『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第27話

 

三人目の相手ミイラくんは色物気味だった二人目までと違い、真っ当かつ堅実な実力者だった。

善戦したがヤムチャでは敵わず、追い詰められ降参した。

 

しかし遥かに成長した悟空の敵ではなかった。

 

「まさかミイラくんどころかアックマンすら一蹴するとは……。

 なるほど、あの方に見初められるわけじゃ……」

 

「あの方?」

 

「何でもないわい。

 さていよいよ5人目じゃ。出番が来たぞよ」

 

「はいはいはい……と」

 

そして出てきたのは、先ほどヒノカミと占いババの会話に割り込んだ老人だった。

しかしその顔を陳腐な狐のお面で隠している。

 

「やあ」

 

「……え?

 ……や、やぁ?」

 

あまりに気安い挨拶に悟空も気が抜けてしまい、ヒノカミ以外の観客たちも困惑している。

先ほどまでの対戦相手の二人と比べて、あまりに威厳も威圧感も無さすぎる。

 

舞台の上で向かい合う二人。

悟空は目の前で老人が一礼をしたものだから、困惑しながら構えを解いて、同様に礼をする。

 

「ほぅ、感心感心」

 

「試合、はじめぃっ!」

 

改めて構えて向き合い、悟空はようやく相手が並外れた達人であることに気付いたようだ。

 

「こい!」

 

「うん!」

 

ぶつかり合う二人の応酬は亀仙人ですらまともに眼に追えぬ速さ。

自分を超えたと思えた悟空と、ほぼ互角に渡り合っている。

ヤムチャとクリリンなどは呆然としている。

彼らの中で唯一冷静なのはヒノカミくらいだ。

 

「ほぉ……『あっち』でもそれなりに修行を積んでいたらしいな。

 まさか今の悟空に食い下がるとは」

 

「えっ!?アンタあのおじいちゃんが誰か知ってんの!?」

 

試合に集中している悟空には聞こえていないようだ。

もうネタ晴らしをしてもいいだろう。

 

「あぁ、だが儂だけでない。

 亀仙人も知っているはずじゃ」

 

「ぬな!?いやどこかで会ったような気はするのじゃが……」

 

「あ奴の頭の上、アレで気付かぬか?」

 

「頭の上?なんか変な輪っかが浮いてますが……」

 

「輪っか……?」

 

悟空に攻撃を正面から受け止められ動きを止めた老人に、亀仙人たちの視線が集中する。

そこで彼は両手を前に突き出した。

 

 

「『か』『め』」

 

 

「へ!?」

 

「ま、まさか……!?」

 

「そんな……うそだろ……!?」

 

「『は』『め』」

 

「えっ!?ほんと!?」

 

悟空すらも驚きで動きを止めてしまう。

それこそがこの老人の狙いだった。

 

 

 

「『波』!!!」

 

 

 

彼の両手からエネルギーが放出された。

それは間違いなく亀仙人が編み出し、公では彼以外に使えぬとされている『かめはめ波』。

悟空はそれを残像拳で躱し、上空にジャンプしていた。

 

身動きのとれぬ空中に逃げたのは失敗だと、老人はもう一度かめはめ波を使い撃ち落とそうとする。

しかし今度は悟空がかめはめ波を使い、逆に老人が驚かされ、吹き飛ばされ追撃を受け倒れこむ。

 

「ねぇ、まいった?」

 

「……ふんっ!」

 

「!?こんにゃろ!」

 

「ぬぉぅっ!?」

 

老人は近づいた悟空の尻尾を握るが、悟空は逆にその尻尾を振り回して老人を振り回した。

地面に叩きつけられ手を放した老人は、今度こそ観念したようだ。

 

「あいたたた……どうやらちゃんと言いつけを守っておったようじゃな……」

 

「?」

 

尻尾を握られると力が抜けるというかつての悟空の弱点。

それを知る者は当人とヒノカミしかしない。

生きている者の中では。

 

 

「まいった。ワシの負けじゃ」

 

 

「へ?」

 

老人はあっさりと敗北を宣言した。

 

「かかか、どうじゃ。

 悟空は強うなったじゃろ?」

 

「えぇまったく。本当によく導いてくださった」

 

「いや、戦いを教えたのは亀仙人じゃよ」

 

「ふっふっふ、そういうことじゃったか……久しいの、『悟飯』」

 

 

「「「へ?」」」

 

 

起き上がって悟空を向いた老人は、お面を取る。

 

「……じ……じいちゃーーーーーーん!!

 

「はっはっは!

 わったった、これっ!」

 

涙を流して飛び出した悟空は顔にしがみつき、悟飯は思わずすっ転びそうになっていた。

しかし何とか踏みとどまって引き剥がし、泣きじゃくる悟空を必死にあやす。

 

「孫くんのじいちゃんって……死んだって言ってたわよね!?」

 

「占いババはあの世とこの世を自在に行き来できる。

 1日だけという条件で、死者を現世に呼び戻すことができるんじゃ」

 

そうやって武術の達人をあの世からスカウトし、試合に参加してもらっている。

悟飯も同様に勧誘されたが『悟空ならば立派な武闘家となりいつか必ず占いババの元を訪れるはず』と信じ、今日と言う日を待っていた。

 

「……オババよ、占いを頼む。

 最後のドラゴンボールの在処を教えてくれ。

 儂が取りにいく」

 

今は少しでも長く、悟空と悟飯を共にいさせてやりたかった。

 

「では……ほいほいほいの、ほいさっさー!」

 

占いババが水晶に手をかざすと、中に映像が映し出された。

 

「この車の中じゃな。動いておる」

 

「車……?じゃあなんでレーダーに映らないのかしら……」

 

てっきり巨大動物が飲み込んだと思っていたが、普通の大きさの車だった。

精々大型犬が乗れるかどうかというサイズ。

そして犬が飲み込むにはボールは大きすぎる。

 

「この車の乗員は映せぬか?」

 

「ふむ……これでどうじゃ?」

 

「「「あ!」」」

 

ブルマとヤムチャとプーアルが、助手席に乗っている小柄な男を見て揃って声を上げる。

 

「ピラフ……!」

 

「ブルマさんたち、知ってるんですか?」

 

「忘れやしないわ。1年前にわたしたちが集めたボールを掠め取ろうとした悪人よ!」

 

「あの崩壊に巻き込まれて生きていたのか……!」

 

「あの時は儂らも余裕が無かったからな……すっかり忘れていたわい。

 今連中はどこに?」

 

「この方角、200キロほどからこちらに向かっておる」

 

「あい分かった。ちと懲らしめて、すぐに戻る」

 

「オレたちもついていきたいところだが……」

 

「アンタなら一瞬だもんね。

 わたしたちの分までぶん殴っといて!」

 

「任せておけ」

 

声援を受けたヒノカミは姿を消した。

 




原作でも最凶の技として名高い『アクマイト光線』。
狭い『悪魔の便所』でもなければ命中するのも苦労するし、わざわざ当たる悟空とは思えません。
よってアックマンが使わなかったか悟空が避けたか。
ヒノカミに怒られた占いババが『絶対に殺すな』と厳命したかのいずれかということにしてください。
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