『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第29話

 

「みなさんもいずれあの世でお会いしましょう」

 

「……あの世で、ね」

 

「では、ごきげんよう」

 

ヒノカミが戻って暫く。

まだ時間は残されているはずだが、満足したからと孫悟飯はあの世へと戻って行った。

 

「……じいちゃん!

 オラもっともっと強くなるからな!」

 

「それ以上強うなったらワシの立場はどうなるんじゃ……」

 

「かかか、師匠面したいなら弟子に負けぬよう頑張れということじゃな」

 

決意を新たにする悟空。

……というかそろそろ、端末のヒノカミも追い抜かれそうな気がする。

本体の方ならまだまだ負けないが。

 

(……本気で『(本体)』のとこまで来るかもしれんな……)

 

第一関門であるカリン塔は制覇した。

如意棒も持っている。

何らかの形で神の話を聞く機会があれば、あとは神殿まで昇ってくるだけだ。

 

(微妙に気恥ずかしいが……期待して待っとくか)

 

悟空が亀ハウスにブルマと亀仙人を呼びに来た時に、預かっていたドラゴンボールも一緒に持ってきていた。

先ほどピラフから没収した物と併せて遂に7つ。

悟空はウパと共にカリン塔のふもとへと飛んで行った。

そこで神龍を呼び出し、彼の父を生き返らせるそうだ。

クリリンは神龍を見て見たかったようだが、筋斗雲に乗れないのでお留守番である。

 

「……そういえばクリリンは、なぜブルマと亀仙人を連れてくるように言ったんじゃ?」

 

「あ、そうだった。ねぇなんでよ?」

 

「え!?え……と……あは、アハハハ!」

 

言えるはずがない。

ブルマを使って亀仙人に鼻血を噴出させ、それを透明人間に浴びせることで姿が見えるようにしようと考えたなど。

そんなことだから筋斗雲に乗れないのだが。

 

「……ま、あまり人として恥ずかしい行いはせんようにな」

 

「ギクッ!?」

 

「ちょっと何させようとしてたのよ!?

 ……って、あら?」

 

「空が暗く……悟空が神龍を呼び出したみたいだな」

 

そしてしばらくするとまた空が明るくなり、悟空が戻って来た。

 

「どうだった?アイツのオヤジはちゃんと生き返ったか?」

 

「あぁ!

 そうだ、ばあちゃん!成功したぞ!」

 

「ん、よし。これで一安心じゃな」

 

悟空が掲げて見せつけたのは丸い石。

ドラゴンボールの一つ、悟飯の形見である四星球が変化したものだ。

以前神龍を呼び出した後、本当はヒノカミが世界に飛び散る前に回収しようとしていたと聞き、自分も挑戦してみようと考えたわけだ。

1年経つとまたボールに変化するので、それまでの間にブルマにピラフから回収したケースを解析してもらい、四星球を納めるための箱を作り出してもらう予定だ。

ピラフにレッドリボン軍にと、ボールを狙う悪党が増えすぎた。

どちらも懲らしめたが、これからも続く者が出てくる可能性は高い。

一つを悟空に管理してもらう方が安全だろう。

 

「だったらもうボール探しはしなくていいってことか」

 

「あぁ。また次の天下一武道会を目指して修行だな」

 

「そのことだが、オレも武天老師さまの下で修業をさせてもらえることになったんだ!」

 

「ほんとかっ!?」

 

ヤムチャは確かに強いが、武術は我流だ。

それであれだけの実力を持っていることも驚きだが。

亀仙人の下で基礎から見直せば更に伸びるだろう。

 

「もうウチと亀仙人さんのところは行き来自由だし。

 ……でもスケベはうつされないでよね!?」

 

「こいついちいちスケベスケベと……」

 

「じゃあみーんな一緒に修行だ!」

 

「お前は別じゃよ」

 

「え?」

 

