「何を言ってるんだ悟空!?」
「先代さま、お願いだ。
オラに戦わせてくれ!」
仲間たちの静止に耳を貸さず、悟空は重ねて叫ぶ。
「悟空よ、わがままも大概にせい!
ピッコロ大魔王の恐ろしさを、お前はわかっておらん!!」
「オレたちでも勝てないヒノカミさんが、あんなにされちゃうくらい強いんだぞ!?」
「だから!だから戦いてぇんだ!!」
「っ!?」
悟空は強敵との戦いを病的なまでに好む。
今回もその発作かと思い込んだ亀仙人は悟空を叱りつけるが、彼の顔を見て言葉を詰まらせた。
自慢の家族だった。あこがれの人だった。
誰よりも強くて、怖くて、優しい人だった。
いつも元気で飄々として、困った時には支えてくれた。
常に自分を気遣い、導いてくれた。
「そんなばあちゃんを……あんなボロボロにしやがって!!
あんな……あんな!!」
「孫くん……」
付き合いの長いブルマでも初めて見る、怒りに満ちた表情。
先ほどまでも悟空は傷ついたヒノカミを気遣い、傍から離れようとしなかった。
考えが至らなかった。もはや彼にとってはたった一人の家族ではないか。
「孫悟空よ……ヒノカミを知る者として、その想いは嬉しく思う。
しかし大魔王は今のお前の手に負える相手ではない。
ここは大人しく身を引くがよい」
「でもっ!ばあちゃんはオラたちを頼ろうとしてたんだろ!?
だったら、オラたちなら何とかできるって思ってたってことじゃねぇか!?」
「……他に手段が無かっただけだ。
お前たちを死地に送る選択は苦渋の決断だったはず。
ここでお前を死なせては、それこそ私が彼女に合わせる顔がない」
「……ブルマ!」
「へ?」
突然名前を呼ばれ、悟空から何かを投げ渡された。
以前彼女が彼のために作った、特殊なコーティングを施した袋の中に入っていたものは。
「これって……!」
「頼む。オラがやられたら、ドラゴンボールを集めて生き返らせてくれ。
……これならいいだろ!?先代さま!」
「「「!?」」」
「悟空……お前、そこまで……!」
先代に向き直り鋭い視線を向け、拳を握りしめる悟空。
放っておけば力づくで勝手に飛び出していくのではないか。
そう思わせる迫力があった。
「……ブルマ、プーアル。
オレのことも頼む」
「ヤムチャ!?」
「ヤムチャさま!?」
「悟空、悔しいのはお前だけじゃないんだぜ。
……なんだかんだ、オレも長い付き合いだからな」
「……ヤムチャよ」
「武天老師さま……折角認めてくださったのに、不肖の弟子で申し訳ありません」
「……チャオズ、お前はボール探しとやらを手伝ってやれ」
「天さん!?」
「袂を分かってしまったが、鶴仙人さまはオレの師だ。
かつて師が挑み、敵わなかった相手。
……師に代わりに一矢報いるのも弟子の務めだ」
「……あ~~~もうっ!
ここでボクだけ行かないなんて、できるわけないじゃないですか!」
「クリリン、お主まで……!」
「……生き返れるとしても、怖いですよ?
でもここで自分だけ逃げて悟空に死なれたら、オレもう、コイツの顔を真っすぐ見れなくなる気がするんですよ……」
「……先代さま!教えてくれ!
ピッコロ大魔王ってのはどこにいるんだ!?」
才気あふれる四人の若者たち。
間違いなく地球の未来を担っていく者たちだ。死なせるのは惜しい。だからこそ。
「……お前たちにはヒノカミが世話になった。
その礼もある。ひとまずお前たちに任せよう。
ただし死ぬことは許さぬ。
お前たちの一人でも殺されそうになったならそこまでだ。よいな?」
「「「「はい!」」」」
だからこそ、まだこの手が届くうちに苦難を経験させてやるべきだろう。
「……先代さま、なればワシも同行を許してはいただけぬでしょうか。
この老いぼれでも新たな時代の礎となれるのであれば」
「いや、こちらからも頼みたい。
実際に戦ったことがあるお前ならば奴の恐ろしさを理解していよう。
彼らが逸らぬよう支えてやってほしい」
「必ずや」
悟空、ヤムチャ、クリリン、天津飯、そして亀仙人の5人がピッコロ大魔王に挑むことになり、チャオズやブルマたちが万が一の事態に備えドラゴンボールを集めておくことになった。
「大魔王は目覚めて間もなくヒノカミと死闘を繰り広げたことで疲弊している。
お前たち全員でかかり、更に消耗させるのだ。
奴が疲弊するほど魔封波の成功率は上がる。
狙うは手足だ。引きちぎれても再生できるから殺してしまう心配はない。
そして再生には体力を大きく消耗するからな」
「え”……手足千切れても再生するんですか……?」
大魔王と先代が同一人物だというなら先代もそういうことなのだろうか。
(明らかに普通の人間じゃないもんなぁ……)
鼻がなく皮膚呼吸するクリリンも大概人間離れしているが。
そして背中から腕を生やせる三つ目の天津飯も負けてはいない。
「……気を付けてね。
生き返るからって、アンタたちの死体を見る事になるなんて、イヤだからね!」
「わかってるさ」
「正直、お話のスケールが大きすぎて理解できていませんが……私も皆さんのご武運をお祈りしております!」
「あんがとな、審判のおっちゃん!」
「では準備は良いな?
お前たちを大魔王のもとへと送る」
「「「はい!」」」
5人の戦士と先代の姿が、その場から掻き消えた。