『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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ヒノカミと戦った際にはまだタンバリンやシンバルやピアノを生み出していなかったので、ピッコロ大魔王は原作にて悟空が最初に戦った時より強かったという設定です。
そしてヒノカミと戦った後の今は原作より弱くなっています。


第39話 涙

 

「だぁーーーーっ!!」

 

「えぇい!いい加減に鬱陶しいわ、コバエどもめが!!」

 

「うぎゃっ!?」

 

「死ねぇっ!!」

 

「悟空!!」

 

「くっ!気功砲!!」

 

「やった!当たった!!」

 

「……ちぃ……止めを刺し損ねたわ……」

 

「効いて、ない……!?」

 

「こ……これで本当に衰えているのか!?

 これで本当に、疲弊してるっていうのか!?」

 

「無論じゃ……かつての大魔王は、こんなものではなかったぞ……!」

 

「「「…………!」」」

 

先代の神により、人気のない荒野に送り込まれた悟空たち。

彼らはヒノカミとの戦いでの傷を癒すために隠れていた大魔王を見つけ、戦いを挑んだ。

なるほど、確かに亀仙人が先代を大魔王と見間違えたのも無理はない。

全く同じ顔だったのだから。

しかしその邪気と悪意に満ちた表情は明らかに別物だ。

 

5人の中で最も強く、最も闘志に満ちている悟空が前に出て、ヤムチャとクリリンが肉弾戦で援護。

気の扱いに優れる亀仙人と天津飯が気功波の類で後方から援護する作戦を取った。

間違いなく、これが最良だっただろう。

しかし結果は、この有様だ。

どれほど攻撃しても大魔王を苛立たせるだけで、まともなダメージを与えることすらできていない。

 

「ちくしょう……ちくしょう……!」

 

「ふん、今の時代の武闘家などこの程度か。

 だが誰一人生かしてはおかぬぞ!

 貴様らを始末したら、次はあの『鬼』だ!」

 

「!?くっ!」

 

それがヒノカミを指していると気付いた悟空は、両手を前に突き出す。

一瞬だけ、ピッコロ大魔王の表情が大きく引きつった。

 

「か……め……!」

 

そして安堵した。その理由を亀仙人だけは察していた。

どうやらかめはめ波の構えを魔封波と誤解したのだろう。

 

(やはり大魔王は魔封波を恐れている!

 もし先代さまが失敗するようなことがあれば、ワシが……!)

 

亀仙人は大魔王を封じた後、万が一に備えた武泰斗から魔封波を受け継いでいる。

一度誰かに使えば命を失うほどの反動を受ける術。

当然実戦で使った経験などなく、最後に練習したのも一体いつのことか。

しかしヒノカミが恐れた万が一、先代さまが失敗し窮地に陥るようなことがあればと、亀仙人は電子ジャーの入ったカプセルを隠し持っている。

 

「は……め……波ーーーーーーっ!!」

 

悟空の残る力の全てを込めたかめはめ波が、大魔王に直撃した。

しかし煙が晴れた先にいたのは無傷の大魔王だった。

 

「……今、何かしたのか?」

 

「……!」

 

「さて……そろそろ死ぬか?」

 

大魔王が悟空に向かって突撃し、拳を突き出す。

 

「「「悟空ーーーーっ!!」」」

 

それを躱すこともできず、彼は愕然としていた。

 

 

 

「そこまでだピッコロ」

 

「がはっ!?」

 

 

 

「「「!?」」」

 

悟空の前に割り込み大魔王を指一つで弾き飛ばしたのは、大魔王と瓜二つの緑の肌の老人。

 

「ば……馬鹿な!?何故貴様がここにいる!

 下界になんのようだ!……神め!!」

 

「私がどこにいても問題はなかろう。

 何故なら私はもはや、神ではないのだからな」

 

「なっ、なんだとっ!?」

 

神は容易に下界に降りることができず、死を選ぶことができない。

だからこそ大魔王は思うままに力を振るえていたというのに、その前提は既に崩れ去っていた。

そして目の前の相手が死ねば、片割れである自分も死ぬ。

 

「まっ、まさか!自殺する気じゃあるまいな!?」

 

「その覚悟はあった……が、それを止めようとしてくれる者がいる。

 なれば無暗に命は散らせぬさ。

 それに……自殺などせんでもお前を食い止める手段を、人間が教えてくれたからな」

 

先代が少し離れた地面に指を向けると先端から光が伸び、小さなビンのようなものが生み出された。

書かれている文字は……『大魔王封じ』。

 

「……覚悟はよいな?」

 

「まっ……まさか!!」

 

 

 

「『魔封波』だっ!!!」

 

 

先代が突き出した両腕からエネルギーが渦を巻いて溢れ出し、大魔王の体を飲み込んだ。

 

「お……おおおおーーーーーー!!!!」

 

「はぁあっ!!!」

 

そして大魔王は先代が操る流れに押しつぶされ、小さなビンの口に吸い込まれていった。

直後、先代が素早くビンの蓋をした。

 

「……終わったぞ。

 ピッコロ大魔王は確かにここに封じた。

 ……よく頑張ったな」

 

その一言と同時にへたり込むヤムチャたち。

彼らもすでに限界だった。

それぞれが隠し持っていた仙豆を、無言で口に押し込む。

 

 

「……先代さま、正直に答えてくれ。

 ……オラたちがいて、ちょっとでもマシになってたか?」

 

だが仙豆を口にすることもなく俯いたままの悟空が尋ねる。

 

「……いや、大差はなかっただろうな」

 

「……そっか」

 

「では、私はこれで失礼する。

 大魔王は天界にて厳重に封印しよう」

 

「よろしくお願いいたします」

 

「……ではな」

 

先代が背を向けその場から消える。

しばらくの間、沈黙がその場を支配していたが。

 

 

「……ちくしょう!!!」

 

 

悟空があらん限りの声を張り上げ、大地に拳を振り下ろす音が響いた。

 

「なんで……なんで、オラはこんなに弱ぇんだ!」

 

「悟空……」

 

いい勝負くらいは……いや、正直に言おう。

悟空は『自分たちなら勝てるのではないか』と思っていた。

試合では『その気になれば大魔王を殺せた』というヒノカミと戦えていた。

彼女と天津飯との戦いで更に成長できたという自覚もあった。

そして何より相手は弱っていて、こちらには亀仙人たち仲間もいた。

 

だが手も足も出なかった。

大切な家族を傷付けた憎い相手だったのに。

その家族が初めて頼ってくれたのに。

負けられない、負けたくない戦いだったのに。

 

「うっ……うぅっ……ちくしょーーーーっ!!!」

 

「「「……」」」

 

大魔王を相手に生き延びたという安堵。

その後に彼らを襲ったのは、どうしようもない無力感だった。

 




言い訳のしようもない完全敗北。
しかも戦いは先代により終わっており、再戦の機会すら与えられない。
ヒノカミの影響で悲劇が少ないので、精神的に大きく成長してもらうためこのような展開にしました。
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