『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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重ねて言います。
本作ではピッコロ大魔王が公の場で暴れていないため、ピッコロを名乗ることも姿を見せることも全く問題ありません。
先代さまも周囲から『変わった人だなー』くらいにしか思われておらず、普通に会場を歩いています。


第48話 ピッコロVSクリリン

 

『では気を取り直して次の試合……ですが、どうしたのでしょう?

 控室の方が騒がしいですね……』

 

アナウンサーの耳に選手たちの叫び声が届き、訝しんで舞台裏を覗き込もうとしている。

 

『すいませーん!何かあったんですかー?』

 

「あぁ、大丈夫です!すぐ行きますんで!」

 

返事と共に出てきたクリリン。

その後ろにピッコロが続く。

 

『そうですか、では第3試合に行きましょう!

 クリリン選手対ピッコロ選手です!』

 

クリリンは前回前々回と二度本戦に参加しており、どちらも2回戦まで勝ち進んでいる。知名度は十分だ。

成長して身長も150センチを超えた。まだまだ小柄だが小さすぎるということもない。

しかし対するピッコロ。こちらは2メートルを超える巨体を持つため二人が並ぶとどうしても子供と大人のように見えてしまう。

 

「手早く済ませるぞ。

 でないとあのバカが本当に飛び出してしまいそうだ」

 

「はは、同感。

 ……でもそう簡単にやられてやるつもりはないぜ?」

 

二人は舞台の中央で向かい合って構える。

 

「それに忘れてねぇよな?短期決戦は、むしろオレの得意分野だ!」

 

『それでは第3試合、始めてください!』

 

「ばぁっ!!」

 

試合開始宣言と同時に、クリリンが全身に気を纏う。

 

彼は年を重ねても悟空のように身長が伸びず、体格に恵まれなかった。

体が小さいとどうしてもリーチやパワーで劣ってしまう。武闘家としては大きなデメリットだ。

そしてチャオズのように特殊な能力を持っているわけでもない。

 

しかし彼にはそれを補って余りある才能があった。気のコントロール能力だ。

全身から放出した気を肉体の外に張り巡らせて、エネルギーでできた『駆動鎧(パワードスーツ)』を纏う。

ヒノカミが自身の武装錬金や領域『刻思夢想』、『聖光気』や『オーバーソウル』などの能力を組み合わせ、『誰にでも使える技』として完成させた特殊技法。

 

「『天神武装(てんかむそう)』か」

 

「行くぞっ!!」

 

仙豆があるので消耗のことは考えなくていい。この試合で今の自分の全てを出し切る。

 

「だぁっ!!」

 

「ちっ」

 

突撃してくるクリリンに対し、ピッコロは即座に後ろに下がる。

この状態のクリリンの身体能力は悟空やピッコロをも上回る。肉弾戦では分が悪い。

 

「それを分かっていて、付き合ってやると思うか!?」

 

「くそっ!」

 

だから逃げに徹する。

体外に放出した気を体の表面に押しとどめているが、どうしても少しずつ霧散していく。

今の彼は気の鎧を維持するために常に気を消耗しており持久力に乏しい。

時間が経つほど気が少なくなり焦りが動きに現れてくるので、そこにできた隙を突く。

それが彼らの中でのクリリンの攻略法になっていた。

 

「……そんな弱点をいつまでも放置するわけないだろ!!」

 

「なにっ!?」

 

彼の纏う光の大きさが増すと同時に、ピッコロに迫る速度も上がった。

縦横無尽に空中を飛び回る二つの光の距離が少しずつ近づいていく。

 

「くっ……ぐぉっ!?」

 

遂に直撃しそうになりピッコロは気弾を推進力にして直前で辛うじて躱す。

しかしわずかに体に掠り、接触した部分が予想以上のダメージを受けていた。

 

(……人間砲弾か!)

 

「うおおおぉーーーーっ!」

 

クリリンは活動時間を延ばすために気の消耗を抑えるのではなく、活動時間を減らしてでも纏う気の量を更に増やした。

気の鎧の制御に意識を割いているせいで動きが雑になっているが、触れるだけで弾き飛ばされるほどの気を放出し続けている。

 

彼の狙いは自分自身を巨大な気功波に例えての体当たりだ。

スピードは完全に上回った。触れるだけでダメージを与えるほどの分厚い装甲で直撃させられれば一撃必殺。

確かにこれならピッコロを倒せるかもしれない。

 

「……フン」

 

「!?逃がすかぁーー!」

 

しかしピッコロは余裕の笑みを見せた後地上の舞台へと急降下し、クリリンもそれを追う。

ほぼ垂直に降りたピッコロは舞台に直撃する寸前で移動方向を変更、舞台の上を水平に飛ぶ。

クリリンも舞台に激突することなく進路を変更しそれを追うが、舞台の端の直前でピッコロが両手を下に向けた。

彼の両腕が伸び、舞台を掴んで胴体を上へと押し上げた。

 

「げげっ!?」

 

クリリンはピッコロの両手と胴体が作った小さなトンネルを通り抜けた。

直後ピッコロは舞台をしっかりと掴んだまま両腕を縮めて、クリリンの真上から膝蹴りを加える。

気の鎧のお陰でダメージはなくとも空中で衝撃を受ければ軌道は変わる。

そして舞台の端にいたのでそのすぐ下は。

 

『クリリン選手場外!ピッコロ選手の勝利です!』

 

「バカめ。これが試合であることを忘れた貴様の負けだ」

 

「うぐぐ……くそ~~~~っ!」

 

場外がない天界ならもう少し善戦できたかもしれないがピッコロの言う通りここは武道会場だ。

 

(だがルールがなければ、危うかったかもしれん……)

 

勝利したはずのピッコロは明らかに苛立っている。

必至に取り繕って隠しているが、クリリンを攻撃したはずの膝のダメージは決して無視できるものではなかった。

 

(こんなことでは『端末』はともかく、『本体』の奴に届くのはいつになるか……クソッ)

 

ふらついているクリリンを置いて舞台裏に引き返していったピッコロは、ねぎらおうとする悟空たちを無視して奥に引っ込んでいった。

そして誰にも見られていない場所で忌々し気に仙豆をかじる。

 

「今の力量差で勝利を目指すなら賭けに出るのは正しいが、焦りすぎたようじゃな」

 

「わかってますよ……頑張ってくださいね、ヤムチャさん!」

 

「あぁ」

 

 

『それでは第4試合、ヤムチャ選手とヒノカミ選手です!

 どうぞーーーーっ!』

 




初期プロットでは武装錬金ではなくこの能力を『気装纏鎧(きそうてんがい)』と名付けてヒノカミに持たせる予定でした。
詳細は次話で触れますが、聖光気やオーバーソウルを混ぜ合わせて発展させたような総合自己強化能力です。

クリリンたちを原作より強くしておきたいのですが『ただ修行して強くなりました』だと説得力が弱いと思ったので、記憶から引っ張り出して名称変更し採用。
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