『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第54話 第23回天下一武道会 閉会

 

悟空とピッコロの実力はほぼ互角だった。

しかし激戦の果てに勝利を収めたのは。

 

『……ピッコロ選手、テンカウント!

 孫悟空選手!天下一武道会優勝ーーーーーっ!!』

 

結界の表面に投影された二人の映像を見て実況していた審判が、決着を叫んだ。

 

勝敗の決め手となったのはこの戦いにかける思いの差だった。

二度の敗北を糧に優勝を目指して来た悟空と、あくまで自分を高めるための戦いと割り切っていたピッコロ。

どちらの想いが強かったかは言うまでもないだろう。

 

何も見えないままではつまらなかろうと、ヒノカミは結界の表面に悟空とピッコロの拡大映像、スロー映像などを流していた。

おかげで観客たちも二人の戦いを理解し楽しむことができていたようで、彼らの健闘に万雷の拍手を送った。

 

しかしその代償は大きかった。

 

「『全力で戦え』とは言った。

 そんな余裕があったわけではなく、儂から求めたつもりもない。

 ……じゃが流石にもう少し気遣ってくれてもよかったのではないかの?」

 

「へへ、わりぃわりぃ」

 

「くく、いい気味だ」

 

結界の内側にいなければならないヒノカミが盛大に巻き込まれた。

結界の維持に力を割いた分防御力は下がっていたし、両手が塞がっては気弾を吸収することもできない。

念のため鎧を着ていて正解だった。でなければ端末が消し飛んで結界が消滅していた可能性もある。

ススまみれでボロボロの鬼を見てピッコロの溜飲が下がったようなので、これはこれで意味があったのだろうが。

 

「……なんだ?敗者を嗤いに来たのか?」

 

「いや。……素晴らしい戦いだった」

 

「……チッ」

 

先代はピッコロの健闘を称え、ピッコロは不躾な態度ながらそれを拒絶しなかった。

 

「悟空さーーーっ!おめでとぉーーーーっ!!

 すごかっただよーーーっ!!」

 

「わっ!?な、なにすんだよチチ!?」

 

「そうか!悟空の奴、新婚さんだったんじゃ!」

 

「……!?せーきーはーんーーーーーっ!!」

 

「おいお前ら!ヒノカミさまがまた発作だ!」

 

「あーもうめんどくさい!全員でブッ飛ばしてふん縛るぞ!」

 

「「「おう!!」」」

 

『それでは皆様!また3年後にお会いしましょう!

 さようならーーーーーっ!』

 

慌ただしく締まらない、しかし彼ららしい結末により第23回天下一武道会は幕を下ろした。

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

天下一武道会閉会から1週間後、天界の神殿にて悟空とチチの結婚式が執り行われた。

悟空らの背景と神の存在を知らされたチチや審判は大層困惑したが、チチは悟空との結婚で舞い上がっていたし、審判は散々彼らの非常識っぷりを目の当たりにしてきたので受け入れることができた。

 

式の参列者は二人の関係者全員。

一緒に修行した仲間と、亀ハウスのみんな。先代とミスターポポ、そして前述のとおり天下一武道会の審判。

牛魔王はもちろん、占いババや孫悟飯までもが神殿に集まった。

 

ヒノカミは本当にあの世から孫悟飯を連れてきた。神父の代わりも務めた。

結婚式の挙式スタイルは思いっきり教会式……つまり西洋風のウェディングなのに、同時に神前式でもあった。なんだこれ。

堅苦しい式は誰も望むまいと、ささっと誓いのキスを終えた後は立食パーティーになった。

料理は全てヒノカミが用意した。

神としてのスペックをフル活用して、悟空ですら食べきれない量を次々と運び込んできた。

途中で『やりすぎだ』と先代と亀仙人に小突かれた。

 

各々食事と雑談を続けるうちに、やがて『みんなはこれからどうするのか』という話の流れになった。

 

