(……水面?)
泳ぎ続けて暫く、ここはまだ海面には程遠いはずだが途中で海が途切れている。
(なるほど、洞窟の中に空気が溜まっておるのか)
悟空たちと乗って来た潜水艇の底が見える。
ヒノカミは水から出た後水面に立つ。
「出てきてよいぞ」
「ばあちゃん!」
「ど、どうなった!?」
「氷漬けにして閉じ込めてやったわ。
もう追ってくることはできまい」
悟空たちが周辺に隠れていたことは気付いていたので声をかける。
安堵してブルマも岩陰から出てきた。
「よかったぁ~~……ってそれじゃわたしたちも出られないんじゃないの!?」
「あ?あー……」
自分ひとりなら転移でどこにでもいけるものだから、脱出経路という考えが頭から抜け落ちていた。
「……大丈夫じゃ。最悪の場合は、なんとかする」
「アンタは嘘言わないから信じるけど……ホントでしょうね?」
「誓ってな」
幾つか手段はあるが、確実なのは本体から一時的に力の供給を受けて彼ら4人も連れて転移することだろうか。
神としての権能で下界に干渉するのは不味いので、本当に最後の手段にしたいところだが。
念のため潜水艇をカプセルに戻し、この水面も熱を奪って氷漬けにしておく。
「……っていうか孫くん!
レッドリボン軍に追われてるなんて聞いてないわよ!?」
「危ねぇっつったじゃんか」
「落ち着けブルマ。
……しかしこれで、ボール探しは他人事ではなくなったな……」
「「へ?」」
「レッドリボン軍が神龍に何を願うと思う?」
「「あ……」」
世界中で悪逆の限りを尽くす集団だ。
『世界征服』などと言い出してもおかしくない。
むしろそれが一番可能性が高い。
「そっか……そういう意味じゃ、むしろ孫くんに感謝しなくちゃいけないわね……」
「だな。悟空がボール探ししてなかったら、オレたちが知らない内にアイツらがボールを揃えて願いを叶えてたかもしれないんだし」
とにかく連中は規模と人数が尋常ではない。世界中に支部があり構成員がいる。
レーダーも持っているようだし、放っておけば暴力と人海戦術を駆使して世界中のボールを集めてしまうだろう。
「よくわかんねぇけどさぁ、先進もうぜ?」
「お前が一番の当事者だろ!?」
「でもたしかに今ここで話してても仕方ないわ。
いつまでもこんなところにいたくないし、先に行きましょ?」
洞窟は長い長い一本道のようだ。
暗くて道が良く見えない。
光源は彼らの前を先導する人魂のような小さな炎しかないので、一歩一歩慎重に進む。
「もうちょっと炎を大きくできませんか?」
「できるが、この洞窟の規模がわからぬ内は我慢せい。
無駄に酸素を消費して酸欠になりたくはあるまい?」
「そうだけどさぁ……ん?
ねぇ、もうちょっと上を照らしてくれない?」
「ん?……ん!?」
炎を上に浮かべていくと、天井の違和感に気付いた。
「あれは……電燈か!?」
「な、なんでこんな洞窟に!?」
「電線が伸びてる……これね!?」
壁に埋め込まれたスイッチを見つけて押すと、洞窟の天井に光が灯る。
「電気も生きておるじゃと……!?」
「なぁばあちゃん、これこれ」
「ぬ!?」
「「……うわぁっ!?」」
悟空が見つけたのは白骨化した死体。
しかし問題は、それが身に着けている服の残骸。
髑髏を描いた立派な帽子は、どう見ても……。
「……わかった!さっき言っただろ!?
大昔の海賊の宝がこの辺りのどこかに隠してあるはずだって!
