『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第56話

 

「全員揃うことができたか。突然呼び出してすまんかった」

 

「大丈夫だ。暫く撮影もない」

 

「ボクもなんとか休みをもらえましたからね」

 

天界で修業した5名と亀仙人。その場にいたブルマとチチ、悟空と悟飯が集う。

ヤムチャは俳優、クリリンは亀ハウスの隣の島の駐在……警察官をしているため、農家の悟空と違い自由に休みがとりづらい。

招集にはなんとか参加できたがヤムチャにとっては貴重な休日を消費することになり、クリリンも急遽同僚に交代をお願いすることになった。

文句の一つくらい言ってもいい立場だが、彼らは真剣な表情でヒノカミを見つめている。

呼び出された場所はパオズ山だが、そこにいたヒノカミは端末ではなく本体だった。

神である彼女は『よほどの事態でなければ下界に降りられない』はず。

つまり今、地球そのものが危機的状況にあるという証拠でもある。

 

「時間もない、手早く説明する。

 ……儂が頻繁に他の星に呼ばれておる理由は覚えておるか?」

 

「あぁ……『フリーザ軍』だったか?」

 

宇宙の帝王を自称する『フリーザ』をトップとし、星々に侵略しては破壊と殺戮を繰り返し支配を広げていく悪の軍団。

地球は本当に北の銀河の辺境も辺境。ヒノカミが転移で行ける範囲の星も宇宙全体で見れば田舎のような場所なので、時折下級戦士が数人やってくることがあるくらい。

それでもその強さは先代に、つまり一般的な惑星の神に匹敵する。

近隣の惑星にとっては十分な脅威であり、対処ができないと乞われてヒノカミが救援に向かうことが多い。

 

「……待って!今その話するってことは!?」

 

「奴らの使う一人乗りの宇宙船が一つ、太陽系に侵入してきた。

 予想では後1時間足らずで地球に到達する」

 

「「「!?」」」

 

「地球が狙われる可能性は、ほぼないのではなかったのか!?」

 

「そのはずじゃ。連中は奪い取った星を拠点としたり、他の異星人に売り払ったりしている。

 その点宇宙のはずれにある地球には利用価値がない。

 拠点を立ててもそこから攻め入る先がなく、僻地すぎて利便性も悪いから買い手もつかん」

 

「胸糞悪くなる理由ですね……」

 

ちなみに下級戦士とは言えフリーザ軍の兵士と戦ってきたヒノカミが地球にいると知られれば狙われる可能性はある。

しかしその線は薄い。情報源がないはずだ。彼女は地球とは別の惑星にとはいえ、侵略者を誰一人生かして返さなかったから。

 

「じゃあ、なぜ?」

 

「……一つ心当たりがある。

 お主らを神殿ではなくパオズ山に呼び寄せたのもそれが理由じゃ」

 

「パオズ山に原因が……?」

 

ヒノカミは訝しがる者たちの顔を見渡し、一点で視線を止める。

叶うなら……最後まで伝えずにおきたかった。

 

ヒノカミは覚悟を決め、掌を叩いた。

彼女の傍にいた者たち全員がその場から消え、パオズ山の奥地に転移する。

 

「ここは……ばあちゃんたちが『入るな』って言ってたところか?」

 

「あぁ、ここはまだパオズ山じゃ」

 

「ここに何がある?」

 

「見てはならぬもの……そして今見せなければならぬものじゃ」

 

いつもの騒がしさはどこへやら、無言で歩みを進めるヒノカミの後ろに全員が続く。

いくつか木々の間を抜けると、急に視界が開けた。

少し地面が低く、よく見ればこれはクレーター。

窪みには雑草が生い茂っていたが、樹木が成長するほどの年月は経っていないようだ。

ヒノカミが穴の中央、妙に地面が膨らんでいる場所に向けて広げた手をかざす。

 

 

ボッ

 

 

衝撃波が盛り土を吹き飛ばした。

姿を現したのは、直径1メートルほどの金属の球体。

 

「あれは……?」

 

「あれがフリーザ軍が使っている一人用のポッド……戦闘員の宇宙船じゃ」

 

「「「えぇっ!?」」」

 

ヒノカミは驚愕する面々を無視して進み、ポッドに手をかけ操作する。

丸い窓がついている部分が、外壁の線に沿って開いた。

 

「す、すごい……!」

 

中には大人が一人座れるスペースがあるだけ。あとはいくつかのモニターやパネル。

しかし技術者であるブルマはその宇宙船がどれほど高度な技術で作られたものかを理解したようだ。

クリリンやヤムチャたちも宇宙船の外壁を擦ったり叩いたりして、未知の物質の感触を確かめている。

 

「つまり……フリーザ軍の兵士ってのは、当の昔に地球に来ていたのか!?一体いつ頃!?」

 

「中にいた奴はどうしたんです!?

 ヒノカミさまが倒したのですか!?」

 

ヒノカミは目を閉じたまま、宇宙船の外壁に手を添えたまま呟くように語る。

 

「……これが地球に降りてきたのは今から二十数年前。

 すでにこれがフリーザ軍とやらの物と知っていた儂は、即座に乗員を始末しようとした。

 しかし……できなかった」

 

「じゃあ、生きてる!?何故!?」

 

「殺せまいよ。乗っていたのは善悪の区別どころか言葉を話すことすらできぬ赤子であったのだから」

 

「あ、赤子!?」

 

「……待て!!」

 

真っ先に気付いた亀仙人が大声をあげる。

全員の視線が震える彼の方に向くが、彼の視線は目を閉じたままのヒノカミに注がれている。

 

 

「およそ二十年前……パオズ山……まさか……!?」

 

 

「赤子は地球の人間と変わらぬ姿であった。

 ただ一点を除いて。

 ……赤子には、『尾』が生えていた」

 

 

「「「!!!??」」」

 

 

ブルマが。

ヤムチャが。

亀仙人が。

クリリンが。

天津飯が。

チャオズが。

ピッコロが。

そしてチチと悟飯が。

一斉に振り返り一人の『人間』の顔を見る。

 

 

「……そうじゃ。

 『孫悟空』と名付けられた赤子は、これに乗って地球にやってきた」

 

ゆっくりと目を開いた女神は、苦悶の表情で言葉を絞り出した。

 

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