『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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ヒノカミが全力で戦うときは『鬼相纏鎧』を使います。
今回は試合なので流石に持ち出しませんが、彼女の戦闘スタイルは鎧を纏った状態を前提にしています。
そして鎧のモチーフはオールマイトとエンデヴァーなので……。


第33話 悟空VSヒノカミ

 

互いに一礼をして、身構える二人。

悟空の独特な構えに対し、ヒノカミの方はまるでボクサーのように両の拳を顔の前に持ってきている。

しかし両脚の踵を地面に付けていた。

それはフットワークを生かすのではなく、パワーで押し切る者の構えだ。

 

「……奴の小柄な体には、随分と不釣り合いなスタイルだな」

 

「オレたちも最初はそう思っていた。

 だがあの人の戦い方はアレで完成されているんだ」

 

「悟空が動いたっ!」

 

悟空が一気に接近し、手刀を叩きつけようとする。

ヒノカミはそれを受け止める……ではなく攻撃を無視して自分の右手を突き出した。

 

「っ!?」

 

悟空は咄嗟に横に動き、彼女の攻撃を躱すことに専念した。

相手を失った拳が降りぬかれる。

 

「「「うわぁっ!!」」」

 

10メートル以上離れた場所にいる観客たちが、暴風でなぎ倒されていく。

 

「パンチの余波でこの威力だと!?」

 

天津飯の驚愕を他所に、悟空が横からヒノカミに接近していた。

彼の回し蹴りがヒノカミの胴体にクリーンヒットした。だがそれでも。

 

「……ダメだ、効いていない!」

 

「逃げろ悟空!!」

 

攻撃を受けたというのにヒノカミはひるむことすらなく、もう一方の手で悟空を振り払う。

不安定な姿勢から、腕の力だけで放った攻撃だ。

だというのにそれを受けた悟空は一気に舞台の角にまで弾き飛ばされた。

そして落下せぬよう着地した彼の目の前にはすでに拳を振りかざしたヒノカミがいる。

 

 

ドォン!

 

 

「「「!?」」」

 

すでに悟空は残像を残してその場を離れていた。

残像をすり抜けたところで止めた拳の出した衝撃波が、舞台の隅に小さなクレーターを作った。

 

「……こうして直接目にしても、俄かには信じがたいな……」

 

「あわ、あわわわわ……」

 

前もって聞いていたとはいえ彼女の戦いを見た天津飯は冷や汗を流し、チャオズは怯えている。

 

『静血装』と『聖光気』を纏い防御力を高め。

短距離かつ直線限定だが一瞬で移動できる『瞬歩』で接近し。

拳を力の限り振り下ろす。

ヒノカミの肉弾戦とは圧倒的なフィジカルでゴリ押しする脳筋万歳戦法なのだ。

 

「瞬歩とやら以外は辛うじてついて行ける速さなんだが、あの人はとにかく硬くて強いんだ。

 ……お前との闘いで使った狼牙風風拳をどれだけ浴びせても後ずさりすらせずに一歩ずつにじり寄ってきた」

 

「鳩尾とかに全力の一撃を打ち込んで、ようやく少しひるむくらいなんですよね……」

 

ちなみに眼球のような急所を狙っても無駄だ。

確かにダメージは通るがすぐに再生できるし、何より彼女相手に意図的に反則行為をすると彼女も同じ反則を解禁してくる。

何でもありにするとむしろ多芸な彼女の方が有利になってしまう。

 

「どうすれば倒せる……?」

 

アレが勝ち進んでくればいずれ自分とも戦うことになるのだ。

もはや恥とは思わず、天津飯はヤムチャらに尋ねる。

 

「休む間を与えず攻撃し続けるしかないと思う。

 痛みや消耗がないわけではないらしいからな。

 だが瞬歩で距離を取られると回復されてしまう。

 逃げ出さないように接近戦を仕掛けるんだ」

 

「あのパワー相手に接近戦か……逆に距離を取るのはダメなのか?

 オレなら舞空術で……」

 

「アンタらとは原理が違うみたいだけど、あの人も空を飛べるんだ。

 しかも空中でも速さが変わらないからきっと追いつかれる。

 それに……アンタらの『どどん波』みたいな技も持ってるんだ」

 

「なんだと!?」

 

ヤムチャらと同じ結論に達している悟空が、一度食らえば致命傷になりかねないラッシュを避けて攻撃を続けていた。

そしてヒノカミの右ストレートを躱し右脇腹を狙った時、脇の下から彼女の左手の人差し指が自分に向けられていることに気づいた。

 

「っ!?」

 

 

「霊丸」

 

 

ピストルの形をした左手の指の先から発射された弾丸が悟空を上空へと弾き飛ばす。

 

(やべぇ!)

