『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第51話 ピッコロVSヒノカミ

 

『それでは第6試合、ピッコロ選手対ヒノカミ選手です!』

 

「くっくっく……ようやくか」

 

「えらく張り切っとるのぅ」

 

「当然だ。たとえ端末だとしても、憎き貴様を大衆の面前で八つ裂きにすることができるのだからな……!」

 

「いやこれ試合じゃし……という話はお主には通じんか」

 

ピッコロがこの大会に参加した目的がまさにそれなのだから、たとえルールにより失格になろうとも彼はヒノカミを殺そうとするだろう。

実際には端末だから破壊されたところで修繕すればいい。

わざと負けてやるつもりはないが、全力で戦った上でそのような結末を迎えるならばそれもいいだろう。

 

しかし悟空が納得するまい。

彼は前回前々回と準優勝止まり。天下一武道会優勝に賭ける思いは人一倍強い。

だと言うのに、それが不戦勝により転がり込んだとしたら。

そしてかつて大魔王に敗れた時と同じように、端末のヒノカミがピッコロにより半壊させられたとしたら。

 

(また悟空とピッコロの関係がこじれるよなぁ……)

 

それこそ天界で修業を始めた当初のように。

折角余計なことを考える暇など与えないハードな修行の日々で、3年かけて感覚を麻痺させたというのに。

 

(……これは本気で、勝ちに行かねばならんかな)

 

『では両選手、どうぞーーーーっ!』

 

ヒノカミは前の試合と同じく最初から上着を脱いでいるが、ピッコロもマントとターバンを外している。

間違いなく本気でやるつもりだろう。舞台の中央に向かう途中で念のため忠告しておくことにした。

 

「意図的に観客を巻き込むような真似はするなよ。

 ……その時は、儂の本体が出張ることになる」

 

「……チッ。わかっている」

 

流石のピッコロと言えど今はまだヒノカミの本体には敵わないと理解している。

一般人を人質に取るような真似をしても無駄だ。本体の彼女がその気になれば人も建物も全て元通りにできるのだから。

そして今度こそピッコロは永久に封印されるか存在を消されるか。

ヒノカミがピッコロを今の形に生まれ変わらせた理由は、ただ単に手間と成功率を考慮した結果これがベストと判断したからに過ぎない。

彼女が本気を出して時間をかけて取り組めば、先代を殺さずピッコロだけを消滅させることも不可能ではないだろう。ピッコロとしては腹立たしいことこの上ないが。

 

『それでは第6試合……』

 

「すまぬが、ちと待った」

 

『はじ……え?』

 

試合開始を宣言する直前の審判を静止させる。

そして控室の方を向いてこちらを覗いている者たちに声をかける。

 

「……ヤムチャ、クリリン、天津飯、チャオズ」

 

「「「「?」」」」

 

「舞台の四方に構えていてくれ。

 万が一、観客に被害が出そうならば防いでほしい」

 

「「「「……はい!!」」」」

 

4人は彼女もまた本気を出すつもりだと理解して飛び出し、それぞれ分かれて観客たちの上空に舞空術で待機した。

 

「審判、お主も舞台の外へ」

 

『……わかりました』

 

これで一回り広くなった舞台の上にはヒノカミとピッコロしかいない。

 

「随分と心配性だな。

 やはり大魔王は信用ならんか?」

 

「いや。これは儂が周囲を巻き込む可能性を危惧しているからよ」

 

『それでは改めて、第6試合!』

 

「……忠告しておこう」

 

「何だ?」

 

『始めてください!!』

 

 

 

「死ぬなよ」

 

「!?」

 

ヒノカミは『瞬閧・爆炎無双』を使うだろうと予想していた。

しかし違う。彼女は全身を気で覆い始めた。

 

「それは……『天神武装』だと!?」

 

「武装錬金は『道具』じゃからな」

 

だから試合で使えば明確なルール違反となる。なので武装を能力で再現する。

 

第一段階、全身を気で覆う。

第二段階、武装を具現化する。

第三段階、武装に特性を発現させる。

 

ヒノカミの全身が鎧に包まれ、鬼と化した。

前回大会にて棄権する直前に変化した姿、すなわち武装錬金と寸分違わぬ形で。

 

「『天神武装』第三段階、疑似武装錬金『鬼相纏鎧』」

 

「……!」

 

『こ、これは……武具の使用に、当たるのでしょうか……!?』

 

彼女の体から溢れ出したエネルギーが鎧に変化したのは、この場にいる全員が目にしている。

しかしこれを能力だと認めるのはあまりに暴論が過ぎるのではないか。

審判だけでなく観客たちまで疑問の声を上げ始める。

 

「ならば儂は反則負けか?それならそれで構わんがな」

 

「っ!?審判、続行だ!!」

 

『は、はい!』

 

ヒノカミは一応ルール違反はしていない。

しかし追及すればピッコロは勝ちを拾えただろう。だがそれでは意味が無いのだ。

彼の目的はヒノカミに勝つことではなく倒すこと。

 

だから彼はヒノカミがどれだけ反則スレスレの行為を行ってもそれを認めなければならない。

戦って倒すことにこだわっているピッコロに対し、彼女は勝ちにも戦いにもこだわりはないのだから。

 

「ちぃ、全くやりにくい野郎だ……!

 神なんぞよりよほどな……!」

 

「野郎ではないんじゃがなぁ。

 むしろ『斬魄刀』や『オーバーソウル』まで使わんだけ温情と思え」

 

『天神武装』で再現できる武装は自分の力に沿った能力のみ。

自身の武装錬金や斬魄刀などがそれにあたる。

それ以外の武装は消耗の大きい『刻思夢想』でなければ再現できない。

出来たとしても明らかに『武器』なので、流石に言い訳ができないだろうから使用するつもりはないが。

 

「では、行くぞ」

 

「!?」

 

直後ヒノカミの姿が消えた。

まさかと思いピッコロは前に飛び出した。それが間一髪で彼を救った。

 

ピッコロの背後に転移したヒノカミの拳が、彼の頭があった場所を貫いていた。




恩には恩で。
仇には仇で。

殺意には殺意で。
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