『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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生まれ変わりは死柄木弔に対し使った前例があります。
ヒノカミが成長し能力に習熟したのと、対象がまだ生きており時間制限もなかったので、特に犠牲もなくあっさりと済ませました。


第43話 ピッコロ

 

時は遡り、ピッコロ大魔王が封印された直後。

大魔王を封じたビンを持って、先代は神殿へと戻って来た。

 

「おかえりなさいませ、先代さま」

 

「ヒノカミよ、端末の方はどうだ?」

 

「だいぶ損傷しておりましてな……一度本格的に改修しようかと。

 大魔王はその中に?」

 

「うむ。神殿にて厳重に保管しておいてくれ。

 ……今思えば、私が神を辞めた直後に回収しておくべきであった」

 

しかし大きな被害が出る前に事態を収めることが出来たのは幸運であったと、先代は安堵していた。

彼に近付いたヒノカミが手を伸ばしてきたので、ビンを手渡す。

そして受け取ったヒノカミはためらいなく栓を抜いた。

 

 

「「……は?」」

 

ビンから飛び出た大魔王と先代の声が重なる。

 

「なっ、ここは!?神殿か!?」

 

「ヒノカミ!一体何をしておる!?」

 

「いえ、後顧の憂いを絶ってしまおうかと思いましてな」

 

「貴様は……そうか!貴様が次の神かっ!?」

 

300年前に自分を追い詰めた、天女と呼ばれていた女。

その姿を見て大魔王は状況を察し、彼女に飛びかかる。

 

次の神となったヒノカミを殺せば、先代は再び神の座に戻らざるを得なくなる。

そうすれば先代の行動を制限できる。また自分の自由がやってくる。

大魔王の考えは正しい。だが現実はどこまで非情だ。

 

 

「やはりまったく反省なしか。むしろためらわずに済むわい」

 

「が……あ……!?」

 

ヒノカミの左腕に巻き付いていた蛇がその体を伸ばし、一瞬で大魔王を拘束する。

身動きどころか呼吸すら満足にできないのはきつく縛り上げられているからだけでなく、目の前で鎌首をもたげる白蛇の眼に恐怖を感じ取ったから。

 

かつて下界にて大魔王と戦った際、ヒノカミは周囲の人々を巻き込まぬよう極限まで力を制限していた。

だから大魔王は彼女の実力をまるで把握できていないままだった。

知っていれば、逃げ出すことすら不可能と理解できていただろうに。

 

「んじゃ、ちゃっちゃと済ませるか」

 

「な、なにを、する気だ……!?」

 

ヒノカミは大魔王に向けて両手を広げる。

 

封じるだけでは問題の先送りだ。

殺すことはできないし、そのくらいでは物足りない。

だからヒノカミは大魔王に、彼女にとって『死ぬよりも恐ろしい罰』を与えようとしている。

 

それは『自分が自分でなくなること』。

 

「!!!」

 

ヒノカミの指から伸びた糸が大魔王に届くと、その体のいたるところが裂け、紡がれていく。

 

「『天卍改紅(てんもんかいこう)』」

 

「待て!やめろ!やめろぉーーーっ!!」

 

それは彼女の霊体のベースとなった『観音開紅姫改々』の能力。

『触れた対象を造り替える』能力。

 

 

「生まれ変わってやり直せ」

 

「ぎぃやぁぁぁぁああああああ……!」

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

「んで一度まっさらにしてやろうと思ったんじゃが、予想以上にこびりついておっての。

 前世が『大魔王だった』という記憶と儂への恨みが消えずに残ってしもうた。

 しかしこれ以上漂白すると魂そのものが色落ちしそうでなぁ」

 

「大魔王を洗濯物に例えるな!」

 

「くそっ、この!この!」

 

小さくなったピッコロを抱きかかえヒノカミの隣に座った先代。

そしてピッコロは彼の腕の中でヒノカミに向けて届かない拳を必死に伸ばしている。

 

「ま、アレの息子みたいなもんじゃ。

 当人とは別モンじゃから安心せい」

 

「別物って言われても……」

 

「すぐにおっきくなって、オマエをぶっころしてやる!」

 

「めちゃくちゃ物騒なこと言ってますけど!?」

 

「かかか、むしろ安心じゃろ?