 

ヒノカミは地上にいて、宙にいる悟空を見上げている。

悟空の後ろに広がるのは空。観客はいない。

 

 

霊光弾(ショットガン)

 

「うわわっ!?」

 

付きだした左手の拳の先から拡散した無数のエネルギー弾が発射される。

一つ一つは霊丸よりはるかに小さく弱いが、この数と範囲では避けられない。

そして攻撃が止む様子もなく、このままでは弾丸にはじかれ続けてダメージを受けると同時にどんどん舞台から離されてしまう。

 

「くぅ……かめはめ、波ーーーーっ!!」

 

通用するとは思わないが攻撃を止めさせるにはこちらも遠距離攻撃を使うしかないと、悟空が空中から舞台の上のヒノカミに向けてかめはめ波を発射する。

それは無数の小さなエネルギー弾を貫いて彼女に迫り、彼女は攻撃を止めて両手を前に広げた。

確かに『攻撃を一度止めさせる』という悟空の目論見は成功したが、決して事態が好転したわけではなかった。

 

「……霊光、鏡反衝!」

 

悟空のかめはめ波はヒノカミの両手に取り込まれ、そして彼女の両手から悟空に向けて発射された。

 

「げげっ!?」

 

自分に迫るかめはめ波を躱すために、悟空はさらにかめはめ波を使わねばならなかった。

ほぼ真上に向けて発射して舞台の上に緊急着陸する。

 

「なんだ今の!?」

 

「オレたちも初めて見るぞ!?

 天津飯がオレのかめはめ波を跳ね返したのと似たような技か!?」

 

「……違う!アイツはオレのようにただ攻撃を跳ね返したんじゃない!

 一度自分の中に完全に取り込んでから放出したんだ!」

 

天津飯がやって見せたように力で強引に弾くのではなく、相手の気質に合わせて自分の気質を操作して、自分の力の一部として受け入れた。

そして自分の力を一切消費することなく、相手の力だけを使って攻撃を放った。

 

(あんな乱暴な戦い方をしておきながら……なんと繊細で洗練された技法だ!)

 

相手に気質を合わせるのは霊光波動拳の正統継承者であるヒノカミでも容易ではない。

あっさりと成し遂げてみせたのは、相手が付き合いの長い悟空だから。

とは言え天津飯はそれを知らず、彼女相手に気弾の類を使うのは危険すぎると判断した。

ヒノカミが対戦中に相手の気を理解すれば同様に可能になるので、彼の判断は正しい。

 

 

「これも躱すか……強ぅなったな、悟空」

 

「へへっ、ばあちゃん相手だとまだまだみたいだけどな」

 

「かかか、もうすぐさ。

 あと数年もすれば『この体』では太刀打ちできなくなるじゃろう」

 

「??」

 

「だが今はまだ、負けてはやれぬ。

 ……ゆえに儂も『もう一段』ギアを上げる」

 

「「「!?」」」

 

ヒノカミの発言に舞台裏のヤムチャたちだけでなく、観客に混じっていた鶴仙人も驚愕している。

 

「馬鹿な、まだ上があるというのか!?

 なんだあの小娘は!!」

 

彼女は帯をほどき、着物の上を取り払った。

左腕に巻き付いている帯が彼女の上半身まで伸びており、サラシ替わりになっている。

しかし巻きつけ方が妙に歪。

上半身の前側だけを隠すような形で、『両肩』はもちろん『背中』までもが不自然に露出している。

 

 

「覚悟はいいか?」

 

「……うん!!」

 

 

 

「……『瞬閧(しゅんこう)・爆炎無双』」

 

剥き出しの背中から、炎の翼が噴き出した。

 




・瞬閧・爆炎無双

四楓院夜一の弟、四楓院夕四郎から教わった技。
両肩から炎を翼のように噴き出す。
炎を炎として放出するだけでなく、手足に纏って打撃と同時に相手を爆破することも可能。

ヒノカミは『僕のヒーローアカデミア』『BLEACH』『武装錬金』『幽遊白書』『シャーマンキング』の世界に完結後も長期滞在していたので、上記の世界の様々な能力、技を習得しています。
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