『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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ヒノカミが神様になったので、先代は今やただの人。
行動制限が無くなればこのように動くかと思い話を決めました。


第37話 先代さま

 

「ま、待て!この方は……っ」

 

殺意すら滲ませて身構えた亀仙人と、それを見て倣うヤムチャやクリリンたち。

今にも襲い掛かりそうな彼らを止めるためにヒノカミは立ち上がり、そして足を縺れさせて転びそうになる。

 

「そんな体で、無理をするな。

 ……この状況を作り出した私が言えたことではないが」

 

そして地面に倒れかけたヒノカミを、老人は血にまみれることすらいとわず優しく抱き留めた。

 

「せ、先代様。何故下界に……!」

 

「『先代』だからな。もはや私を縛るものはない。

 お前はその体を休ませてこい。後は私が引き継ごう」

 

「ですがっ!」

 

「案ずるな……私も、命は惜しいからな」

 

「お前は……ピッコロではないのか……!?」

 

大魔王に手ひどくやられたはずのヒノカミがその身を預け、へりくだって接している。

そして何より、大魔王と同じ顔でありながら慈愛に満ちた表情。

別人と判断するには十分な証拠だった。

 

「そうであるとも言えるし、そうでないとも言える。

 とにかく、私にお前たちと争う意思はない。

 負傷したヒノカミに代わり私が事情を説明しよう」

 

「お任せいたします……お主ら、くれぐれも!

 くれぐれも失礼のないようにな!!」

 

緑の肌の老人を残し、ヒノカミは転移で去って行った。

亀仙人が警戒を解いたことで、他の者も訝しみながら拳を下した。

 

「信じがたいとは思うが、これより語るは全て真実だ。

 私は『先代』……『先代の地球の神』である」

 

「「「は!?」」」

 

「そしてドラゴンボールを作り出した者だ」

 

「「「はぁっ!!?」」」

 

「あ、あなたが……地球の神ですと!?」

 

「へっ!?亀仙人さん、神様ってホントにいるの!?」

 

「神の座は、受け継がれるものなのだ。

 かつて若かった頃の私は神のもとに辿り着き、その後継となることを望んだ。

 私は修行により自らの内にある『悪の心』を追い出し、新しい神となった。

 ……そのわずかな悪が『ピッコロ大魔王』となったのだ」

 

故に目の前にいる『先代の神』と『大魔王』は同一人物でもある。

どちらかが死ねば、もう一方も死んでしまう。

 

「神は自殺はできぬ。こうして下界に降りる事さえ容易ではない。

 故に当時の私は大魔王に手を出すことができなかった。

 逃げ延びた奴が人々を苦しめたこと……すまぬと思っている」

 

「!?頭を上げてくだされ!」

 

「でも神様はここに……あ!『先代』って!」

 

「如何にも。私は既に神の座を譲り、引退したのだ。

 私などより遥かに神に相応しい力を持つ後継者にな。

 皮肉にもピッコロ大魔王のおかげで、私は彼女を見出すことができた」

 

「彼女とは……まさか『天女』さまが今の!?」

 

「そうだ。そして神となった天女が地上に遣わした『巫女』。

 それがお前たちの知る『ヒノカミ』なのだ」

 

「「「!!?」」」

 

実際には『端末』、遠隔操作できるもう一つの肉体なので、本人と大差がないのだが。

そのあたりの説明は面倒になるため今は省いた。

 

「か、神様の、使い……!?

 ひぇぇぇ……!」

 

「なんと……あ奴の知識と力はそういう理由か……!」

 

「ねぇ、その天女さまってどんな人なの!?」

 

「……凄まじい力を持った慈愛の女神じゃ。

 手をかざせば炎が奔り、それを浴びた魔族は悉く燃え尽きた。

 しかし人々は燃えるどころか傷が癒え、死者すらも息を吹き返した」

 

「す、すげぇ……」

 

「そして何より」

 

「何より!?」

 

 

 

「……えぇ乳しとった……」

 

 

 

「フンッ!」

 

「フガァッ!?」

 

