『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第18話

 

第五試合、準決勝一戦目。クリリン対ジャッキー・チュンこと亀仙人。

これが師弟対決だと知っているのはヒノカミと亀仙人当人だけだ。

 

……というか、何故気付かないのだろうか。

カツラつけてサングラス外しただけなのに。

ブルマたちは何度か会ったくらいだから仕方ないが、クリリンと悟空は1年近くずっと一緒に暮らしていたはずだろう。

 

ここまで順調に勝ち進み、先ほど司会者からのインタビューにて『武天老師の弟子』と明かしたことで観客から持てはやされ自信を得たクリリンも、流石に武天老師本人が相手では太刀打ちできずにいる。

そして相手を自分以上の実力者と認めたクリリンは、もしもの時を考えて用意していた『とっておきの策』を使った。

 

「はいっ!」

 

「おぉーーーっ!!」

 

「かかったな!!」

 

クリリンが懐から取り出しジャッキー・チュンに投げつけたのは『ギャルのぱんてぃ』。

これに気を取られた敵の隙を突き場外まで蹴り飛ばすという作戦である。

 

(師が師なら、弟子も弟子か!!)

 

何故効くと思った。そして何故効いた。

貴様たちは、真の武闘家たちが誇りをかけて戦う天下一武道会をなんと心得る。

頼むからそのまま無様に場外負けしてくれと、ヒノカミは神に祈った。自分が神様なんだけど。

 

「か~め~は~め~波ーーー!!」

 

しかしジャッキー・チュンはかめはめ波を推進力にして空を飛ぶという荒業で、舞台の上まで戻ってきてしまった。残念。

奥の手も通じず破れかぶれになったクリリンが残像拳に引っかかり、延髄に一撃を喰らい気絶。テンカウント負けとなった。

 

(……気付けーーーー!

 ここまでヒントあって何故誰も気付かぬかーーー!!!)

 

『かめはめ波を使えるのは武天老師ただ一人』。

実際には違うが、司会者がそう言っているではないか。

ならば何故『武天老師=ジャッキー・チュン』の図式に思い至らない。これだけ人がいるのに。

力の限り叫びたいが、亀仙人に『黙っている』と約束してしまった。

約束は、破れない。

 

第六試合、準決勝二戦目。悟空対ナム。

……真面目に武道の試合やってたのはナムとヤムチャくらいだった気がする。天下一武道会なのに。

悟空は本人は真面目にやっているつもりのようだが、戦いを楽しむ感覚が強すぎるのと尻尾を使った独特な戦法があるので除外とする。

 

常人離れした跳躍力からの急降下で放たれる『天空×(ペケ)字拳』は確かに悟空に突き刺さったが、彼の頑強さと同等以上の跳躍力を見誤ったナムの負けだ。

どうやら彼には何としても賞金を持ち帰らねばならない事情があったようだが、会場から立ち去る彼の表情が晴れていたので解決したのだろう。

 

 

『ではただいまより天下一武道会決勝戦を行いまーーーーーす!!』

 

「手加減ナシじゃぞ」

 

「オラだって」

 

『決勝戦はじめーーーーーっ!!!』

 

ぶつかり合う両雄。

身体能力はおそらく互角か、もしかすると悟空の方が少し上。

互いに打ち合ったかめはめ波も相殺された。

 

しかし亀仙人の本当の強さは純粋な力ではない。

長年の経験に裏打ちされた戦闘感と技術力にある。

 

多重残像拳、酔拳、……よいこ眠眠拳。

最後のは武術というか妖術寄りだが、多彩な技を繰り出し悟空を苦しめる。

しかし悟空も技を真似し、意表を突き、眠気より食い気の精神で乗り切っていく。

 

「……のぅブルマ、観客が手出しするのは反則ではないのか?」

 

「何よ、孫くんが負けてもいいっての!?

 それに『手』出しじゃなくて『口』出しだもん!」

 

『ご飯の時間よ』。

ブルマの咄嗟の叫びが無ければテンカウントで勝負は決まっていただろう。

 

(いや……ここで負けておいた方が良かったのかもしれんな)

 

ヒノカミはジャッキー……亀仙人の眼を見て感じ取った。

……本気になったようだ。

 

手を抜いていた……と言うのは語弊があるが、彼にはまだこれ以上の技がある。

それを使わなかったのはなぜか。

観客と、対戦相手である悟空の身を気遣っていたからだ。

 

(……いざとなれば、任せろ)

 

亀仙人がちらりとこちらを見たので、頷いて応える。

彼にはヒノカミの持つ能力を粗方説明している。

……その中には『癒しの炎』があることも知っている。

 

「儂にこの技を出させたのは生涯たった一人しかおらんかった……お主は二人目じゃ。

 一人目は孫悟飯……つまりお前のじいちゃんじゃった……」

 

「えっ!?じいちゃんと戦ったことがあるんかっ!?」

 

「……ふんっ!!!」

 

亀仙人が勢いよく両の掌を叩きつける。

やがて彼の両手から光が溢れ出す。

 

体内に流れる生体電流を増幅して両手に集中させ、相手に向けて放電する『必殺』技。

 

 

 

「『萬國驚天掌(ばんこくびっくりしょう)』ーーーーーーーっ!!!!」

 

 

 

「ぎゃああああああああっ!!!」

 

雷を受け空中に持ち上げられた悟空は、動きを封じられたまま悲鳴を上げ続ける。

技を使っている間は使用者も動けないという欠点はあるが、高い拘束力と『殺傷力』を持つ、まさに『必殺』の技。

 

「『まいった』と言ぇいっ!!

 早く言わんと死んでしまうぞ!!」

 

「や……やだよっ!

 オラまいっちゃいねぇっ!!」

 

「こ、こいつめっ!強情を張ると本当に死んでしまうぞっ!!」

 

「おぎゃぎゃーーーーーーっ!!」

 

 

 

「……悟空!!」

 

悟空に向けて気合と共に大声を放つヒノカミに、会場中の視線が集中する。

 

「ば……ばあちゃ……」

 

 

 

「お前の負けじゃ」

 

 

 

「「「!!?」」」

 

「ちょっと、何言ってんのよ!?」

 

「『殺さないように手加減されていた』。それが全てじゃ」

 

「っ!?…………まいっ、た!」

 

『!?孫悟空選手、降参!

 優勝はジャッキー・チュン選手ーーーーーー!!!!』

 

司会者の宣言と同時に亀仙人が技を解き、落下する悟空をヒノカミの帯でできた白い網が受け止める。

 

「よく耐えた……孫悟飯もこれほどには耐えられんかった……」

 

「なぁ、オラがもっと修行して強くなったら、もいっぺん戦ってくれるか?」

 

「……次の天下一武道会でな」

 

「うん!」

 

『惜しくも敗れた孫選手に惜しみない拍手をお送りください!

 まったく、よく戦いました!!』

 

会場全体に観客たちの拍手と歓声が溢れた。

 




大猿変化が無くなっているため、この時点で決着となります。
原作でも月を破壊するほどのかめはめ波を使い消耗した亀仙人と互角の勝負をしたことから、明らかにこの時点では悟空の方が弱いと考えています。
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