悟空だけでなくヤムチャやクリリンも、長年天下一武道会での優勝を目標としてきた。

しかし彼らはもう大会に参加しない。

修行はもはや彼らのライフワークであり強くなることを止めるつもりはないが、先代とヒノカミから『そろそろ大人として進むべき道を定めろ』と諭された。

 

悟空はパオズ山に戻り、チチと一緒に暮らす。

フライパン山に一人では寂しかろうと牛魔王も誘った。

悟空も牛魔王も多額の財宝を持っている。急いでお金を稼ぐ必要もないので、これからどうするかを家族で話し合ってゆっくり決めると言った。

 

クリリンも大金を所持している。急いで仕事を始める必要もない。

ただ、折角だから誰かの助けになれるような仕事をしたいと考えていた。

それが決まるまでは引き続き亀ハウスに世話になるらしい。

 

ヤムチャはアクションスターを目指すことにした。

彼は顔が良く女性にもてる。天下一武道会でも目覚ましい活躍をした。

試合を観戦していた映画関係者がいて、先日カプセルコーポレーションにスカウトが来たとか。

演技はこれから勉強することになるが、やる気は十分だ。

 

天津飯はチャオズと共に贖罪の旅を始めると言った。

彼ら自身は何の罪も犯していないのだが、せめて師の罪を少しでも雪ぎたいとのこと。

平和に見えるこの世界でも辺境ではまだまだ治安が悪い。

師は金のために人を殺して来たのだから、自分たちは金のない弱者を守る流れ者の傭兵にでもなろうと考えていた。

 

ピッコロの目標は相変わらず、ヒノカミの抹殺だ。

端末の実力には追いついたが本体には遠く及ばない。しかし一人の修行では限界があるので相手が必要だ。

そういうことならと悟空が手を挙げる。

いつもは無理だが、時折なら家に来てもらえば相手をするとのこと。

ヒノカミ以外には特に恨みも敵意もないピッコロは提案を素直に受け取った。

 

ブルマはカプセルコーポレーションの権力と財力を使い、みんなをサポートしていくと宣言。

困ったことがあればいつでも訪ねてと胸を張る。頼もしい限りだ。

 

亀仙人は相変わらず亀ハウスで暮らすつもりだった。

しかしランチは一目惚れした天津飯に同行することを望んだ。

だがそれは凶暴な方のランチの意思であり、穏やかな方のランチは争いが苦手だ。

そう言って断った天津飯だが、ヒノカミが会話に割り込んだ。

 

彼女は一つの体に二つの魂が入り込んでおり、人格も記憶も完全に分かたれている。

つまり彼女らの精神は肉体年齢の半分の時間しか生きていないし生きられない。

二人の性格に子供っぽさが残るのは、実際に子供と大して変わらない時間しか生きていないからではないだろうか。

それではあんまりだろうと、ヒノカミはその場でランチを『二人に分けた』。

あっさりと神がかった奇跡を起こしたヒノカミはやはり先代に叱られたが、凶暴な方のランチからは遂に面と向かって『姉御』と呼ばれるようになった。

凶暴な方が姉の『ランチさん』、穏やかな方が妹の『ランチちゃん』と言うことになり、これからは双子の姉妹として振舞うらしい。

これなら問題ないだろうと『ランチさん』が詰め寄り、天津飯はそれに押し負けた。

『ランチちゃん』はもうしばらく亀ハウスで暮らし、これからの身の振り方を考えていくことにした。

 

そしてヒノカミは引き続き神として振る舞い、先代とミスターポポは何かと多忙な彼女のサポートとして神殿で暮らす。

時折端末を下ろすつもりだが、皆ならいつでも神殿に来てくれて構わないと答えた。

『だからといって神殿に転移カプセルを設置しようとするな』と、やはり先代に叱られていた。

先代が真の意味で引退できる日は、一体いつになるだろうか。

 

 

 

皆がそれぞれの道を歩み、平和な時を過ごして、早5年。

新たなる騒動の火種が遥か彼方から迫りつつあった。

 




ちょっと強引ですが、これでいわゆる『無印』時代を終了とします。
『Z』時代を始める前に、一度設定紹介を挟ませていただきます。
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