諸手を挙げて喜ぶ悟空を、亀仙人が厳しく突き放す。

 

「これ以上ワシの下で修業を受けてもしょうがないわい。

 それよりもっと色々な世界に行って沢山のことを学んで来い!」

 

「……ようわからんけど面白そうだな!」

 

「面白くなどないさ」

 

拍子抜けしそうになった亀仙人を押しのけて、ヒノカミが割り込んだ。

 

「世界は綺麗なだけではない。汚いもので溢れている。

 つらいこと、苦しいこと、面倒なこと、許せないこと。

 お前はそれを知らねばならん」

 

「うへぇ~……なんか嫌だなぁ」

 

「どれだけ嫌でも、目を背けても、それらは確かに存在している。

 色々なものを見て、聞いて、触れて。

 そして『どうするべきか』を自分で考え自分で決める。

 それが『大人』への第一歩じゃ」

 

「大人?」

 

「そうじゃ。

 それはいずれ、お前も『誰かを教え導く立場になる』ということじゃ。

 ……儂や亀仙人や、悟飯殿のようにな」

 

「……」

 

視線を落として自分の手を見つめる。

先ほどまでこの手を掴んでくれていた悟飯の手よりもずっと小さくて、綺麗で、頼りない手だった。

 

「……わかった。やってみる」

 

「ん、よし」

 

(せ、せっかくワシがビシっと決めようとしとったのに……)

 

(下らん見栄を張ろうとしとるお前とヒノカミ殿では言葉の重みが違うわ、バカタレめ)

 

悟空の返事に満足したヒノカミの後ろで、亀仙人と占いババがコソコソ言い合っている。

彼女の歩んできた道のりの僅かでも知っていれば張り合おうなどとは思わぬだろうにと、占いババは呆れていた。

 

「では、次の天下一武道会でまた会おう」

 

「えぇっ!?じゃあ次に悟空に会うのは5年後ですかっ!?」

 

「いや、参加選手の増加で今度から3年になったそうじゃ」

 

「それでも3年後か……どっちにしろ長いこと会えないな」

 

「まぁ頑なに会わないことに拘らずともよいだろう。

 世界は広いようで狭いもの。

 旅先で近くにいれば儂の方から顔を出そう」

 

「そうよね。西の都の近くに来たら絶対に立ち寄りなさいよ?」

 

「その時は亀ハウスにも寄れよ?

 直接こっちにでもいいからさ」

 

「うん!」

 

早速旅立とうとする悟空に、亀仙人は『筋斗雲の使用禁止』を命じる。

歩き、走り、泳ぎ、世界中を巡れと言う。

あまりのハードさにヤムチャどころかクリリンまでも絶句するが、悟空は気楽に走り去って行った。

 

「お前も師匠の意地として負けられんのぅ?」

 

「……よ、よしっ!儂らも家まで走って帰るぞいっ!」

 

「「えぇーーーーっ!?」」

 

占いババに炊きつけられ飛び出した亀仙人の背を見て、ヤムチャとクリリンが走り出そうとする。

 

「これヤムチャ、カプセル置いていけ。

 ブルマたちが走っていけるわけないじゃろ」

 

「っとそうだった。これ、飛行機のカプセル。

 プーアルと一緒に都に行っててくれ。

 亀ハウスについたら、一度顔を出すから」

 

「修行はいいけど、あんまり無理しないでよね?」

 

「頑張ってください、ヤムチャさま!」

 

出遅れたヤムチャが慌てて二人を追いかけていく。

 

「さてと……アンタはどうする?

 一緒にウチに来るなら歓迎するけど?」

 

「いや、それはまたの機会にしよう。

 そのケースの解析が終わった頃に顔を出すさ」

 

「あっそ。そんなに手間取らせないから早めに来なさいよ?

 ……そんじゃね」

 

「あぁ、ではな」

 

 

そして3年後。

第22回天下一武道会の日がやってくる。

 

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