ここがそうだよ!!」
「なるほど……ここなら滅多に見つかりっこないわ!」
「まさかこんなところにあったなんて……大発見だ!!」
「喜んどるところ悪いが、ボールと脱出経路を先に見つけてからな」
「「うっ」」
「オラ宝物よりごちそうの方がいいなぁ……」
「宝物をお金に換えたら、ごちそうがたくさん買えるんじゃよ」
「そっか!よし、オラもやる気出てきた!」
しばらく進むと、整備された道になった。
床一面ボタンが敷き詰められ、踏むと槍が襲ってくるという道になっていた。
ヒノカミに槍なんか刺さらないので一人なら普通に進めるが、彼女以外は悟空ですら無理だ。
「……あった!多分、これね!」
「……隠し通路!?」
「でなきゃ海賊も通れないもの」
「しかしこの分では他の罠が生きている可能性も高いな」
周辺への警戒を最大限にし、戦えないブルマを庇う形で慎重に進む。
さらにもう少し進むと、開けた場所に出た。
港のようだ。巨大な潜水艦も繋がれている。
「これで他に出口があるのは確実ね」
「え?なんで?」
「昔はカプセルなんて無かったもの。
小さくして運んだりできないじゃない。
つまり、この港を潜って行けば海のどこかに出るんだわ」
「なるほどねぇー……」
「お主ら、止まれ。
……家主が門番を残していたようじゃ」
「「へ?」」
「あそこだ!!」
悟空が指さした方から向かってきたのは、おそらく海賊が残したセキュリティロボット。
人間よりも一回り大きく、右腕に剣を持ち、左腕は銃と一体化している。
ホバーか何かで地面を滑るように移動してくる。
「あぶねぇっ!」
悟空がブルマを掴み、クリリンもその場を飛びのいた。
しかしヒノカミは動かず。
「脆いの」
振り下ろしてきた剣の刀身を炎の剣で斬り落とし。
「ふん」
こちらに向けた左手の銃を暴発させ。
「遅い」
すれ違うように移動したかと思うと、ロボットを細切れにしていた。
転がった残骸が地面に散らばり、少し遅れて爆発する。
「つ……強い……!」
「さっすがぁ!」
「……喜ぶ暇はなさそうじゃ。
相当老朽化していたらしいな……」
「「「へ?」」」
今のロボットの爆発の衝撃がこの洞窟全体に伝播したようだ。
壁や天井の至る所にヒビが走る。
「ちぃっ」
再び仮面を被ったヒノカミは地面に手を添え、この洞窟全体を一気に凍結させる。
氷におおわれて一時的に崩壊が止まった。
「うわわっ!?すげぇっ!」
「しかし応急処置じゃ。あまり時間の余裕はない、走るぞ」
「うん!ボールは多分この先よ!!」
「……はっくしょぃ!!さみぃ~っ!」
港を超え、奥へ奥へと走る。
分かれ道を超えた先には井戸があった。
そして中の水も凍ってしまっている。
「潜らなきゃ進めないの!?」
「ちっ、なんもかんも凍らせたのは失敗じゃったか。
儂についてこい」
吸い込んでいた熱を体の表面に纏って飛び降りると、ヒノカミが触れた部分の氷が溶けて道ができる。
通り過ぎると同時に再び凍らせて、氷の階段や梯子を作りながら先へと進んでいく。
「器用ですね……冷たいのはちょっと辛いけど」
「我慢せい。横穴……更に奥か」
氷のトンネルを抜けた先には更に空洞があった。
そして中央には巨大な宝箱。
「あったーーーーっ!!」
「開けてみようぜ!」
「なぁボールは?」
「あっちの水たまりの底みたいね……氷漬けだけど」
「儂と悟空で取りに行く。
ブルマはその宝箱をカプセルに入れておけ」
「空きのカプセルは……あった!」
先ほどと同様に氷を溶かして進み、レーダーを頼りにボールを探す。
岩の下に潜り込んでいたのでこれを回収、残念ながら悟飯の形見の四星球ではなかった。
「宝は回収したわっ!急ぎましょ!」
港まで戻りカプセルから潜水艇を出そうとしたが、今はこの港の水も全部氷漬けになっていた。
「氷を溶かすと再び洞窟の崩壊が始まるじゃろう。準備はいいか?」
「この港が海に通じてなかったら、わたしたちもアウトね……」
「その時は儂が切り開いてやるわい……行くぞ!」
ヒノカミが海面に手を当てると、一気に氷が解けていく。
そして洞窟全体が再び揺れ始める。
4人は即座に潜水艇に乗り込み、暗い洞窟の中を進んでいく。
幸いにも道が途切れているということはなく、潜水艇は見事海へと脱出。
彼らが脱出した直後、洞窟は完全に崩れ落ちた。
グダグダになってしまいましたが、初めてドラゴンボールを読んだときにこの話が特に記憶に残っていたので、あまり飛ばさず書くことにしました。
ご了承ください。