ブルマに後頭部をどつかれ亀仙人の顔面が彼の持つ杖に直撃。

鼻血を垂れ流すことになった。

先ほどまでの話題と相まって鼻血の原因が誤解されそうな状況だ。

 

ちなみにこれが、亀仙人がヒノカミの正体に気付かなかった理由だったりする。

頭身により多少差があり髪の長さも違うものの、神霊と端末は全く同じ顔。

たとえ300年が経っていても神霊を直接見たことがあるなら記憶の片隅くらいに残っていてもおかしくはないはず。

しかし彼『ら』は天女の『胸』に視線が集中していたので顔の記憶があやふやだった。

『スケベブラザーズ』は伊達ではないのである。

 

「……ゴホン。

 話を続けるが良いか?」

 

「あっ、はいスイマセン!」

 

「では……何故彼女がお前たちと共にいたかは、いずれ彼女自身が語るだろう。

 今の問題はピッコロ大魔王だ。

 大魔王と私はどちらかが死ねばもう一方も死ぬ。

 だから彼女は大魔王を殺すことをためらったのだ」

 

彼女は蘇生術が使えるが、二つに別れた一つの魂となると少々勝手が違うらしい。

両方蘇生するなら問題なく出来るが、先代だけを器用に蘇生するのは難しい。

失敗すれば大魔王だけが蘇る可能性もあるとか。

 

「そしてドラゴンボールで私だけが生き返るといったこともできない。

 アレは神だからではなく、私固有の能力で生み出したものだ。

 私が死ねばドラゴンボールも消えてなくなる」

 

だからこそ神龍であっても『大魔王を消滅させる』といった願いは叶えられない。

それは創造主への反抗であり、自分自身を抹消することに繋がるのだから。

 

「なるほどな……まさに魔封波はうってつけじゃ。

 大魔王など簡単に倒せたであろう天女さまが、武泰斗さまの魔封波を頼ったのはそういうことか……」

 

「うむ。そして彼女がお前たちに頼もうとしたのも、まさにそれだった。

 彼女も魔封波は使える。しかしあれは成功率が低い。

 ボロボロになった今の彼女ではまず失敗するだろう。

 だから彼女はお前たちに、少しでもピッコロ大魔王を弱らせてくれと頼むつもりだったのだ」

 

老化による衰えに加え、ヒノカミの端末との戦闘により今の大魔王は激しく消耗している。

だから悟空たちが協力すればもしかしたらと考えたようだ。

言い方は悪いが、先代でなければドラゴンボールで蘇生することができる。

そちらが駄目でもヒノカミ本体がいる。

規則に反した罪で任を解かれることになるとしても、蘇生だけはするつもりだった。

 

「しかし私がこうして下界に降りた以上、その必要はない。

 大魔王は私の『一部』。当然私の方がはるかに力は上だ。

 魔封波は私も学ばせてもらった。

 弱らせることも、その後に封印することも、私一人で事足りる。

 彼女は万が一に備え私を遠ざけようとしたが、逆に言えば万に一つしか失敗はありえない」

 

大魔王を死に瀕するほど追い詰めなければ先代の身に影響が出ることは無い。

魔封波は使い手に凄まじい負担をかける術だが、先代ならば命を落とすほど消耗することもない。

故にもはや悟空たちに力を借りずとも良い。

こうして彼が悟空たちの前に降り立ったのは、巻き込んだ彼らに事情を説明し礼を尽くすべきと考えたからだ。

 

「……ってことは、大魔王に怯える必要はないんですね!?」

 

「はぁ~~……良かったぁ~~……」

 

「お前たちにはいらぬ気苦労をかけた。

 ことが終わればもう一度知らせにこよう」

 

「よろしくお願いいたします」

 

安堵のため息を漏らすクリリンやブルマ。

先代に重ねて頭を下げる亀仙人。

 

しかし難しい顔をして唸るものが一人いた。

そして、意を決して声を上げた。

 

 

「待ってくれ、先代さま!

 オラにピッコロ大魔王ってのと戦わせてくれ!!」

 

「孫くん!?」

 

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