 儂を殺さぬ限りこ奴の悪意が他に向くことはないじゃろうからな」

 

事実、大魔王がかつて最も恨んでいたであろう先代には目もくれていない。

彼の腕の中から這い出そうとしているのも彼を嫌っているからではなく、ヒノカミに近付いて攻撃するためだ。

 

「まぁそんなわけでじゃ。

 生まれ変わったピッコロの面倒も見ねばならんでの。

 お主らとまとめさせてもらう」

 

「は、はぁ……」

 

当初はピッコロに関しては全て先代に任せようと思ったが、ピッコロは彼が自分の中から追い出した悪の心そのもの。

受け入れがたい存在であり、生まれ変わったとはいえ顔向けしづらいとか。

……こうして優しく抱えられている姿を見ると『おじいちゃんと孫』みたいだが。

 

「……」

 

「なんじゃ悟空、いやか?」

 

「……うん。ばあちゃんは気にしてねぇみたいだけど、オラはやっぱ簡単には許せねぇ」

 

予想外なことに、誰よりも敵に寛容な悟空が明らかな反対の意見を示した。

家族を傷付けられたのは彼にとってそれほど大きなことだったのだろう。

 

「大魔王は『存在の消滅』という形で罰を受けた。

 ここにいるピッコロはもはや大魔王ではない。

 親の罪を子にぶつけるような真似はするな。

 それが許されるなら人は一人残らず滅びねばならん」

 

「でもっ!」

 

「まぁ嫌いなら嫌いでもいいがな」

 

「「「……へっ?」」」

 

てっきり『仲良くしろ』とでも言うと思っていたので、悟空だけでなく周りの者たちも思わず声を上げる。

 

「感情は理屈ではないからなぁ。好きになれんなら仕方あるまい。

 行動にすれば罪になりかねんが、嫌うだけなら勝手じゃろ。

 だから落としどころを探せ」

 

「落としどころ?」

 

「ぶつかり合うのか、距離を取るのか、いやいやながらでも付き合うか。

 好きになろうと努力してもいいし、一層嫌いになるならそれもやむなし。

 相手とどんな関係になるのが自分にとってゴールなのかを模索せぃ。

 重要なのはお主が『納得すること』じゃ」

 

「……では、その結果相手を殺すことでしか納得できないとしたら?」

 

あまりに神らしくない考え方に、亀仙人が思わず口を割り込ませる。

 

「先ほど言った通り、八つ当たりはダメじゃ。

 しかし相手に殺されてしかるべき罪があるならそれもよかろう。

 ただ一呼吸置き、よく考えてみよ。 何せ殺すのは一度しかできぬ。

 たった一度の機会を勢いで使い果たすのは勿体なかろう?

 後からもっと惨たらしく清々する殺し方が見つかるかもしれんからな」

 

ヒノカミの場合は何度でも蘇生できるので何度でも殺せるのだが、これは例外とする。

 

(……先代さま!ホントにこの人が神様でいいんですか!?)

 

(神には残酷な一面も必要なのだ……過剰すぎるのは、否定できぬが)

 

(亀仙人さん……『慈愛の女神』?)

 

(こんなじゃったっけ……?こんなんじゃったっけ!?)

 

彼らの内緒話など地獄耳が全て拾い上げているが、彼女は気にすることなく堂々としている。

 

「……わかんねぇ。結局オラはどうすりゃいいんだ?」

 

「それを考えるのも修行の内じゃよ。

 言うたじゃろ?それが大人になるということじゃと。

 ……それを決めるためにも、今しばらくはこのピッコロに目を向けてみればよい」

 

「う~~~ん……そうしてみる」

 

丸め込まれたような気がするが、ひとまずは飲み込んだらしい。

 

「儂からの話は以上じゃ。では早速修行に移ろうか。

 言った通り3年後の天下一武道会を目途とする。

 付きっきりは無理じゃからポポや先代さまにも手を借りる。

 ちなみにじゃが、コースはどうする?

 『軽め』『普通』『厳しめ』『死』の4段階があるが?」

 

「「「『死』って何!?」」」

 

勿論、死を前提とした修行に決まっている。

そして死ぬ度に蘇らせる。死は終わりではなく救いでもない。

 

「よくわかんねぇけど、一番強くなれるヤツ!」

 

「「「ちょっと待て悟空ーーーっ!!!」」」

 

「ん、よし。

 では亀仙人やブルマたちはまた3年後な。

 電話は通じとるからちょくちょくかけてきてもいいぞ?」

 

「電話あんのココ!?」

 

神殿に繋がる電話番号が書かれた紙を渡されたブルマたちは、来た時と同じようにポポに連れられて下界に帰って行った。

そして残された5人の武闘家と、小さな元大魔王。

彼らの死んでも死ねない生き地獄が始まり、そして3年の歳月が流れた。

 




あの世とも自由に行き来できるから、イタコのアンナがいなくても大丈夫!
成仏してても連れ戻すよ!やったね!
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