっ!

 潜入する前に隠れるって言ってたでしょ!?」

 

「だからお前も静かにしろって……。

 しかし、ホントにいつ消えたかわかんねぇな」

 

「ふーっ、ふーっ……ゴホン。

 とにかく、俺たちは俺たちで気を付けて進もう。

 敵はただ者じゃなさそうだ」

 

ようやく正気を取り戻したヤムチャの言葉に従い、5人は慎重に建物の中に潜入した。

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

「も……もう捕まりました」

 

「よくあんなアホらしい罠に引っかかったな……」

 

(それを仕掛けてみた貴様らも大概じゃと思うがな……)

 

地面に描いた矢印によって行き止まりに誘導され閉じ込められたなど、確かにアホではあるのだが。

 

捕まった悟空たちをモニター越しに見ていたのは3人。

小柄な男が『ピラフ』という自称『大王』でリーダー。

犬の獣人の『シュウ』と大人の女性の『マイ』がその部下。

他に気配はない。これが敵勢力の全員であるようだ。

 

(しかし予想以上に時間が無くなってしまったな……手早く仕留めるか?)

 

そういえばブルマは頭は良かったが、皆に負けず劣らずのポンコツだったと作戦の失敗を嘆くヒノカミ。

彼女はピラフたちと同じ部屋の天井に逆さに立ち、彼らに狙いを定める。

 

(……いや、念のためこの施設を調べておくか)

 

ピラフが部下にブルマの車にボールがないか調べるよう命じたので少し時間の猶予ができたこと。

そしておそらく碌でもないだろうが、まだピラフの願いが判らぬことから、ヒノカミはひとまずこの場を離れた。

自立機動兵器があれば厄介だと考えていたが人が操縦するタイプしかない。

これなら連中さえ無力化すれば解決できる。

ついでに危なそうなものは動かせないように細工もしておく。

しかしこの財力と技術力を、どうしてまともな方に使えないのか。嘆かわしいばかりだ。

 

数分で戻ってくると、ピラフが閉じ込めたブルマとモニター越しに会話をしていた。

ボールはブルマたちが持っていると気付き、自分たちに渡すよう要求していたようだ。

 

「どうしても渡さんつもりだな……?

 エッチなことするぞ!!」

 

そしてロボットアームに捕まえられたブルマがピラフたちの前に運ばれてくる。

 

「さぁ降参するなら今の内だぞ……?

 ドラゴンボールを渡せ!!」

 

「誰がアンタなんかに渡すもんですかっ!!」

 

「なるほど、そんなに恥ずかしい目に会いたいのか……では望み通りに……!」

 

「……!」

 

ピラフとやらが何をするつもりかは知らない。

奴の願いが何かもまだ聞いていない。

しかしこの行いによりヒノカミはピラフを完全に悪と断定した。

 

 

「くたばれゲスが」

 

「がっ!」

「ぎっ!?」

「ぐげごっ!?」

 

「……ヒノカミぃ~~~~っ!」

 

瞬時にピラフたち3人をぶちのめして気絶させ、取り出した石剣から炎の刃を出してブルマを捕えていたアームを細切れにして開放する。

 

「ありがと~~~~~っ!!

 もう何されるかと思っちゃった!」

 

「話はあとじゃ。悟空らと合流するぞ」

 

「うん!」

 

『……ちぇっ』

 

「聞こえたぞウーロン。

 後で覚えておけよ」

 

『ヒッ、ヒイィィッ!!』

 

ブルマのエッチなシーンが見られなかったと落胆し舌打ちしたウーロンだったが、ヒノカミが手を出さずとも彼の望みが叶うことはなかっただろう。

何しろピラフの言う『エッチなこと』とは『投げキッス』だったのだから。

 

ピラフが握っていた7つ目のドラゴンボールを掴み取り、悟空たちの気配を辿って彼らがいる場所へと直進する。

途中にあった壁や機械は全て炎の剣で切り裂いて。

ついでに目についた兵器を念入りに破壊しながら。

これで彼らが目を覚ましたとしてももうこちらには手出しできないだろう。

 

「お待たせ」

 

「おおっ!」

 

「やっぱすげぇなぁばあちゃんは。

 この壁、オラのパンチや蹴りでもビクともしなかったのに」

 

「……『ばあちゃん』?……女ぁ!?」

 

「今頃気付きおったかこやつは……」

 

「ヤムチャさまぁ……」

 

悟空たちを閉じ込めていた壁を溶断してヒノカミが現れる。

そのまま向かい側の壁も焼き斬り、外へ繋がる道を作り出した。

 

「ボールは奪われておらぬな?

 であればさっさと脱出じゃ」

 

「……だな!」

 

揃って建物の外に出たところで、ウーロンとプーアルが呟く。

 

「うぇっ、もう夜じゃねぇか」

 

「ホントだ、今日は綺麗な『満月』だね」

 

「……!!?」

 

その一言で何かに思い至ったヒノカミが慌てて振り返り叫ぶ。

 

「悟空、戻れ!!

 外を見るな!!」

 

「へ?」

 

「「「「へ?」」」」

 

しかし遅かった。

悟空はもう宮殿の外に出ていて、しかも夜空を見上げていた。

 

 

 

「……離れろぉ!!!」

 

「「「「うわぁっ!?」」」」

 

ヒノカミが左腕の帯を解いて悟空以外を掴み、そのまま全力で疾走する。

 

「ちょっと、どうしたのよ!?

 孫くん置いてきちゃったじゃない!」

 

「そうだぞ!おーい!ごくぅ……なんだアレ?」

 

「何かが……大きく……猿……!?」

 

「くっそぉ、失念していた!

 今日が満月じゃったか!!」

 

「おい、どういうことだ!?」

 

 

 

「『アレ』が悟空じゃ!

 あ奴は満月を見ると大猿の化け物に変身するんじゃ!!」

 

「「「「はぁーーーーーーーーっ!!!!??」」」」

 

 

 

『グオォォォーーーーーーーーーーーー!!!!!』

 

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