「……気付かれた!悟空がこっちを見ているぞ!!」
「あわ、あわわわわわ……!」
「ウーロン、スピード上げて!」
「とっくにアクセル全開だよチクショー!!」
車に乗って疾走する一行に、大猿が巨大な岩を投げつけてきた。
咄嗟にヒノカミが破壊したが残骸が彼らに降り注ぐ。
「プーアル!」
「ハイッ!!」
ロケットランチャーを受け取ったヤムチャが、車に直撃しそうだった大きな瓦礫に向けて引き金を引いた。
「うわっ、うわわっ!!」
「くっ、狼牙風風拳!
ホァターーーッ!!」
爆発で砕けた瓦礫の破片をウーロンが絶妙なテクニックで躱し、それでも躱しきれない破片をヤムチャが迎撃し粉砕する。
「ズレてる!もうちょっと右!」
「わぁってるよぉ!!」
「あと500メートル……!」
ブルマが凝視するドラゴンレーダーには、悟空が身に着けていた祖父の形見の四星球の座標が表示されていた。
彼が大猿に変身した際に、衣服と一緒に宮殿の瓦礫の中に放置されている。
「見えたっ!アレ!!」
「プーアル、頼む!!」
「ハイッ!おっきな虫取り網に、変化っ!!」
ウーロンが全速力でボールのすぐ隣を走り抜けるように操縦し、交錯する瞬間にヤムチャが網でボールを回収した。
「よし、取ったぞ!!」
「このまま走って!少しでも距離を!!」
宮殿の残骸を盾にするように迂回し大猿から離れようとするが。
ボンッ!!
「きゃっ!なに!?」
「オーバーヒートだ!爆発するぞ!?」
「掴まれーーーーっ!!」
ブルマたちを抱えたヤムチャが車から飛び降り、彼らを守るように下敷きになる。
そのまま突き進んだ車は直後に爆発し、その爆風からブルマらを庇うようにヤムチャが彼らごと半回転して体を盾にする。
「ぐぅ……っ」
「ヤムチャさま!」
「ひ、ひぃぃっ!」
「もうここで、やるしかない!」
ヤムチャが落とした四星球を掴む。
ヒノカミから返してもらったものが1つ。
彼女がピラフから回収したものが1つ。
そしてブルマが持っていたボールが4つ。
合わせて7つ。
「いでよ!神龍ーーーーーーーっ!!」
7つの球が光を放ち、稲妻が天へと昇る。
光はゆっくりと形を取り、やがて見上げるような巨大な龍となった。
「こ、これが……!」
「神龍……!!」
『さあ願いを言え。
どんな願いでも一つだけ叶えてやろう……』
ようやく出会えた。
僅か30日足らずの短い、しかし彼女の生涯において何よりも長く色濃く残ることになる冒険の末に。
「お、おいっ!悟空が来るぞ!
早く願いを!!」
「わかってるわよ!!」
状況を察したヒノカミが帯で縛り上げ引っ張っているが、大猿は彼女を無視してまで神龍に襲い掛かろうとしている。
『ステキな恋人がほしい』という願いを叶えるために始めた旅。
……だが今は、もっと叶えたい願いがある。
楽しかった旅を、楽しかった思い出にするために。
「孫くんを!大猿に変身できないようにしてちょうだーーーーい!!!」
『容易いことだ』
神龍の眼が光り、咆哮が大猿を襲う。
『ガッ!?グオォォォーーーーーッ!!?』
大猿は苦しむかのようなうめき声をあげ、少しずつ小さくなっていく。
そして大猿がいた場所には。
「……戻っ、た……?」
意識を失った悟空が、素っ裸で転がっていた。
『願いは叶えてやった。
では、さらばだ』
神龍は消え、7つの球は上空へと昇り、そして世界中に飛び散って行った。
「は……ははは。やったーーーーー!!」
「助かったー!ボクたち生きてるーー!!」
ウーロンとプーアルが抱き合って喜び。
「あ、あいたたたた……」
「っ!大丈夫!?」
「あ、あぁ……」
ヤムチャはブルマの差し伸べた手を取って立ち上がり。
「まったく……随分と無茶をしたもんじゃな」
「あはは……でもアンタに言われたくないわね。
何それ、ボロボロじゃない」
「お互いに、な」
鬼の鎧を消したヒノカミが寝息を立てる悟空を抱きかかえてやって来た。
まるで赤子を慈しむ母親のように。
「……すまなかった。
いや、ありがとう、かの」
「そーね、ここまで頑張って来たのが全部台無しになっちゃった。
……でもまぁ、月に一度のペースであの大猿に怯える日々よりマシじゃない?」
「ぷっははは!確かにそりゃそうだ。
まったく末恐ろしいお子様だぜ」
ドラゴンボールはどんな願いでも叶えてくれる。
『悟空が大猿に変身できないように』と願い、神龍がそれを『叶えた』と言った以上、もう悟空が変身して暴走する危険はないだろう。
そして次にボールが使えるようになるまでには、あと1年。
「……はぁーっ、でもステキな恋人は1年後までお預けかぁ~」
「そうだった……女性が苦手なまま、あと1年か。
これでは結婚どころかお付き合いさえいつになるのか……」
「……いい加減くっつけや貴様ら!!」
「「へ?」」
先ほど普通にブルマとヤムチャは触れ合っていた。
当人たちはそれを指摘されて、ようやく気付いた。
命がけの状況がショック療法になったのだろう。
吊り橋効果でもあるかもしれない。
「……お、朝か」
荒野に佇む彼らを太陽が照らす。
こうして彼らの初めての冒険は終わりを迎えた。