レッドリボン軍の本拠地、その遥か上空。
眼下では今も非常に厳しい警戒網が引かれているが、侵入者を警戒するような動きではない。
流石にこの高さに浮かんでいる人間を察知できてはいないようだ。
「体調に問題ないか?」
「はは、思ったより快適ですよ」
「結構揺れるが、俺たちだって鍛えてるからな。
これくらいじゃ音を上げないさ」
悟空が筋斗雲に乗り、ヒノカミが宙に立っている。
彼女の左腕から伸びた帯が毬のような網籠を作り上げ、亀仙人たちはその中だ。
帯を通して内側の熱を制御しているため、高高度だが温度は平地と大差ない。
「あまり時間をかけるとワシの家に進軍してくるやもしれぬ。
早速突入するぞ。
まず悟空が筋斗雲で飛び込み先陣を切れ」
「おっし、突撃ーーーー!!」
「それに続く形でワシらが……ってこれ悟空!
やれやれ、行ってしもうたわい……」
「仕方ない、我らも降りるぞ」
亀仙人が作戦を説明している途中で、悟空は急降下し突っ込んでしまった。
ヒノカミも滞空を止め網籠を維持したままそれに続く。
眼下では悟空に気付いた飛行機が次々に彼に銃撃を放つが、悟空はそれを躱し、如意棒で次々と撃墜している。
「そこと、そこと……そこかっ!!」
自軍の飛行機が全て落とされたことで対空砲も激しく動き始めた。
しかしおかげでヒノカミが容易に捕捉でき、下降しながら遠隔操作で全て暴発させる。
直前に減速し着地、帯を解き亀仙人たちを外に出した。
「被害はないか?」
「大丈夫です!悟空は!?」
「中枢に突っ込んで行きおった。ワシらも追うぞ!」
どうやら亀ハウスでの事前の作戦会議にて、悟空は作戦の詳細まで理解していなかったようだ。
仕方なく残る4人で一丸となって走る。
悟空以外の侵入者に気付いた兵士たちがこちらに銃口を向け引き金を引くが。
「うわぁっ!?」
「ぐっ!なんだぁ!?」
彼らに掌を向けたヒノカミが全て暴発させる。
「銃が無きゃ、お前らなんて怖くないや!」
「うぉぉぉぉっ!!」
クリリンとヤムチャが隙だらけの兵士を次々と叩きのめしていく。
「下がれぃ!波ーーーーーーっ!!」
そして亀仙人がかめはめ波を、薙ぎ払うように放射する。
エネルギーが通り過ぎた一角は瓦礫の山と化していた。
「やっぱり武天老師さまは凄いや!!」
「ヒノカミ、悟空はどっちじゃ!?」
「ほぼ真っすぐ進んでおる」
「よし、我らは可能な限り破壊活動を広げながら進み、敵の注意を惹く!
悟空に集中する戦力を減らすのじゃ!」
「「「了解!!」」」
亀仙人がかめはめ波を次々と放ち、ヒノカミが目についた兵器をしらみつぶしに爆破していく。
二人を止めようと接近する兵士はヤムチャとクリリンが迎え撃つ。
流石に全員無傷とはいかなかったが、ヒノカミが都度治療するので問題はない。
「なんだ?敵が……逃げる?」
「身一つなら見逃せ。しかし兵器を持ちださせてはならん!
決して再起せぬよう破壊するのじゃ!」
「飛行機は儂に任せろ!主らは地上を!」
「もう危険はなさそうだ、オレたちも分担しよう!」
「はい!」
やがて敗色濃厚と悟った兵士たちが我先にと基地から逃げ出そうとするが、禍根を残すわけにはいかない。
4人は彼らを追撃し、少しでも戦力を減らそうとする。
しかし悟空が突入している塔の頂上から響いた音で、全員が一斉にそちらを見上げた。
「「悟空!?」」
「ぐうう……」
塔から弾き飛ばされたらしい悟空に駆け寄る。
「どうした!?無事か!?」
「なんじゃあのロボは!?」
塔の天井を壊してえらくずんぐりむっくりなロボットが飛び出してくる。
そして左手を悟空とその傍に集まるヒノカミたちに向け、先端から熱線を放った。
『ウォォォォォ!!』
『なにぃっ!?』
しかしヒノカミが一歩前に出て仮面を被る。
ただの熱線などヒノカミにとっては攻撃ではなく餌でしかない。
パイロットらしき男の驚愕の声が響いた。
「あれは……総帥のレッドではない?
確か側近のブラック……」
「でもあいつが親分だっつってたぞ?」
「ではレッドも逃走したのか?」
事実はそうではなく、レッドはブラックに粛清されていた。
ブラックは『世界征服のため』と信じ、ドラゴンボールを集めるために多額の資金と兵士の命をつぎ込んでいたが、レッド総帥の願いは『背を伸ばすこと』。
それを聞かされればブラックでなくとも同じ対応を取っただろう。
「何にせよ、機械の兵器なら恐れるに足りぬ。
さっさと爆破して……」
「待ってくればあちゃん!オラにやらせてくれ!」
頭上に掌を伸ばしたヒノカミを、悟空が止める。
「あんにゃろ、オラに『一緒に世界征服しよう』なんて言ってきたんだ!
オラがこの手でぶん殴ってやんなきゃ気がすまねぇ!」
「……よかろう。
連中との戦いを始めたのはお前じゃ。ケリはお前がつけい。
ただし、死ぬなよ?」
「わかってる!筋斗雲ーっ!」
雲に飛び乗った悟空が上空のロボットへと突撃していく。
あのロボットも中々の戦闘力のようだが、悟空の素早さに翻弄され傷ついていく。
「……アイツ、強くなったなぁ……」
「今やこのワシより強いかもしれんな……」
「えーっ!?そんなにですか!?」
「ちょっと前まではほとんど互角だったのになぁ……」
追い詰められたロボットは遥か上空まで飛翔した。
空中で逆立ちになり、その背中には。
「……ミサイルか!」
「「「げげっ!?」」」
「赫灼熱拳、ジェットバーン!!」
ヒノカミは両足から炎を噴き出して飛び出し、悟空を追い抜き、発射されたミサイルに接近する。
「ふんっ!」
激突の直前で掌を叩く。
着弾していれば基地ごと跡形もなく消し飛んでいただろう爆発が、ヒノカミを包んだ。
「ばあちゃん!」
爆風に煽られ筋斗雲ごと吹き飛ばされた悟空が叫ぶが、爆炎はすぐに中央に収束していく。
煙が晴れた後にいたのは、無傷のヒノカミだ。
「……さすがばあちゃん!」
「感心しとる場合か!
奴が逃げるぞ!追え!」
「うんっ!」
打つ手なしと背を向けて逃げ出すロボットを、背後から悟空が貫く。
やがてロボットは大爆発、残骸が落下していく。
あの高さではたとえ爆発で生きていたとしても助かるまい。
レッドリボン軍は、ここに消滅した。
「お待たせ!」
「ボールはどうした?」
「あの建物の中。ちょっと取ってくる!」
二つのボールを回収した悟空は亀仙人たちと合流。
5人は亀ハウスへと凱旋した。