『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第16話 ヒノカミ

 

「そっかー……じいちゃんの形見、どっかに飛んでっちまったのか」

 

「仕方あるまい……大猿をやっつけるためだったんじゃからな。

 ホレ、ブルマに礼を言っておけ」

 

「うん!ありがとな、ブルマ!」

 

「……いいってことよ!」

 

目覚めた悟空は、案の定何も覚えてはいなかった。

なので以前から『満月の夜に現れる』と言い聞かせていた大猿の化け物が出現し暴れ出したため、ブルマが咄嗟にドラゴンボールに願って大猿を倒してもらったと説明した。

 

一度ドラゴンボールを使うと世界中に飛び散り、1年はただの石ころになってしまう。

本当はヒノカミは飛び散る直前に、悟飯の形見である四星球だけを回収するつもりだった。

しかし大猿との戦いで余裕がなく、見送るしかなかった。

 

「んじゃ、1年後にまた一緒にボール探しだな!」

 

「ううん、わたしたちはもういいわ。

 ドラゴンレーダーもアンタにあげる」

 

もはや彼らに願い事はなく、揃ってブルマの家がある西の都へと帰ることにしたようだ。

悟空とヒノカミもどうかと誘われたが、悟空はボール探しが終わったら亀仙人に弟子入りすると約束していた。

ヒノカミも気持ちは嬉しいがと申し出を断る。

彼女が人が多い場所を苦手としていると聞いていたブルマはあっさりと諦めた。

断られるとわかっていたがそれでも残念がった。

 

「じゃあな。

 武天老師に負けんような達人になれよ!」

 

ヤムチャが隠し持っていた小型飛行機のカプセルに乗り込み、ブルマたちは西の都へと飛び立っていった。

悟空とヒノカミは手を振ってそれを見送る。

 

「……さて、では儂らもパオズ山に帰るか。

 それとも悟空はこのまま亀仙人のもとへ行くか?」

 

「じいちゃんとこに世話になるんだし、布団くらい持ってこうかなって。

 ……あれ?ばあちゃんはこねぇんか?」

 

「あぁ。この旅でお主も立派に成長した。

 ……そろそろ独り立ちしてもいい頃じゃろ」

 

「そっか……そうだな!」

 

二人は揃って空を飛びパオズ山へ。

僅か一月足らずとは言え、人が離れれば家は荒れる。

悟空が食料を取ってくる間に家の掃除をして、食事を与えた後で送り出す。

食費として牛魔王からもらった財宝を全て持たせたので、亀仙人の懐への負担は少なくて済むはずだ。

 

「ばあちゃんはこれからどうすんだ?

 一人でここで暮らすんか?」

 

「いや、儂もここを離れるつもりじゃ。

 ……いい加減顔を出さんと怒られるじゃろうからな……」

 

「?よくわかんねぇけど、また会えるだろ?」

 

「当たり前じゃ。時折儂の方から顔を見せに行くわい。

 この家にも定期的に来て掃除しておくさ」

 

気配を察知する能力と転移能力を持つヒノカミならば、会いに行こうと思えばいつでも会いにいけるから。

 

「んじゃ、行ってくる!」

 

「くれぐれも失礼のないようにな」

 

筋斗雲に乗って飛び立っていった悟空を見送る。

 

「……さて」

 

しっかりと戸締りをしたヒノカミは、その場から姿を消した。

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

「……ただいま。『こっちの儂』では久しぶりじゃな」

 

「おかえりなさい」

 

一面に四角いタイルが敷き詰められた、円状の平らな地面。

いくつかの植木と小さな建物が一つあるだけで、他には何もない。

地面の向こうにも雲一つすら見えない。

当然だ。ここは雲よりも遥か上空に浮かぶ宮殿なのだから。

 

「……随分と長かったな」

 

「おぉ、ただいま戻りました。

 お待たせして申し訳ない」

 

宮殿から現れたもう一人の人間にも挨拶をする。

いや、ここには人間など一人もいない。

先ほど挨拶した黒い肌の男も、今目の前にいる緑の肌の老人も、そしてヒノカミ自身も。

 

「活躍は見ていたぞ。

 ふふふ……よもやあのような娘が身を挺して友を助けようとするとは。

 良い物が見れた……ドラゴンボールを作った甲斐もあったというものよ」

 

「おかげで儂もお役御免となりましたからな。

 ブルマには本当に感謝しかない。いつかこの恩を返さねば」

 

「また下界へ降りるつもりか?

 やれやれ……いい加減自覚を持ってもらいたいのだがな」

 

「かかか、だからこそちゃんと下界へは『儂』だけで向かい」

「『儂』はずっとこっちにおったではないですか」

 

そして宮殿の奥からもう一人の女性が現れる。

 

ヒノカミと同じ顔、同じ声。

しかしこちらの方が長身でスタイルが良く。

少しウェーブがかかった髪を腰まで伸ばし。

右肩に烏を乗せ、左腕に白蛇を巻きつけ。

炎でできた光輪を背負い。

天女のような真紅の服を纏う神秘的な女性が。

 

「ふん、『端末』を動かすために『本体』の動きがおろそかになるようでは不在と大差あるまい。

 隠居した老人を引っ張り出しおって」

 

「「……かかか、申し開きのしようもありませぬ」」

 

二人の女性が困ったように、全く同じ動きで頭を掻く。

 

彼女は『尾が生えた赤子を乗せた宇宙船』が地球に落下した瞬間から、ずっと彼を見守っていた。

孫悟飯という老人が彼を拾い、『孫悟空』という名を与えた時も。

満月を見た彼が初めて大猿となり、地球を脅かす存在だと知った時も。

それでも心優しい少年を受け入れるために、彼女は目の前の二人の反対を押し切って自身の『端末』を下界に降ろした。

そして少年を今日まで見守って来た。

 

「節度を守るならば細かくは言わぬが、『地球の神』としての役目はしっかり果たしてもらいたいものだな、ヒノカミよ」

 

「「わかっておりますとも、『先代』様」」

 




ヒノカミがこの世界に来たのは『ピッコロ大魔王が暴れまわった時代』、だいたい300年前です。
そこで活躍したことで見初められ修行を積んで、100年くらい前に『地球の神』の座を継ぎました。
当時は武泰斗と一緒に戦っており、彼の弟子だった亀仙人にも会っているんですがお互いに気付いてません。
この世界は『世界の強度』がとんでもなく強いので端末ではなく神霊で活動しており、青年だった亀仙人も老人になっているので仕方ないかと。

ここから物語が飛び飛びになります。
当初はがっつり関わらせてがっつり書こうとしていましたが、グダグダになりそうだったので断念しました。
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